猫の唾液腺嚢胞とは
唾液腺の分泌物が停滞して貯留した状態です。
顔、主に口の周囲には複数の唾液腺が存在しており、大きくは大唾液腺と小唾液腺に分類され、その部位によって以下のような名前がついています。
・大唾液腺:耳下腺、下顎腺、舌下腺
・小唾液腺:頬骨腺、臼歯腺、口蓋腺、口唇腺
それぞれの唾液腺には導管という細い管がつながり、腺体から分泌された唾液は導管を通って口腔内に分泌されます。
この唾液分泌の流れのどこかに滞りが生じると、唾液がその部分で貯留して膨れた状態になり、唾液腺嚢胞となります。
停滞した唾液が唾液腺の中や導管の拡張した部分にたまったものを「唾液腺嚢胞」や「唾液粘液嚢胞」と呼び、損傷して破裂した唾液腺や導管から唾液が周囲の組織に漏れ出して膨らんだ場合を「唾液瘤」と区別して呼ぶこともあります。
唾液腺嚢胞は頸部や耳の下、下顎、目の下や目の奥、舌の裏などに形成されることがあり、猫には舌の裏に形成されるものが比較的多く認められ、「ガマ腫」と呼ばれます。
唾液腺嚢胞は波動感のある大きな膨らみが比較的急性にできるのが特徴ですが、腫瘍や唾液腺以外の組織の炎症、リンパ節の腫れ、膿瘍などと鑑別することが重要です。
猫の唾液腺嚢胞の症状とは
口の中または口の周囲が急に膨らみます。
猫で多いガマ腫では舌の下に水膨れのような大きな膨らみができます。
大きく膨らむことで舌が横に押されて変位し、摂食に支障が出たり、涎を垂らす、口を気にする、舌を噛んでしまい出血するなどといった症状が見られます。
ガマ腫以外の唾液腺嚢胞では下顎周囲や頸部、口の中、頬周囲等に波動感のある膨らみが見られ、舌の下や口腔内に重度の腫れが生じると、口を閉じることができなくなったり、腫れた組織と歯が接触して出血する、嚥下障害、呼吸障害にまで発展することがあります。
また、頬骨腺の腫大によって目が圧迫された場合には目の突出や外斜視が見られることもあります。
猫の唾液腺嚢胞の原因とは
外傷などが原因と考えられます。
猫同士のケンカや不慮の事故による顔面の衝突など、顔面から頸部周囲に大きな力が加わったり外傷を負うことで、唾液腺自体や導管に損傷が生じ起こると考えられます。
唾石が閉塞することによっておこります。
唾液腺の中や導管の中にできる結石を唾石といいます。
この結石が導管の中で閉塞することで分泌された唾液の流れが滞り、唾液腺の中に唾液が貯留したり導管が破裂することで起こる場合があります。
多くは原因不明です。
上記のような原因がはっきりとわかることは実際には少なく、多くは原因不明です。
猫の唾液腺嚢胞の好発品種について
好発する品種はありません。
特にありません。
猫の唾液腺嚢胞の予防方法について
外傷の機会を減らすために室内飼育が推奨されます。
室内でも外傷は起こりえますが、屋外では外の猫とのケンカや車などとの接触、高所からの転落などのリスクが増えると考えられます。
そういった意味では室内飼育にすることに多少の予防効果があると考えられます。
猫の唾液腺嚢胞の治療方法について
緊急的な処置としては針で貯留した唾液を吸引します。
重度の腫れによって呼吸や摂食に支障が生じている場合には、とりあえずの処置として腫大した部分に針を刺し、中の貯留物を吸引して抜去することがあります。
しかしこの方法は一時的には症状を改善させますが、根本的な解決にはならないため、しばらくすると再び腫れが大きく戻ってしまいます。
また、口腔内や目の近くなどは処置中に猫が動くと針でほかの部位を損傷する可能性があるため、必要に応じて鎮静剤などを使用しなければなりません。
ガマ腫には造窓術という処置を行います。
舌の下にガマ腫ができた場合には、腫れた部位の粘膜の一部を紡錘形に切除する造窓術を行います。
腫れた部分に窓のように開放創を作ることで中に貯留した唾液を除去することができます。
唾液腺の切除術を行います。
ガマ腫以外の唾液腺嚢胞では、唾液腺とその導管を切除する治療を行います。
目の近くにある頬骨腺の切除には、頬骨という骨を一度切断して手術を行わなければなりません。
臼歯腺の腫れは治療を行わないことがほとんどです。
臼歯腺の腫れの場合は治療を行わなくても改善することが多いため、手術は通常行いません。