犬のてんかんとは
脳の異常放電による疾患です。
脳の異常放電により、反復性のてんかん発作が引き起こされる慢性疾患です。てんかん発作には身体の痙攣、硬直、脱力や意識障害が含まれます。
てんかんは発作を繰り返すことで病状を悪化させます。そして、てんかん発作が連続的に発生することで「てんかん重積状態」と呼ばれる状態になり、高度の脳障害や心肺停止を引き起こします。
継続的で適切な治療を行わないと病状が悪化し死に直結する疾患です。疑わしい症状がみられる場合は動物病院を受診する。治療中の場合、内服薬を必ず指示された量・時間で与える。発作がみられなくなっても自己判断で投薬を中止しないことが非常に重要になります。
犬のてんかんの症状とは
失神や痙攣、硬直、脱力などの症状がみられます。
意識障害や痙攣、硬直または脱力が、全身や身体の特定の部分にみられます。犬では強直間代性の発作（気絶し全身を痙攣させるような症状）が多くみられますが、発作の強さや持続時間にはバリエーションがあり、皮膚がぴくぴく震えるような気が付きにくい発作を起こす場合もあります。また、てんかん発作は基本的に反復性であり、期間に個体差はありますが繰り返し症状が引き起こされます。
てんかん発作は脳の一部分（てんかんの焦点という）で異常な放電が起き、異常な脳波が脳全体に伝搬することにより引き起こされます。焦点での放電に原因する症状を単純・複雑部分発作といい、脳全体の放電に原因する発作を全般発作といいます。全般発作では上記で説明したような症状が引き起こされます。
単純部分発作、複雑部分発作は脳の焦点がある部位（たとえば、脳の眼を司る領域→眼の発作、聴覚の領域→聴覚障害）と対応した限局した身体の部位で起こる発作です。複雑部分発作では意識障害が合わさって引き起こされます。単純・複雑部分発作は全般発作の前駆症状としてみられる場合があります。
てんかんは発作を繰り返すことで脳組織を損傷させ、症状がより大きく、長く、頻度が高くなります。その結果、てんかんは「重積」と呼ばれる症状を引き起こします。これはてんかん発作が連続的に発生することによる10分以上の発作であり、脳の高度損傷や心肺停止などを引き起こす危険な状態です。
犬のてんかんの原因とは
特発性、続発性の２つの原因があります。
てんかんの原因は特発性、続発性で大きく分けることができます。遺伝的な脳組織の異常が原因だと考えられる場合、特発性てんかんと言われます。犬でもっとも多いタイプのてんかんであり、てんかん発作を引き起こす原因が脳の器質的変化（腫瘍、炎症、奇形等）ではなく、かつ脳外の疾患（内分泌疾患や心疾患等）でもない場合に、消去法的に診断されます。
続発性てんかんは脳の器質的変化が原因となり、てんかん発作が引き起こされている場合を指します。脳外の疾患が原因となったてんかん様発作は、非てんかん性発作と言われており、てんかんではありません。
犬のてんかんの好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- イタリアングレイハウンド
- シベリアンハスキー
- トイプードル
- ビーグル
- ボストンテリア
- ポメラニアン
- ミニチュアダックスフント
トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフント、ポメラニアン、ビーグル、シベリアン・ハスキー、イタリアン・グレーハウンド、ボストンテリアが好発犬種として知られています。
犬のてんかんの予防方法について
予防方法はありません。
脳の遺伝的・器質的原因を持つ疾病であり、予防することはできません。
犬のてんかんの治療方法について
抗てんかん薬の持続的な投与をおこないます。
てんかんの治療は抗てんかん薬による内科療法を行います。内科療法の目的はてんかんを止めることではなく、発作の頻度と大きさを下げることにあります。致死的な発作であるてんかん重積状態を引き起こさせないことが目的だとも言い換えることができます。
てんかんの治療でもっとも重要なことは血液中の抗てんかん剤の濃度を一定にすることです。正しい血中濃度により、抗てんかん効果と、副作用の抑制を行うことができます。その為には適切な量の薬剤を、一定の間隔を持って投与することが絶対になります。
治療薬の量を自己判断で増減する、治療を自己判断で中止することは大変危険です。症状に変化があり、投薬プログラムを変更したい場合は、必ずかかりつけの獣医師に相談してください。
