犬の「歩けない」症状とは
様々な原因から歩けなくなることがあります。
犬が歩けなくなってしまった時、様々な疾患が考えられます。
足や腰などに強い痛みがある、足腰に力が入らない、などの症状がある場合、歩けなくなってしまうことがあります。
急に歩けなくなることもあれば、足を挙げたりふらつくなどの初期症状から進行した結果歩けなくなることもあります。
犬の「歩けない」症状の考えられる病気(原因)とは
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアにはHansen Ⅰ型とHansen Ⅱ型があり、Hansen Ⅰ型は椎骨と椎骨の間のクッションの役割である椎間板の弾力性の低下によって変性した髄核が脱出する急性の疾患です。Hansen Ⅱ型は椎間板の加齢性変化によって線維輪が背側へ突出する慢性の疾患です。
椎間板ヘルニアの発生個所には頚部と胸腰部があります。頚部椎間板ヘルニアでは、頚部痛、四肢の歩行異常などが見られます。胸腰部椎間板ヘルニアでは、背部痛、両後肢の歩行異常、深部痛覚の消失などが見られます。
変性性脊髄症
変性性脊髄症は、脊髄に発症する神経変性疾患です。脊髄全域における白質の軸索変性と脱髄を特徴としており、尾側胸髄でもっとも重度の変性が認められます。
臨床症状としましては、後肢の運動失調に始まり、麻痺へと進行します。麻痺はやがて前肢にも見られるようになり、四肢の完全麻痺から横臥状態へと進行します。終末期には声のかすれや舌麻痺などが見られることもあります。最終的に呼吸筋の麻痺によって発症から3~4年で死亡します。発症してから死亡するまで疼痛は認められません。
膝蓋骨脱臼
膝のお皿とも言われる膝蓋骨が大腿骨の溝から脱臼した状態を膝蓋骨脱臼と呼びます。膝蓋骨脱臼のうち90%以上が内側に脱臼する内方脱臼であると言われています。膝蓋骨と大腿骨の接触により、関節軟骨損傷が起きている場合に痛みや違和感が生じます。
グレード1から4に分類されますが、常時脱臼していて整復ができないグレード4まで至っている場合、脚がぶらぶらしてしまう可能性が高いです。両後肢に症状が見られる場合や肥満である場合は、歩けなくなることがあります。
犬の「歩けない」症状の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- ウェルシュコーギーペンブローク
- シーズー
- ジャーマンシェパード
- チワワ
- トイプードル
- パピヨン
- ビーグル
- フレンチブルドッグ
- ペキニーズ
- ボクサー
- ポメラニアン
- マルチーズ
- ミニチュアダックスフント
ミニチュアダックスフンド、フレンチブルドッグ、ウェルシュコーギーペンブローク、ビーグル、シーズー、ペキニーズなどは軟骨異栄養性犬種と呼ばれ、椎間板ヘルニアの好発犬種となります。
変性性脊髄症は、ウェルシュコーギーペンブローク、ジャーマンシェパード、ボクサーで報告されています。
膝蓋骨脱臼は、チワワ、トイプードル、パピヨン、ポメラニアン、マルチーズなどが好発犬種とされています。
犬の「歩けない」症状の予防方法について
肥満にさせない
椎間板ヘルニアは、肥満にさせないことが発症のリスクを軽減してくれる可能性があります。
膝蓋骨脱臼は、肥満であることが症状を悪化させます。そのため、体重管理をおこない肥満にさせないことが予防につながると言えます。また、フローリングなどの滑りやすい床も症状を悪化させるリスクを高めます。愛犬が過ごす場所は滑りにくい床にするなど対策をとりましょう。
変性性脊髄症は、遺伝性疾患と考えられており予防することは出来ません。
犬の「歩けない」症状の治療方法について
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアの治療は、重症度によって治療が選択されます。
疼痛のみのグレードⅠの場合、鎮痛剤や副腎皮質ホルモン剤などによる内科的治療を選択されことが多いです。起立歩行可能な不全麻痺が見られるグレードⅡや起立歩行不能で横臥位になってしまうグレードⅢ以上の場合は、外科的治療が選択されることがあります。
運動制限をおこなう治療であるケージレストも推奨されています。犬は自発的に運動制限ができないため、狭いケージやサークルに閉じ込めて安静にさせる必要があります。破綻した椎間板線維輪の修復、椎間板物質のさらなる脱出の予防、脊髄や靭帯の炎症が治まるのを待つことが目的です。
変性性脊髄症
現在のところ、残念ながら変性性脊髄症の治療法は確立されていません。鎮痛剤や副腎皮質ホルモン剤などの治療薬には効果がありません。理学療法により生存期間が延長するという報告はあります。
膝蓋骨脱臼
鎮痛剤の投与、運動制限、減量、生活環境の改善、などをおこない症状が改善されることがあります。
症状が改善されない、重度になる場合は、外科療法をおこないます。