犬の腸の腫瘍とは
腸管の悪性腫瘍ではリンパ腫と腺癌が多いです。
犬の腸管の悪性腫瘍では、リンパ腫がもっとも多く、それに次いで腺癌が多く見られます。どちらの腫瘍もあまり予後はよくありませんが、外科手術の適応外であることが多いリンパ腫に比べ、腺癌は転移が比較的少なく、かつ外科的な切除が上手く行えた場合、予後が比較的良好です。
犬の腸の腫瘍の症状とは
嘔吐・下痢、便秘、血便などの消化器症状がみられます。
腺癌およびリンパ腫では、食欲減退、体重減少、嘔吐、下痢などの症状が見られます。さらに症状が進行しますと、小腸に腫瘍が発生している場合はメレナと呼ばれる黒色便、大腸に腫瘍が発生している場合は血便やしぶりなどの症状が見られるようになります。また、腫瘍が大きい場合は通過障害や消化管裂孔を引き起こすこともあります。
腸管に悪性腫瘍が発生すると、低アルブミン血症と呼ばれる、血管内で血液の水分を保持する役割がある蛋白質であるアルブミンの濃度が低下する症状が引き起こされることがあります。低アルブミン血症では、血管内の水分が血管外に移動してしまい、腹水が見られることがあります。また、低アルブミン血症になると消化管の外科手術の際、癒合不全を引き起こすことがあると言われています。
腫瘍による二次的な変化として貧血や脱水が見られることも多くあります。
犬の腸の腫瘍の原因とは
リンパ腫と腺癌はそれぞれ違った由来を持つ腫瘍です。
腺癌は腺細胞が癌化したものです。腺細胞とは、分泌機能を持つ細胞の総称ですが、汗を分泌する腺細胞、腸管に分布する腺細胞などがあります。腸管の腺細胞が癌化したものが腺癌です。
リンパ腫は白血球の1種であるリンパ球が癌化したものです。リンパ腫には他に、多中心型リンパ腫、皮膚リンパ腫などがあります。
犬の腸の腫瘍の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- アメリカンコッカースパニエル
- イングリッシュコッカースパニエル
- ゴールデンレトリバー
- コリー
- ジャーマンシェパード
- セントバーナード
- ブルドッグ
- ボクサー
- ラブラドールレトリバー
リンパ腫の好発犬種は、アメリカン・コッカー・スパニエル、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、セント・バーナード、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ブルドック、ボクサーだと言われています。
腺癌
腺癌の好発犬種はコリー、ジャーマン・シェパードだと言われています。また、雄でやや発生が多いとされています。
犬の腸の腫瘍の予防方法について
主に早期発見・治療をおこないます。
腫瘍性の疾患であり、予防することはできません。早期発見・治療が重要なため、動物病院で定期的な健康診断を受診することでリスクを下げることができます。
犬の腸の腫瘍の治療方法について
外科的な切除および抗がん剤を使った内科的療法をおこないます。
リンパ腫では、腫瘍が大きいために通過障害が起こっている場合や消化管裂孔が起こっている場合は外科的な切除をおこなうことがありますが、抗癌剤を使った内科的療法をおこなうのが一般的と言えます。リンパ腫のタイプや使用する抗癌剤の種類によって生存期間に差はありますが、予後はあまり良くありません。
腺癌では、外科的な切除が第一選択となります。小腸に腺癌が発生している場合、4~8㎝のマージンを確保することが望ましいとされ、腸管を大きく切除する必要がありますが、犬では30~40cm程度の小腸を残すことが出来れば消化管機能を温存出来ると言われています。また、直腸に腺癌が発生している場合、4㎝以上の切除は術後合併症のリスクが高まるとされています。外科的な切除が難しい場合は、人工肛門形成術が考慮されます。無治療の場合の平均生存期間は12日間という報告がありますが、外科的な切除により比較的良好な経過を辿ります。