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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の慢性腎不全とは

慢性的で進行性の腎機能障害です。

さまざまな腎臓の疾患が原因となり、慢性的な腎機能の障害が見られる疾患です。慢性腎不全は不可逆性の変化であり、腎臓のろ過機能の低下により中毒症状が引き起こされ、犬を死に至らしめます。慢性腎不全は、悪性腫瘍、心臓病に次いで多い犬の死因になります。

犬の慢性腎不全の症状とは

多飲・多尿、乏尿・欠尿、嘔吐、神経症状などがみられます。

慢性腎不全では腎臓のろ過、再吸収機能が機能しなくなっていき、体内の水分を保持できなくなります。そのため、多飲・多尿が引き起こされます。さらに末期の慢性腎不全では腎臓が機能しなくなり、乏尿・欠尿がみられます。

血液中に含まれる老廃物を体外に排出できなくなることで、蛋白質の代謝物である尿素窒素による中毒症状である尿毒症が引き起こされます。尿毒症とは、腎不全で起きる症状の全てを指します。尿毒症では全身の臓器が障害され、嘔吐や食欲低下などの消化器症状や、意識障害、沈鬱、痙攣などの神経症状が見られることがあります。
さらに、腎臓から産生されていた造血ホルモンが産生されなくなることで、貧血(腎性貧血)が見られるようになります。

犬の慢性腎不全の原因とは

様々な腎機能障害が原因となり慢性腎不全は引き起こされます。

免疫複合体性糸球体腎炎、非免疫複合体性糸球体腎症、腎アミロイドーシス、尿細管間質障害などの様々な疾患により慢性腎不全に至ります。糸球体疾患をもつ場合、重度の蛋白尿を示すことが多いとされています。

犬の慢性腎不全の好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

多発的な要因で引き起こされる疾患であり、好発犬種を列挙するのが難しい疾患です。ただし、慢性腎不全の中に家族性腎症とよばれる遺伝的要因が原因となる種類があり、ジャーマン・シェパード、サモエド、ブル・テリア、ケアン・テリア、シー・ズー、ラサ・アプソ、バセンジー、ビーグル、チャウ・チャウなどが好発犬種です。

犬の慢性腎不全の予防方法について

原因疾患の予防、早期発見治療をおこないます。

まず、栄養バランスのとれた食餌を与えることは大切です。
また、慢性腎不全を続発させる可能性のある基礎疾患、併発疾患、進行リスクの管理が重要になります。糖尿病、心疾患、膵炎が基礎疾患あるいは併発疾患として存在していることが多いとされています。尿石症、細菌性膀胱炎も併発していることが多いです。歯肉炎は進行リスクとなることがあります。
これらの疾患を治療、管理することで、慢性腎不全の予防および症状の進行を遅らせることが出来る可能性があります。

犬の慢性腎不全の治療方法について

代償性腎不全期

慢性腎不全の進行の具合により治療方針が異なります。

代償性腎不全期
→腎不全を身体が補助できなくなり、具体的な症状がみられはじめる状態

正常な腎組織の保護を目的に治療を行います。腎不全用の食事療法食により腎臓の負担や、尿毒素の発生を抑える。水分を十分にとらせ、また数日おきの輸液により血液中の老廃物の排出を助ける。骨の保護のためにビタミンD製剤の投与。貧血改善のためにエリスロポエチン製剤の投与。腎臓保護作用のあるその他製剤の投与(ACE阻害薬等)を行います。

非代償性腎不全期

→症状がある程度進行している状態
代償性腎不全期の治療を元にさらに進んだ治療を行います。輸液の頻度を連日に変更する。嘔吐・下痢に対する治療。腹膜透析の開始などを行います。

尿毒症期

→尿毒素による中毒が引き起こされている状態
腹膜透析に加え、血液透析を行う。中心静脈栄養や胃や食道に直接チューブを設置し、栄養を補給するなどの治療を加えておこないます。尿毒症による中毒死からできる限りの延命を行う期間です。

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