犬の臍ヘルニアとは
へそにヘルニアができる疾患です。
臍の尾が通る穴(臍輪)を通して脂肪や臓器が皮膚の下に脱出している状態です。
臍ヘルニアが小さく、脱出しているのが脂肪のみの状態であれば、必ずしも病的なものとは言い切れません。
臍ヘルニアは、腸管などの臓器が臍輪で絞められてしまう状態(嵌頓)になっていないか注意して観察する必要があります。
犬の臍ヘルニアの症状とは
ヘルニアが嵌頓していないか注意しましょう。
ヘルニアとは、臓器や脂肪などが組織の隙間を通って本来のあるべき場所から脱出してしまっている状態のことを言います。臍ヘルニアでは臍輪を通じて脂肪や臓器(ヘルニア内容)が皮膚の下に脱出することで、大きな「でべそ」の状態になります。
臍ヘルニアは食事の直後に大きくなる傾向がありますが、これはお腹が膨れ、脂肪や腸管などのヘルニア内容が皮下に押し出されるためです。
ヘルニア内容が腸管である場合、臍ヘルニアは腸管の運動に合わせて動きます。繊細な臓器ですのであまり触らないようにしましょう。また、便秘や嘔吐などの消化器症状や痛みが見られることもあります。最悪の場合、腸閉塞に至り、緊急事態となってしまうこともあります。
臍ヘルニアにおいて最も注意すべき状態は、ヘルニア内容が臍輪で拘束されてしまう嵌頓という状態です。嵌頓は血流を止め、腸管などのヘルニア内容を壊死させる可能性があります。臍ヘルニアの様子がいつもと異なり、熱を持っている、赤くなっている、などの症状が見られた場合はすぐに動物病院を受診してください。
犬の臍ヘルニアの原因とは
臍輪の閉鎖不全が原因です。
母犬と仔犬は臍の尾を通じて栄養や酸素をやり取りしています。母親の胎盤から伸びている臍の尾は臍輪を通じて仔犬の身体の中に入り込んでいますが、出生時に臍の尾が切れることで臍輪は徐々に閉鎖されていきます。
臍輪の大きさと、閉鎖の進み具合は犬によって異なり、生後数か月の仔犬では臍輪がほぼ閉鎖されている、臍輪から脂肪が少し出ている、臍輪が大きく腸管が脱出している、など様々な状態が存在します。
臍輪が大きく腸管が脱出しているものを除いて、仔犬の臍ヘルニアは必ずしも病的なものとは言い切れません。臍輪は成長と共に筋肉によって塞がれ小さくなるからです。また、成犬においてもヘルニア内容が脂肪のみである場合、特に症状は見られません。
また、後天的な臍ヘルニアも存在します。これは、開腹手術の後に見られることがあります。開腹手術の際に縫合が不充分であった場合、開腹手術後に大きな腹圧がかかってしまった場合、などに見られます。
犬の臍ヘルニアの好発品種について
全犬種で好発します。
臍ヘルニアは仔犬であればどのような犬種でも起こり得る状態です。臍ヘルニアが病的なものであるか気になる、治療の必要性が気になる場合は、かかりつけの獣医師に相談してみるといいでしょう。
犬の臍ヘルニアの予防方法について
予防法はありません。
臍ヘルニアは先天性の状態であるため、予防することはできません。
肥満によって悪化してしまう可能性はあるため、栄養管理をしっかりおこない肥満にならないように注意しましょう。
犬の臍ヘルニアの治療方法について
外科的な臍輪の閉鎖をおこないます。
外科的な臍輪の閉鎖をおこないます。
臍ヘルニアが腸管が脱出してしまう大きさである場合は、外科的な縫合で臍輪を閉じることで治療を行います。緊急性がない臍ヘルニアでは、犬の成長による臍輪の閉鎖を待つ場合や、去勢手術・避妊手術の実施のタイミングを待って同時に臍ヘルニアの手術を行う場合があります。
ヘルニア内容が壊死していることが疑われる場合、腸閉塞を引き起こしている場合は、緊急の開腹手術を行います。ヘルニア内容を腹腔内に戻し、必要であれば壊死した部分を除去します。