犬のフィラリア症とは
フィラリアの心臓に対する寄生が引き起こす疾患です。
犬の血液内で生活し、心臓に寄生するフィラリアが原因となる感染症です。フィラリアは犬糸状虫(しじょうちゅう)とも呼ばれます。寄生によって心臓や肺に高負荷がかかり、様々な症状が引き起こされます。
蚊よって媒介されるため感染を広げる力が強く、予防が非常に重要な感染症です。また、フィラリアは日本全国に分布しており、いまだ発生が続いています。
犬のフィラリア症の症状とは
運動不耐性や呼吸器症状、腹水、大静脈症候群などを引き起こします。
肺動脈や心臓に寄生することで、血流や、心臓の弁の適切な働きを妨げ、心負担の増大や肺高血圧症を引き起こします。散歩を嫌がる、疲れやすいなどの運動不耐性、呼吸が浅く速い、咳が出る、粘膜が青白い(チアノーゼ)などの呼吸器症状がみられます。
血管内で寿命を迎えたフィラリアは血流にのり、肺や腎臓、肝臓などの毛細血管を詰まらせ臓器障害を引き起こします。
心機能の低下によるうっ血、臓器障害による血液成分の変化が原因になり、全身の血管から水分が血管外に漏出することで、腹水の貯留(お腹が膨らみ下垂する)、浮腫などの症状がみられます。
最終的に、心臓、肺、腎臓、肝臓などの非常に重要な臓器が同時多発的に障害され、死亡します。
フィラリアによる大静脈症候群
フィラリアの寄生により急性で致死的な「大静脈症候群」が引き起こされることもあります。これは心肺に多数寄生したフィラリアが、全身から血液を心臓に送る大静脈と、その血液を受け取り肺へと送るポンプである右心房室を塞栓させる疾患です。
失神や虚脱、窒息、重度なチアノーゼ、血液のような色の尿などの劇的な症状がみられ、DICやショックによる多臓器不全を併発し、早急の外科的な処置を行わないと死亡します。
犬のフィラリア症の原因とは
蚊の吸血によるフィラリアの寄生が原因になります。
蚊の唾液中に潜んでいた幼虫(ミクロフィラリア)が、吸血時に体内に侵入することで感染が成立します。ミクロフィラリアは成長の過程で血液内に移行し、心臓と肺を結ぶ太い血管(肺動脈)に寄生します。体長10cm前後ほどの長さの成虫が肺動脈や心臓に多数寄生することが原因となり、様々な症状が引き起こされます。
犬のフィラリア症の好発品種について
全犬種で好発します。
フィラリア症は感染症であり、好発犬種はありません。
犬のフィラリア症の予防方法について
定期的な予防薬の投与をおこないます。
動物病院で処方される駆虫薬で予防できます。フィラリア駆虫薬には、1カ月ごとに投与するもの、数カ月効果が持続するもの、1年の間効果が持続するものがあります。
子犬に対してはアレルギーなどの副反応の可能性が比較的高く体重の変化による投薬量の調整が必要なため、1カ月ごとに駆虫を行うことをお勧めします。体重、体調が万全な成犬においては、生活スタイルにあった薬を選択することができます。
フィラリア駆虫薬はミクロフィラリアの寄生を予防するものではなく、寄生したミクロフィラリアを死滅させるものです。そのため、ミクロフィラリアを媒介する蚊が発生する1カ月後から蚊のいなくなった1カ月後までの間、駆虫を続ける必要があります。
コリー系の犬種ではフィラリア駆虫薬の一部に対して、「重篤な副作用」を持っています。ネット通販で販売されているフィラリア予防薬の購入は危険です。かならず動物病院で診察を受け、薬を処方してもらってください。
犬のフィラリア症の治療方法について
フィラリア虫体の除去をおこないます。
ミクロフィラリアの感染に対しては定期的な駆虫による駆除がもっとも有効です。感染が進んでしまいミクロフィラリアが成虫になってしまった場合は、寄生の程度により治療が異なっていきます。
予防で使用されるフィラリアの駆除薬はミクロフィラリアにのみ効果があるものが多く、成虫の感染に対しては他の駆除薬を併せて使用します。
高度な感染状態に対して成虫を駆除する薬を投与すると、一気に多数の成虫が死滅することによる虫体による血管の塞栓、虫体成分が血液中に流れ出すことによるアレルギー反応により犬の病状が悪化する可能性があります。
この場合、フィラリア駆除薬を使い年間を通じて連続投与することで、寄生している成虫の世代交代を妨げ、寿命によってゆるやかに死滅させる方法を選択することがあります。
大静脈症候群に対しては緊急の外科的な処置を行います。首の静脈から器具を挿入し、直接虫体を除去します。