犬の耳ヒゼンダニ症とは
ミミヒゼンダニによる感染症です。
外耳道および皮膚表面に生息するキュウセンヒゼンダニ科のミミヒゼンダニと呼ばれる小さなダニによって引き起こされる疾患です。とても強い痒みを引き起こし、とくに仔犬での発症が多く見られます。犬同士でも犬猫間でも高い確率で接触感染し、人間に感染した場合では一過性の丘疹を伴う皮膚炎を生じることがあります。人間の耳道内に寄生することはまれと言われています。
犬の耳ヒゼンダニ症の症状とは
耳に強い痒みを引き起こします。
ミミヒゼンダニの寄生により強い痒みが引き起こされ、頭をさかんに振る、ずっと耳を掻いている、頭を傾けているなどの症状がみられます。この痒みは犬の睡眠を妨げるほどの強さがあり、QOLを大幅に低下させます。また、痒みで頭を振ることで耳血腫を引き起こすことがあります。
外耳道には茶褐色から黒色の耳垢が認められることが多いのですが、犬では痒みがあっても耳垢の量は少ない傾向があります。
ほとんどの場合、症状は耳に限られますが、耳以外の皮膚(首、尾など)に寄生することもあります。
耳垢や皮膚を顕微鏡で調べ、ミミヒゼンダニの虫体や卵を検出することで診断します。他の寄生虫症や細菌性外耳炎、マラセチア性外耳炎と鑑別する必要があります。
犬の耳ヒゼンダニ症の原因とは
ミミヒゼンダニの外耳道への寄生が原因になります。
ミミヒゼンダニとよばれる肉眼ではほとんど見えないほど小さなダニが原因になります。このミミヒゼンダニは耳道内や皮膚表面に寄生し、角質や組織液を摂取して生活しています。ミミヒゼンダニのライフサイクルは約3週間とされており、成虫は宿主(犬)に寄生していると約2か月間生息し、宿主外の環境では約12日間生存すると考えられています。
ミミヒゼンダニは接触感染する可能性が非常に高いため、接触のあった動物や同居動物は全て治療をおこなう必要があります。
犬の耳ヒゼンダニ症の好発品種について
全犬種で好発します。
寄生虫が引き起こす疾患であり、好発犬種はありません。
犬の耳ヒゼンダニ症の予防方法について
症状の早期発見・治療、耳の定期的なケアをおこないます。
正しい方法で耳掃除をおこなうことである程度の予防効果を期待できます。また、定期的な耳のケアをおこなうことで、ミミヒゼンダニ症の早期発見・治療につながります。フィラリア・ノミダニ予防薬の中にミミヒゼンダニに効果があるものもありますので、定期的にフィラリア・ノミダニの予防をすることで、結果的にミミヒゼンダニの予防にもつながります。
犬の耳ヒゼンダニ症の治療方法について
ミミヒゼンダニの駆虫をおこないます。
まずは耳道内の耳垢や分泌物を、耳道洗浄液などを用いて洗浄し除去します。虫卵は駆虫薬に抵抗性を示すため、耳道内に存在する虫卵は物理的に出来る限り除去する必要がります。耳道内の炎症が強い場合、細菌やマラセチアなどの感染を伴う場合は、抗菌剤やステロイド剤を含む点耳薬を短期間用いることもあります。ミミヒゼンダニの成虫には駆虫薬が有効ですが、1回のみの投薬ですと再発してしまうこともあります。動物病院の検査で獣医師がミミヒゼンダニを確認されなくなったと判断するまで継続した治療をおこなうことが大事です。
通常、予後は良好ですが、重症例では耳道の洗浄が不十分な場合、駆除が完了出来ていないこともあります。