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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の股関節形成不全とは

大型犬に多い股関節の先天性疾患です。

後肢の骨(大腿骨)と骨盤をむすぶ関節である股関節が、正常とは異なるかたちに生まれてきてしまう先天性疾患です。大型犬で多い疾患です。股関節形成不全の犬では腰を回すような歩き方、もしくはうさぎ跳びで歩くなどの特徴的な歩様がみられます。

股関節形成不全では関節の安定性が良くありません。股関節脱臼や関節軟骨の異常な摩擦を引き起こし、老化性に骨関節炎を続発します。

犬の股関節形成不全の症状とは

歩様の異常、後肢の痛みがみられます。

発症早期では歩様の異常(腰を回すような歩き方、うさぎ跳び)がみられます。股関節の不安定により関節軟骨などの炎症が発生し、痛みや股関節のさらなる変形が引き起こされます。

股関節形成不全がある程度進行すると、股関節脱臼が続発するようになり、痛みもさらにひどくなります。片側性の発症では、この疼痛のせいで片肢を使わないようになり、筋肉が萎縮します。

治療や、成長による股関節の一時的な安定傾向により、痛みは一時的に軽度になりますが、関節内での炎症反応は止まりません。

最終的に老化性に骨関節炎が続発し、関節可動域が極端に狭まり、強い痛みが発生します。起立困難になる場合もあります。

犬の股関節形成不全の原因とは

遺伝的要因、肥満症による負荷が原因になります。

遺伝的な原因が示唆されている疾患です。股関節は大腿骨のでっぱりである「大腿骨頭」と骨盤のへこみである「寛骨臼」が組み合わさることで形成されます。大腿骨頭、もしくは寛骨臼のかたちが正常とは異なることなるかたちに生まれてくることで、この疾患は先天的に発生します。

股関節の形成不全が小さく、疾患とはいえないが高リスクな状態では、肥満や過剰な運動などにより股関節形成不全が発症することがあります。特にゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバーなどの犬種では食欲旺盛であり、肥満になりやすい傾向にあります。遺伝的な高リスクと併せて、本症の発症リスクが高い理由の一つだと考えられます。

犬の股関節形成不全の好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

大型犬に多い先天性疾患です。ジャーマン・シェパード、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバーなどが好発犬種だと言われています。

犬の股関節形成不全の予防方法について

肥満症の予防をおこなうことでリスクを軽減します。

先天性疾患としての股関節形成不全は予防することができません。股関節形成不全の高いリスク(軽度の股関節の変形など)を持って生まれた場合や、先天性にすでに発症しているが症状が軽度な場合では、食事・運動制限によって発症や病状の悪化を予防することができます。

これらの予防は、主に成長期の犬で行われます。成長期の大型犬は、健康な状態であっても急激な体重増加がみられます。また、好奇心旺盛であり過剰な運動をしがちな年齢です。食事・運動制限をすることにより、成長期の股関節へのダメージを抑え、成長に伴った関節の安定化を促す目的があります。

犬の股関節形成不全の治療方法について

症状が重い場合におこなう外科的治療と、対症療法である内科的治療があります。

股関節の再建を目的とした外科的療法と、炎症反応や痛みを軽減するための内科的療法があります。これらは股関節形成不全の進行度合いや、治療方針により選択されます。

外科的療法では症状を大幅に抑えることができますが、麻酔や感染などのリスク、金銭的な負担などのデメリットがあります。内科的療法では股関節形成不全の進行を遅くすることができますが、将来的な骨関節炎の発症に対して外科療法と比較して効果が低いと言えます。また、これらの治療法は食事制限と運動制限を併せて行う場合が多くあります。

股関節形成不全が骨関節炎を併発してしまっている場合、股関節形成不全のみ発症している場合の外科的療法と比較してより侵襲性の高い術式を行う必要があります。股関節形成不全単体では股関節の修復・再建を行いますが、骨関節炎と併発している場合、大腿骨頭の切除や股関節の人工関節への置換を行う必要があります。

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