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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の膵炎とは

膵臓に起こる急性または慢性の炎症です。

膵臓から分泌される消化酵素は、通常十二指腸に分泌されてから働きますが、何らかの原因で膵臓内で消化酵素が活性化し、自己消化が起こることで急性あるいは慢性に炎症を起こした状態を膵炎といいます。

膵炎は急性膵炎と慢性膵炎に大きく分類され、急性膵炎は割と劇的な症状を示すことが多いのに対し、慢性膵炎はあまり特徴的な症状を示さないことが多く、わかりにくい病気です。
特に猫の膵炎の多くは慢性膵炎で、下痢や腹痛を示さず、症状としては時々見られる嘔吐だけ、ということが少なくないため、早期診断が難しい疾患とされています。

急性膵炎の場合は、膵臓の炎症にとどまらず、様々な合併症を起こし命に関わることがあるため、多くの場合は入院して集中治療が必要です。
一方、慢性膵炎は劇的な症状が出ないために、診断されずに長期間膵炎を患っていることが多く、その間に膵臓の分泌機能に障害が生じて、糖尿病の原因になってしまうことが多い病気です。

いずれの場合も、できるだけ早く発見して治療してあげたい病気です。

猫の膵炎の症状とは

消化器症状が見られます。

急性膵炎、慢性膵炎どちらであっても、以下のような症状がみられます。
・元気消失
・食欲不振
・脱水
・嘔吐
・下痢
・体重減少
・腹痛

急性膵炎の症状は比較的強く現れます。

急性膵炎は比較的症状が重く、嘔吐や下痢などの消化器症状に加え、腹膜炎を起こすと腹痛や発熱が生じることからうずくまって動こうとせず、食欲もほぼなくなってしまいます。
吐き気が強く起こることによって涎を大量にたらし、水も飲めないことがあります。
この状態で数日経過してしまうと、肝リピドーシスや黄疸などを起こし、命に関わります。

しかし中には、あまり目立った症状を示さず、活動性の低下や食欲不振といった他の病気でも見られるような症状しか見られない場合もあります。

慢性膵炎の症状はわかりにくいこともあります。

慢性膵炎では急性膵炎の様に顕著な症状が出ないことが多く、早期診断が難しい病気です。
何となく元気がない、いつもよりちょっと吐く頻度が多い、という程度の症状が一番多く、下痢や明らかな腹痛を示すことは稀です。
猫はもともと毛玉などを吐く動物なので、時々嘔吐しても病的ととらえられないことも多く、何となく食事もとれているため、見過ごされている猫がたくさんいます。

猫の膵炎の原因とは

三臓器炎としておこります。

猫では三臓器炎といって、十二指腸・膵臓・胆嚢の三つの臓器のどこかに炎症が起こると、他の二つの臓器にも炎症が波及しやすく、炎症性腸疾患・膵炎・胆管肝炎が併発しやすいとされています。

膵臓は十二指腸、肝臓、胆嚢と隣接し、胆嚢と膵臓はそれぞれから分泌される消化液を総胆管、主膵管という細い管を通して十二指腸に分泌しています。
犬では、総胆管と主膵管は別々に十二指腸に開口していますが、猫では十二指腸に開口する前に胆管と膵管が一本になって十二指腸につながります。
この差が、猫で三臓器炎を起こしやすい要因になっていると考えられています。

感染症が原因になります。

大腸菌などの細菌感染や、猫伝染性腹膜炎、ウイルス性鼻気管炎などのウイルス感染、トキソプラズマなどの原虫感染によって、膵炎が起こる場合があります。

その他の原因もあります。

ある種の抗がん剤や、利尿剤、免疫抑制剤、抗生物質などの薬剤の中には、副作用として膵炎を起こすことが報告されているものがあります。

またあまり多くありませんが、腹部を強くぶつけたり、高所から落下した衝撃などで膵臓が傷つき、外傷性に炎症が起こる場合もあります。

猫の膵炎の好発品種について

以下の猫種で好発がみられます。

遺伝的にシャム猫でやや好発傾向があるようです。

猫の膵炎の予防方法について

健康管理と吐き気のコントロールを行いましょう。

肥満傾向と高脂血症の動物では膵炎が起こりやすいと考えられています。
適切な食事管理と適度な運動で、健康管理をすることが膵炎の予防になります。

また、猫は毛玉などを嘔吐することが多いですが、嘔吐を頻繁に繰り返すことも逆流による膵臓への細菌感染を招き、膵炎につながる可能性があります。
嘔吐する機会を減らすために、ブラッシングをして毛の飲み込みを減らしたり、ヘアボール対応食などにすることも予防につながるかもしれません。

また、高脂肪食は膵炎の原因になることがあります。
ドライフードや猫缶を食べている限りはあまり心配いりませんが、たまにゴミ漁りなどでヒトの食事の盗食をした結果、急性膵炎を起こすことがあるので、気を付けるようにしましょう。

猫の膵炎の治療方法について

急性膵炎の治療は入院治療です。

急性膵炎では、食欲が廃絶してしまうことが多いため、入院下で点滴をしながら治療します。

吐き気を抑える注射や、膵臓の血流を改善する点滴、膵臓の酵素の働きを抑える点滴、細菌感染のコントロールとして抗生物質などを投与し、腹痛が強い場合には痛み止めなども使用します。

猫は絶食状態が長く続くと、肝リピドーシスという極めて重篤な病態に陥ってしまうため、よほど重度の嘔吐症状がある場合を除いては、吐き気止めを使いながら食事を与えることも治療となります。

しかし、食欲がなく、自分では食べられないことが多いため、鼻から細いカテーテルを入れて、または食道や胃にもう少し太いチューブを設置して、流動食を少しずつ入れて栄養補給します。
自分でしっかり食事が摂れるようになるまでは、チューブからの栄養補給と入院治療を継続します。

慢性膵炎は内服薬で治療します。

慢性膵炎では、食欲の低下は起こりますが、全く食べなくなることは多くありません。
治療としては吐き気止めを投与するとともに、食事をしっかり食べさせ、脱水がある場合には皮下点滴などで水分補給を行います。
腹痛を示すことはあまり多くありませんが、うずくまって動けないなどの症状がある場合には一時的に鎮痛薬を使用することもあります。

糖尿病の猫は高確率で慢性膵炎を伴っているともいわれています。
つまり、膵炎の結果として糖尿病になった可能性が高いということです。

診断が難しいという問題はありますが、できるだけ早く発見して、将来的に糖尿病にならないようにしてあげたいものです。

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