犬の急性肝炎とは
急性の経過を辿る肝臓の炎症です。
さまざまな原因により、急激に肝臓に炎症が起こっている状態を急性肝炎と呼びます。はっきりとした原因が特定できないこともありますが、珍しい病気ではありません。
犬の急性肝炎の症状とは
急性肝炎では肝臓が障害されることにより、様々な症状が引き起こされます。
肝臓には大きく分けると3つの働きがあります。有害物質を分解して解毒、蛋白質の合成や栄養の貯蔵、
消化液である胆汁の合成と分泌、になります。急性肝炎になりますと、これらの肝臓の働きがうまくいかなくなります。
具体的な症状としましては、活動性の低下、食欲不振、嘔吐などの体調不良としてよく見られるような症状に加えて、黄疸や神経症状など肝臓が悪いことを示唆するような症状が見られるようになります。この神経症状は、肝性脳症と呼ばれ、本来肝臓で解毒されるはずだった毒素が溜まり脳に影響を与えることで発症します。
肝臓が腫大することによる腹囲膨満も見られ、重症例では止血異常が見られるようになります。これは、本来肝臓で合成されるはずだった、止血の際に使われる凝固蛋白と呼ばれる蛋白質が合成されなくなってしまうためです。止血異常が見られる場合、お腹などに紫斑と呼ばれる紫色の皮下出血が見られるようになります。
犬の急性肝炎の原因とは
急性肝炎は、感染症、薬剤、中毒性物質などが原因となります。
感染症、薬剤、中毒性物質などが原因となることがありますが、原因がはっきりしないこともあります。
犬の感染症では、レプトスピラ、エルシニア、アデノウイルスなどが急性肝炎の原因になるという報告があります。
アセトアミノフェンやカルプロフェンなどの鎮痛剤、ドキシサイクリンなどのテトラサイクリン系抗生物質などの薬剤が急性肝炎を起こすことがあるとされています。大量に投与することで急性肝炎を引き起こすこともあれば、特異体質として一部の犬に急性肝炎が見られるなど様々です。
中毒性物質としましては、キシリトールやベニテングダケなどで急性肝不全を引き起こしたという報告があります。キシリトールは人にとって良いものですが、犬にとっては毒になってしまいますので注意しましょう。犬がキシリトールを摂取すると急性肝不全と低血糖症を引き起こすと言われています。
犬の急性肝炎の好発品種について
全犬種で好発します。
感染症、薬剤、中毒性物質などが原因となることが多いため、好発犬種はありません。ただし、ドーベルマン、ウエストハイランドホワイトテリア、コッカースパニエルなどの犬種は遺伝的に慢性肝炎を起こしやすいと言われていますので、注意が必要です。
犬の急性肝炎の予防方法について
原因によっては予防できるものがあります。
急性肝炎の原因となる感染症は、ワクチンで予防できるものがあります。かかりつけの動物病院と相談しながらワクチン接種をすることをお勧めいたします。
薬剤、中毒性物質などは犬が届かない場所に保管するなど、環境を整えることで予防できるものもあります。
犬の急性肝炎の治療方法について
肝性脳症、感染症、ショックなどの治療を優先的におこないます。
急性肝炎の治療は、ほとんどの場合が対症療法となります。原因がはっきりしている場合は、その原因となるものの対処をします。
感染症が見られる場合は抗生物質などで感染症の治療を、薬剤や中毒性物質の摂取が原因として疑われる場合は中毒解毒剤などの投与で治療します。
肝性脳症が見られる場合、血液中に含まれるアンモニアを除去する必要があります。糖の1種であるラクツロースの経口投与、注腸投与をおこない、アンモニア産生菌を減少させることが出来ると言われています。
止血異常が見られる場合、ビタミンKや血漿の投与をおこない、止血を助けてあげます。
急性肝炎は、発見時の肝臓の状態で予後が決まります。発症時に重篤な肝機能障害が見られる場合、予後は不良と言えます。
また、急性肝炎は症状が落ち着いた後に慢性肝炎に移行することもあるため、注意が必要です。