猫の外耳炎とは
外耳道や耳介に炎症が起こる病気です。
外耳炎は耳の鼓膜より外側の部分である、外耳道と耳介(耳たぶの部分)に、細菌感染や寄生虫感染などによって炎症が起こった状態をいいます。
外耳炎になると、耳の穴が腫れて狭くなったり、痒みから掻き壊して出血が起こったりし、重度になると痛みを伴います。
慢性化すると、炎症がもとで外耳道に腫瘤ができたり、狭くなったまま硬くなってしまうほか、炎症が中耳や内耳に波及して、斜頸や神経症状を起こすようになることもあります。
外耳炎は比較的症状がわかりやすい病気ですので、重度になる前にしっかりと治療しましょう。
猫の外耳炎の症状とは
痒みと汚れが見られます。
外耳炎の症状は主に痒みと耳の汚れです。
炎症によって耳道が腫れると、狭くなった耳道から強い臭いがしたり、耳だれが出るようになります。
症状
・耳を掻く
・激しく頭を振る
・耳が汚れている
・耳だれが出ている
・耳から強い臭いがする
・耳を掻き壊して出血している、瘡蓋ができている
・食欲不振
・耳が腫れている
・耳を触ると痛がる
初期の外耳炎は、頻繁に耳を掻いたり頭を振ったりという痒みの症状ですが、重度になると炎症によって痒みは痛みに代わり、食欲が落ちたりする場合もあります。
耳が熱を持ったように腫れ、激しく掻いたり振ったりする物理的な刺激によって、「耳血腫」を起こすこともあります。
耳血腫は耳介(耳たぶ)の皮膚と軟骨の接着がはがれて内出血し、耳がパンパンに腫れた状態になってしまう状態です。
さらに、外耳炎が重度になると鼓膜が破れ、中耳炎や内耳炎に発展することもあります。
そのような場合には首が斜めに傾く斜頸などの神経症状が出て、まっすぐ歩けなくなるほか、吐き気や食欲不振をおこします。
外耳炎の症状は割とわかりやすいので、痒がる様子が強ければ早目に病院を受診しましょう。
猫の外耳炎の原因とは
多くは感染症によって起こります。
主に、耳ダニなどの寄生虫、真菌(マラセチア)、細菌感染によるものが多いですが、アレルギーなどの皮膚疾患の症状の一つとして、あるいは異物の侵入(植物の破片など)、耳にできた腫瘍が原因の場合もあります。
耳ダニは、外に出た時に野良猫と接触することで感染します。
マラセチアや細菌は、健康な猫の耳にも普通にみられる常在菌ですが、皮膚の免疫とのバランスが崩れると異常増殖してしまい、炎症をおこします。
食物アレルギーやアトピーなど、アレルギー性の皮膚炎を持つ猫でも症状の一つとして外耳炎を起こすことがあります。
また、あまり一般的ではありませんが、自己免疫異常(天疱瘡など)によっておこる外耳炎もあります。
猫の外耳炎の好発品種について
全猫種で好発します。
どんな猫でも外耳炎は起こりますが、耳の形が特徴的な猫、例えばスコティッシュフォールドなどでは、耳の通気が悪いために汚れやすく、気付きにくいという特徴はあります。
猫の外耳炎の予防方法について
室内飼育と耳ダニ予防を行いましょう。
外耳炎の原因の一つである耳ダニを予防する方法としては、外に出さないこと、定期的に予防薬をつけることが挙げられます。
完全室内飼いで、耳ダニに感染することはまずありません。
外に出てしまう場合には、耳ダニを予防できるスポットタイプのお薬があるので、定期的につけて予防してあげましょう。
新しい猫を迎える場合や子猫を拾った時は、必ず耳のチェックをして耳ダニがいないことを確認してから一緒にしましょう。
耳チェックを習慣にしましょう。
細菌やマラセチアは、元々耳の中に住んでいる常在菌です。
異常増殖すると耳から臭いがしたり耳垢で耳が汚れてくるので、スキンシップを兼ねて耳をチェックし、汚れているときはコットンなどにイヤークリーナーをしみこませて、指の届く範囲をやさしく拭いてあげましょう。
予防のために毎日綿棒で掃除する必要はありません。
耳の中を綿棒で掃除をすると、傷つけたり、腫れたり、逆に汚れを奥に押し込んでしまったりすることがあります。
耳のチェック時に赤く炎症を起こしていたり、ひどく汚れているときは、早目に病院を受診しましょう。
猫の外耳炎の治療方法について
耳の洗浄を行います。
治療は耳の洗浄と点耳薬、状況に応じて内服薬や駆虫薬を使用します。
まずは耳の中をチェックしてもらい、鼓膜に問題がないかどうかを見てもらいます。
鼓膜が破れている場合は、耳にイヤークリーナーを入れることはできません。
問題なければ、イヤークリーナーを耳に入れて耳の付け根を軽くマッサージし、ブルブル首を振った後にコットンで拭きとります。
それほど汚れが強くない場合は、イヤークリーナーを浸みこませたコットンで耳の入り口付近をやさしく拭いたあと、点耳薬を耳にいれます。
点耳薬を入れた後は耳の付け根を軽くマッサージして、お薬をなじませましょう。
病院で耳掃除する場合は、綿球を鉗子で挟んで耳の中を拭いたりしてもらえますが、自宅で綿球や綿棒を使っての掃除はお勧めしません。
耳の奥の炎症の状態がわからないままこするのは良くありませんし、慣れていないと汚れを奥に押し込んだり、傷つけたりすることがあるからです。
内服薬治療を併用する場合があります。
細菌感染による外耳炎や、掻いて耳の周りを傷つけてしまっている場合には抗生物質の内服を行います。
また、炎症が重度で耳の中が腫れている場合は痛みが強い場合もあるので、消炎剤でまず炎症を抑えてから本格的な治療にうつります。
耳ダニ駆除を徹底的に行います。
耳ダニが原因の場合は、耳掃除に加えて、駆虫薬をつけます。
耳ダニは黒い砂のような耳垢がたくさん出るのが特徴ですが、環境中に落ちた耳垢にも耳ダニがたくさんいるので、生活環境の徹底的な掃除も必要です。
特にベッドなどに潜んでいて再感染することもあるので、よく洗うか、できれば新しいものに替えましょう。
必要に応じてアレルゲンの除去を行います。
アレルギー性の病気や免疫の異常によっておこる場合には、アレルギーの原因となっている物質(アレルゲン)を除去し、消炎剤や免疫抑制剤などでの治療が必要です。
手術による治療が必要な場合もあります。
耳の炎症が慢性化し、長期にわたって炎症が起こった状態になると、外耳道の中にある分泌腺の過形成を起こし、耳の中に小さな腫瘤がたくさんできたり、耳道が腫れて硬くなったまま元に戻らなくなってしまうことがあります。
そうなると耳は汚れやすく、一度症状が改善してもすぐに再発を繰り返す状態に陥ってしまいます。
その場合は根本的な治療として、外耳道切除という手術が必要になってしまいます。
そうならないためにもこまめに耳をチェックして、症状が軽いうちに治療してあげましょう。