犬の変形性関節症とは
骨・関節疾患が原因になり老化性に発症する疾患です。
あらゆる関節の疾患が原因となり、関節軟骨がすり減り、関節が変形してしまい、発症する関節疾患です。骨関節炎とも呼ばれています。重度の跛行、痛み、起立困難などの症状が引き起こされます。
若齢時に罹患した原因疾患をきちんと治療することで、発症を遅らせる・症状を軽減することができます。
犬の変形性関節症の症状とは
肢の痛み、歩行困難などの症状がみられます。
関節内の軟骨と骨が破壊されることにより、関節の腫脹、可動域の極端な低下、筋肉の萎縮などの重い症状がみられ、重度の跛行、痛み、起立困難を引き起こします。
犬の変形性関節症の原因とは
一次性と二次性の2つの原因があります。
一次性変形性骨関節症と二次性変形性骨関節症で原因が異なります。前者では原因疾患は無く、加齢性変化、体重や運動の負荷などで引き起こされます。後者では全ての関節疾患が原因になります。犬での変形性骨関節症は二次性であることが多いです。
二次性変形性骨関節炎では、原因となる関節疾患により関節内で衝撃を吸収する役割を持っている関節軟骨が破壊されることにより引き起こされます。関節軟骨の破壊により、蛋白質分解酵素が関節包(関節を包む膜、液体で満たされている)に漏出し、関節内の組織を破壊します。
関節内の組織が破壊されることで、炎症性サイトカインとよばれる物質の分泌が亢進されます。炎症性サイトカインは本来、炎症を引き起こすことで体内(この場合は関節内)の異物や病源体を排除し、最終的に炎症を収める役割があります。
変形性骨関節炎では自己由来成分である蛋白分解酵素により組織破壊が起きているため、炎症性サイトカインは更なる炎症を引き起こし、組織破壊を助長します。
炎症により軟骨の障害と、蛋白分解酵素の漏出が進み、関節内環境は負のスパイラルに陥り、軟骨と骨の重大な損傷を引き起こします。
犬の変形性関節症の好発品種について
全犬種で好発します。
小型犬に多い膝蓋骨脱臼(パテラ)や大型犬に多い股関節形成不全、また前十字靭帯断裂などの疾患に続発するため、関節疾患の好発犬種がそのまま変形性骨関節症の好発犬種となります。
あらゆる関節の疾患が原因になり得るため、全ての犬がある程度のリスクを持っている疾患とも言えます。
犬の変形性関節症の予防方法について
原因疾患の早期発見・治療が重要です。
変形性骨関節症の原因となる疾患の早期発見・治療を行うことで予防を行うことができます。原因疾患の早期発見・治療は変形性骨関節症の発症を予防するものではなく、発症を遅らせる・症状を軽減する効果があります。
変形性骨関節症は肥満により発症する場合もあります。肥満症は食事制限で比較的簡単に治療できます。一方、変形性骨関節症は一度発症したら進行を止めることができない厄介な疾患です。犬の長い一生を考えたとき、食事やおやつの量を考え直すことで、予防できる病気は多くあります。
犬の変形性関節症の治療方法について
症状が重い場合におこなう外科的療法とQOL向上を目的とした内科的療法があります。
外科的療法、内科的療法で治療を行います。外科的療法では変形性骨関節炎が発症している関節を取り除き病気を根治する、また、関節を完全に固定し痛みが生じないようにするなどの方法があります。どちらの方法でも犬のQOLを大幅に制限してしまう為、変形性骨関節炎の症状が日常生活に支障をきたすほど大きい場合に選択されます。
内科的治療法では抗炎症剤や鎮痛剤の長期投与を行います。病気の進行を止めるのではなく、病気の症状を和らげる目的があります。
食事管理や運動制限により関節にかかる負荷を軽減させる方法も併せて行う場合があります。