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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の椎間板ヘルニアとは

背骨の間にある椎間板が飛び出して脊髄を圧迫する疾患です。

猫やヒトを含め、動物の背骨は小さな骨が連なって構成されており、その背骨と背骨の間にはクッションの役割をする椎間板が存在し、体をしなやかに動かしたり強い衝撃があっても背骨同士がぶつからない構造になっています。

背骨には脳からつながる脊髄が通る空洞(脊髄腔)があり、脊髄からは全身に分布する末梢神経が枝分かれして伸びています。

椎間板ヘルニアとは、椎間板に強い負荷がかかることにより脊髄腔に椎間板の一部が飛び出して脊髄を圧迫してしまう状態です。

脊髄の圧迫の程度によって、症状は痛みだけの場合もあれば後肢の麻痺あるいは四肢の麻痺などが起こることもあります。

猫での発生は犬ほど多くはありませんが、交通事故や高所からの落下に伴って、あるいは中高齢の猫で発生することがあります。

猫の椎間板ヘルニアの症状とは

痛みや運動障害、麻痺などが起こります。

椎間板ヘルニアでは神経の圧迫部位と損傷の程度によって症状の出方が異なります。

軽度なものでは頚部痛や背部痛、腰痛に伴い以下のような変化が見られます。
・元気がない
・食欲低下
・首を下げて上を向こうとしない
・抱き上げた時に痛がる
・背中を触ると敏感に反応する、噛もうとする
・段差を登り降りしない
・歩き方がぎこちない

脊髄の損傷が比較的強く、麻痺がおこると下記のような症状が加わります。
・手足の甲を引きずりながら歩く
・四肢のどこかが脱力している
・腰が抜けたように急に立てなくなる
・横になった状態から起き上がれない
・尻尾が脱力している
・排尿できない
・呼吸が苦しそう

神経の圧迫部位によって後ろ足だけに症状が出る場合と前後肢とも麻痺がおこる場合があり、より頭に近い部位でおこるほど麻痺の範囲は広くなります。
特に頚部の神経が障害された場合には呼吸に必要な神経の麻痺がおこることがあり、呼吸機能低下が手術時の麻酔リスクを上げたり、命にかかわる場合もあります。

脊髄軟化症に進行してしまうケースもまれにあります。

ヘルニアに続発して起こる「進行性脊髄軟化症」は、重篤な脊髄損傷に伴って起こる進行性の脊髄の壊死で、壊死が損傷部位から広がっていくため機能回復は難しく、頭側に進行すると徐々に呼吸麻痺がおこり命を落としてしまいます。
現代の医学ではまだ治療法が見つかっていない怖い病態です。

猫の椎間板ヘルニアの原因とは

椎間板にストレスがかかることによっておこります。

椎間板ヘルニアは椎間板に強いストレスがかかることが原因で起こります。
猫では主に交通事故や転落などによって瞬間的に大きな物理的外力が加わることでの発症が多く見られます。

また、加齢に伴う椎間板の変性(弾力性や柔軟性の低下)、肥満、激しい運動、遺伝的な要因で骨に奇形があることなどは発症の要因になります。

環境に原因があることもあります。

若くて健康な猫の場合は、室内で普通に生活していて発症することはあまりありません。

しかし筋力や椎間板の弾力性が低下した高齢猫がフローリングで滑って転んだり、キャットタワーに飛び乗り損ねたとき、高所から飛び降りた際に発症することがあります。

猫の椎間板ヘルニアの好発品種について

以下の猫種で好発がみられます。

椎間板ヘルニアは中年齢以上で発症し、雑種猫よりも純血種で好発します。
特にブリティッシュショートヘアとペルシャでは発症頻度が高いとされています。

猫の椎間板ヘルニアの予防方法について

適度な運動で筋力を維持して肥満を防ぎましょう。

発生率を下げるためには、肥満予防と筋肉維持のために適度に運動することが必要です。
高齢になってから、あるいは肥満になってから急に運動させて筋肉をつけようとすると逆に怪我を招く恐れがありますので、若い時から遊びを通して運動させたり、上下運動できるような環境を作って適度に体を動かせるようにしましょう。

また肥満にならないような食事管理にも気を付けましょう。

生活環境を見直しましょう。

室内飼育が主流になった現在は、室内でも活発に遊べるようにキャットタワーを置く家庭も多くなりましたが、運動能力が落ち始める中高齢期を迎えるころには、環境を一度見直してみましょう。

フローリングには滑りにくい敷材を敷き、長毛種では足の裏の毛をこまめにカットしてあげ、高齢になって高くジャンプすることができなくなってきた場合にはステップを増やす、あるいは高いところには上らせないように家具の配置換えをする、などといったことを行い不慮のケガを予防しましょう。

猫の椎間板ヘルニアの治療方法について

軽度な場合は内科療法を行います。

背部痛のみで運動障害や麻痺のない症例や、飼い主さんが外科治療を望まない場合は内科療法を行います。
内科療法では、運動制限による安静、鎮痛剤・消炎剤による痛みの緩和、脊髄を保護する薬剤の投与などを行います。

運動制限は治療・悪化の防止のために最も重要です。
椎間板ヘルニアは活動性の高い猫で発症することも多いため、痛みをある程度コントロールすると再び激しく動いてしまうことで悪化を招き、麻痺へと進行してしまうこともあります。
必要に応じてケージレストで運動範囲を制限し、急性期を安静に過ごさせることが必要です。

消炎鎮痛剤は治療初期から病院で投与あるいは内服薬として処方されます。
使用されるお薬はステロイド剤や非ステロイド系消炎鎮痛剤、オピオイド系鎮痛薬などです。
副作用として消化管出血などが起こる場合もありますので、食欲や吐き気には注意しましょう。

また、痛みで過剰に緊張した筋肉をほぐすためにレーザーを照射したり鍼灸治療を行う病院もあります。

外科手術を行います。

麻痺が深刻である場合、外科手術が治療として選択されます。

一般的には麻痺がおこってからできるだけ早く手術をした方が成績がいいといわれていますが、中には呼吸状態が悪いケースや持病のある場合など麻酔自体がハイリスクである症例もあるため、その適応については慎重に判断することが求められます。
獣医師からしっかりと説明を受け、手術内容とそのリスクについてしっかり理解したうえで臨みましょう。

手術では脊髄を圧迫している椎間板物質を取り除きます。
圧迫部位を特定するために、手術に先立って脊髄造影検査やCT検査を行うことが一般的です。
病院によっては外科手術の対応は難しい場合もあるため、その場合は手術が可能な病院を紹介してもらう必要があります。

また、手術をしても全ての症例で麻痺が完全に治るわけではありません。
傷害を受けた脊髄が回復するまではある程度時間が必要となり、中には不可逆的な傷害が発生していることもあります。
痛みをとる、進行を予防する、という目的も含めての手術であることを理解しておきましょう。

リハビリで機能の回復を図ります。

急性期が過ぎたら、早い段階からリハビリを始めます。
内科治療の場合も外科手術後の場合もリハビリはとても重要です。
せっかく無事に手術を終えてもリハビリをしなければ運動機能は回復しません。

リハビリは障害の程度に応じて様々なものがあります。
初期は電気刺激や温熱または寒冷療法、レーザー照射療法といった理学療法で痛みや筋肉の緊張をほぐす治療がメインになります。
また、マッサージやストレッチで麻痺した四肢の筋肉を動かしてあげたり、固くなった関節を屈曲させて動きやすくする、起立させた状態を維持してあげる、などといったものを少しずつ導入していきます。
急性期が落ち着いたら、滑りにくい床をゆっくりと歩く、バランスボールなどで起立訓練をする、設備があればウォータートレッドミルなども効果的です。
必ず獣医師または専門の訓練士などの指導を受けて行いましょう。


重度な麻痺が残ってしまって、起立できない、排尿できない、という状態になってしまった場合、褥瘡(床ずれ)の管理と排尿の補助が必要になります。
褥瘡を予防するためには低反発マットなどを敷き、自分で寝返りできない場合には一日に数回寝返りさせてあげることが必要です。

排泄の管理は慣れるまでは少し大変です。
便は腸の蠕動運動によって自然に出てくることが多いですが、出ない場合はお腹のマッサージや浣腸が必要になります。
また、多くは膀胱麻痺になるので、圧迫排尿やカテーテルでの尿の抜去が一日に2~3回必要です。
通常は自宅で飼い主さんが排泄の管理することになりますので、感染等を起こさないように清潔に操作できるよう、病院とうまくコミュニケーションをとりながら指導してもらいましょう。

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