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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の胃十二指腸潰瘍とは

胃や十二指腸の粘膜の上皮が欠損した状態です。

胃は食べた食物を受け入れ、胃酸を分泌して混合することで消化を行い、十二指腸は胃で消化液と混ざった食べ物に胆汁や膵液を混ぜて食物の消化をさらに進めます。
胃や十二指腸の内腔は粘膜の層で覆われ、消化液の分泌などを行うとともに消化液から自身を守ってもいます。

胃十二指腸潰瘍は胃や十二指腸の粘膜の上皮が損傷して欠損してしまった状態です。
猫の胃十二指腸潰瘍は、慢性腎臓病の影響、他の疾患の治療のために行った投薬治療、一部の腫瘍性疾患に関連して、または異物の摂取による物理的な障害など、様々な原因によっておこります。

粘膜が欠損することで痛みや出血が起こり、また自身が分泌した消化液の作用を受けてさらに病態が悪化してしまうこともあります。
できるだけ早く治療を行い、悪化させないように治療していくことが重要です。

猫の胃十二指腸潰瘍の症状とは

食欲不振や黒色便などが見られます。

胃十二指腸潰瘍が存在すると、消化器症状の他、潰瘍部分からの出血によって便にも変化が現れます。
よくみられる症状は以下の通りです。

・食欲不振
・吐き気、嘔吐
・吐血(吐物に血や黒いものが混ざる)
・下痢
・黒色便
・腹痛
・発熱
・元気がない

重度の胃十二指腸潰瘍では消化管穿孔が起こる危険もあるため、上記のような症状がみられた場合にはできるだけ早く適切な検査・治療を受けることが必要です。

猫の胃十二指腸潰瘍の原因とは

基礎疾患が存在して起こります。

猫の消化管潰瘍では何らかの基礎疾患を抱えていることがほとんどです。
以下にその代表的なものを挙げます。

・尿毒症(慢性腎臓病)
・腫瘍性疾患
  リンパ腫
  肥満細胞腫
  胃腺癌(猫では稀)
  ガストリノーマ(猫では非常に稀)  など
・寄生虫の寄生(無症状~炎症を起こすことが多く潰瘍にまで発展することはあまりない)
・重度の胃炎、腸炎

高齢の猫に比較的多くみられる慢性腎臓病では、尿毒症による胃潰瘍が起こりやすくなります。

消化管にできる腫瘍性疾患も胃十二指腸潰瘍の原因となることがあります。
猫に多く発生するリンパ腫は胃や小腸などの消化管にできることもありますが、潰瘍を形成することはあまり多くありません。
胃に潰瘍を形成しやすい腫瘍としては胃腺癌が挙げられますが、猫での発生は稀です。

猫に比較的多く発生する肥満細胞腫は、消化管以外に病変ができた場合でも消化管潰瘍の原因となります。
肥満細胞腫の時は腫瘍細胞が産生するヒスタミンという物質によって高ヒスタミン血症になりやすく、ヒスタミンは胃酸分泌を促進する作用があるために胃酸分泌過多となり、胃や十二指腸に潰瘍ができやすいのです。

異物の摂取によっておこる場合があります。

異物を摂取したことによって胃や十二指腸などの消化管粘膜が物理的に損傷して潰瘍を形成することがあります。

投薬の影響によっておこることがあります。

他の疾患の治療のために投与された薬剤が原因で胃十二指腸潰瘍が起こることがあります。
代表的なものはステロイドや非ステロイド系の消炎鎮痛剤(NSAIDs)などです。

猫の胃十二指腸潰瘍の好発品種について

好発する品種はありません。

どんな猫にでも起こる可能性があり、品種による好発傾向は特にありません。

猫の胃十二指腸潰瘍の予防方法について

異物の摂取に気を付けましょう。

好奇心旺盛な仔猫や若い猫では異物摂取による事故が多い傾向があります。
誤って飲み込んでしまうような小物やひも状のものは猫の手が届かない場所に片づけ、壊れかけたおもちゃなどは処分するようにして異物の誤食を予防しましょう。

投薬中の体調変化に気を付けましょう。

病気の治療のために病院からお薬を処方された場合、副作用が出ないかどうか投薬後の様子に気を付けるようにしましょう。
特に吐き気や下痢などは様々なお薬の副作用として現れやすい症状です。
症状が現れた場合には処方してもらった病院に連絡を取り、胃粘膜の保護剤の追加や休薬の必要性などの指示を仰ぎましょう。

猫の胃十二指腸潰瘍の治療方法について

投薬治療で胃粘膜を保護・治療します。

胃十二指腸潰瘍の治療は主に投薬治療によって行います。
使用されるのは主に胃酸分泌を抑えるお薬と胃粘膜の保護剤です。

胃酸は食物の消化吸収に必要ですが、過剰に分泌されることでも胃潰瘍を形成することがあり、潰瘍部分に対しては病態を悪化させる原因にもなるため、胃酸分泌を抑制する治療は原因に関わらず重要な治療となります。

また消化管潰瘍がある間は食欲が低下することが多いため、状態に応じて点滴治療も行います。

原因疾患に対する治療を行います。

胃潰瘍の原因となる疾患が存在する場合には、その治療を行うことが必要です。

慢性腎臓病は完治することはないため、症状や進行をできるだけ抑制するために投薬治療・食事療法・点滴治療などを行います。

肥満細胞腫では腫瘍の切除や内科治療を検討します。
内科治療としては抗がん剤の他に分子標的薬という新しいお薬が登場したことで治療の選択肢が広がり、より副作用が少ない治療ができるようになりました。

リンパ腫は抗がん剤治療が有効な腫瘍ですが、腫瘍からの出血が多い場合や消化管穿孔の危険がある場合、消化管閉塞を起こしている場合は外科手術を組み合わせた治療を行います。

また、胃腺癌などの場合は外科手術が第一選択となります。

投薬が原因の場合は投薬を中止します。

ステロイドやNSAIDsが原因となっていることが考えられる場合は、それらの薬剤の投与を一旦中止することが必要です。

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