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Youtube 病気辞典
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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の「皮膚の異常」症状とは

皮膚には様々な異常が存在します。

皮膚に異常を来たすと、皮膚の色の変化、皮膚の隆起、皮膚の欠損、皮膚表面に付着物などが見られるようになります。
これらは獣医学的に様々な呼び名があります。

また、犬でよく見られる皮膚の異常として、掻痒、脂漏、脱毛が挙げられます。これらの皮膚異常を来たす代表的な病気を挙げていきます。

犬の「皮膚の異常」症状の考えられる病気(原因)とは

掻痒

掻痒とは掻きたくなるような皮膚の特別な刺激感であり、自分自身が感じる感覚です。犬が本当に痒いかどうかはわからず、人間は犬の行動や搔破痕を見て、おそらく痒いのだろうと推測することになります。犬は時に精神的要因などで掻痒を思わせる行動を呈することもあります。

痒みのある病気には、発疹のある痒みと発疹に乏しい痒みの病気があります。
・発疹のある痒み
1.膿皮症
細菌感染が原因となる皮膚疾患を膿皮症と呼びます。膿皮症は、細菌感染の深さにより表在性膿皮症と深在性膿皮症に区別されます。犬でよく見られる皮膚疾患の一つです。
表在性膿皮症は、表皮や毛包への細菌感染で引き起こされます。皮膚表面の赤み、痒みなどが見られ、表皮小環と呼ばれる円形の鱗屑が見られます。色素増加もよく認められます。
深在性膿皮症は、毛包よりも深い組織に細菌感染が起こることで発症します。細菌感染を受けた毛包に潰瘍が形成され、体重がかかる箇所や胴体に見られることが多く、脱毛、皮膚組織の浮腫、炎症が見られます。

2.毛包虫症
毛包虫症とは、ニキビダニの増殖を特徴とした炎症性皮膚疾患になります。感染の成立は、生後48~72時間で母犬から移行するとされています。ニキビダニが増殖する背景として、若齢では十分な皮膚免疫力が無いこと、高齢では皮膚免疫力を低下させる基礎疾患の存在があります。
ニキビダニの症状としましては、痒み、脱毛、鱗屑、色素斑、紅斑などが見られます。症状は顔や四肢端などに限局している場合と、体全体に見られる場合があります。

3.皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌症とは、真菌(カビ)の仲間である皮膚糸状菌が原因となる皮膚疾患です。
皮膚糸状菌症は人獣共通感染症ですので、愛犬が皮膚糸状菌症になってしまった場合は飼い主様も注意が必要で、人間が発症すると、皮膚にリングワームと呼ばれる円形の紅斑や痒みが見られます。
犬の皮膚糸状菌症の症状としましては、皮膚がガサガサになる鱗屑、発赤を伴う脱毛がよく見られます。頭部、四肢端に発症することが多く、痒みは軽度であることが多いですが、強いこともあります。


・発疹に乏しい痒み
1.アレルギー性皮膚炎
アレルギー性皮膚炎とは、アレルギーの原因物質(アレルゲン)に反応して発症する皮膚炎で、強い痒みを引き起こします。慢性の疾患ではありますが、アレルゲンの除去や内科的な治療に対して比較的反応性が良く、きちんとした治療や日常ケアを行うことで長期的に症状を抑えることができます。
顔面、四肢の末端、尾部、内股などの特定の部位において皮膚の炎症を伴った慢性的な強い痒みを引き起こします。紅斑や丘疹、脱毛などの皮膚症状が見られ、これらの症状が慢性的に存在することにより苔癬化や色素沈着を引き起こします。

2.アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、遺伝的素因を背景とした、慢性の痒みが見られる皮膚疾患です。アトピー性皮膚炎の発症には多くの要因がありますが、室内飼育の犬ではハウスダストマイトが最も認められる要因です。
発症年齢は一般的に6ヶ月~3歳頃が多いとされています。痒みから誘発された自傷により脱毛、糜爛、潰瘍、苔癬化、色素沈着などを引き起こします。

脂漏

脂漏とは、脂腺の機能亢進により皮脂が過剰に分泌された状態です。
脂漏は先天性脂漏と後天性脂漏に分けられます。初期は痒み、紅斑、丘疹が見られ、慢性化すると脱毛、苔癬化、色素沈着が見られるようになります。

先天性の脂漏を本態性脂漏症と呼びます。幼少より軽度の脂漏が見られ、加齢とともに症状が徐々に悪化する傾向があります。
後天性脂漏は、脂漏を発現させる基礎疾患が存在します。内分泌疾患、感染症、アレルギー性疾患、栄養不良などが挙げられます。内分泌疾患による脂漏は発症が緩徐ですが、アレルギーや感染症による脂漏では急性の発症や悪化を認めます。

脱毛

脱毛とは、発毛が部分的または完全に欠落している状態です。掻痒、精神的要因による物理的な擦過によって脱毛が生じますが、病気によって毛が抜けやすくなることもあります。

・掻痒のある脱毛
膿皮症、ニキビダニ症、皮膚糸状菌症などが挙げられます。

・掻痒に乏しい脱毛
1.クッシング症候群
副腎皮質機能亢進症は、慢性的に過剰なコルチゾール分泌によって生じる臨床的・生化学的変化のことを言います。
副腎皮質機能亢進症の自然発生性の原因は、下垂体ACTH産生腫瘍を原因とする下垂体依存性、副腎腫瘍を原因とする副腎依存性、過剰または長期的なグルココルチコイド投与を原因とする医原性があります。犬では下垂体依存性の発生頻度が厄85%を占めるとされています。
臨床症状としましては多飲が見られますが、これはコルチゾールの過剰分泌によるものです。その他に多食、腹部膨満、皮膚のトラブル(脱毛、石灰沈着、菲薄化)などが見られます。

2.甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの欠乏による疾患です。甲状腺組織の破壊による原発性甲状腺機能低下症が多く、自己抗体が検出されるリンパ球性甲状腺炎、原因不明の特発性甲状腺萎縮も知られています。
甲状腺ホルモンは全身の代謝を活性化する作用をもつため、欠乏することで代謝の低下が生じ様々な臨床症状が見られるようになります。
疲れやすくなるなどの活動性の低下、肥満、徐脈などが見られ、発生頻度は高くありませんがふらつきや顔面神経麻痺などの神経症状が見られることもあります。また、左右対称性の脱毛、ラットテイルよ呼ばれる尾の脱毛、色素沈着、角化異常などの皮膚症状も多く見られます。

犬の「皮膚の異常」症状の好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

アレルギー性皮膚炎は、ウェストハイランドホワイトテリア、秋田犬、ジャーマンシェパード、柴犬などが好発犬種であるとされています。

膿皮症や急性湿疹は、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリバー、柴犬などアンダーコートの密度が高い犬で発症が多い傾向があります。

ヨークシャーテリアは皮膚糸状菌に感染しやすい傾向があるとされています。

脂漏症は遺伝的な背景が疑われており、シーズー、アメリカンコッカースパニエル、ウェストハイランドホワイトテリア、バセットハウンド、ミニチュアシュナウザー、ジャーマンシェパードが好発とされています。

クッシング症候群は、トイプードル、ミニチュアダックスフンド、ミニチュアシュナウザー、ボストンテリア、ボクサー、ビーグルなどの犬種が好発犬種として挙げられます。

甲状腺機能低下症は、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ドーベルマンなどの犬種が好発犬種として挙げられます。

犬の「皮膚の異常」症状の予防方法について

正しいスキンケアをおこないます。

とくに高温多湿の時期に正しいスキンケアをおこないます。高頻度のシャンプーやしっかり乾かさないなど間違ったスキンケアをしてしまいますと、皮膚が蒸れてしまい皮膚のバリア機能が低下してしまう可能性があります。正しいスキンケアは皮膚の異常の予防につながると言えます。また、基礎疾患がある場合、その基礎疾患の治療をおこなうことは円形脱毛の予防につながる可能性があります。

犬の「皮膚の異常」症状の治療方法について

掻痒

掻痒の原因となる基礎疾患の治療をおこないます。

表在性膿皮症の場合、抗生物質の内服を2~3週間程度おこないます。病変部位が小さい場合や抗生物質の内服の補助として、抗生物質の外用薬の塗布や抗菌シャンプーによるスキンケアをおこないます。
深在性膿皮症の場合、表在性膿皮症と同じく抗生物質の内服をおこないますが、4~6週間程度投薬する必要があります。

毛包虫症の治療は、ニキビダニの駆除をおこないます。イソキサゾリン系化合物の駆虫剤が使用されます。イソキサゾリン系化合物の駆虫剤は、ノミやマダニの駆虫剤として認可されていますが、イヌセンコウヒゼンダニの駆除にも効果が報告されています。

皮膚糸状菌症の治療は、抗真菌薬を投与して、全身療法をおこないます。皮膚糸状菌が感染している毛が生えかわり消失するまで投与を継続する必要があるため、長期間投与することになります。
皮膚糸状菌に感染している毛を減少させるために毛刈りをおこない、抗真菌薬の経口投与と毛刈りに平行して抗真菌薬を含むシャンプー剤の洗浄、抗真菌薬の外用薬を塗布することもあります。
皮膚糸状菌症の犬の隔離と生活環境の清浄化もおこないます。とくにヨークシャーテリアは皮膚糸状菌に感染しやすいため、再感染を予防するためにも生活環境の清浄化は重要になります。

脂漏

脂漏症の治療は、脂漏に対するスキンケアおよび全身療法、抗真菌薬による局所および全身療法をおこないます。脂漏に対するスキンケアは、洗浄や保湿を実施しますが、皮膚症状に合わせて洗浄剤を選択します。重症度が高い場合は、副腎皮質ホルモン剤や免疫抑制剤、ビタミン剤、必須脂肪酸などを与えます。

脱毛

脱毛の原因となる基礎疾患の治療をおこないます。

クッシング症候群の治療方針は、下垂体依存性か副腎依存性によって異なります。
下垂体依存性の治療法には、高コルチゾール血症の緩和を目的とした内科療法、疾患の原因である下垂体腫瘍の切除を目的とした外科療法、下垂体腫瘍の縮小を目的とした放射線療法があります。
副腎依存性の治療法の第一選択は、外科的な副腎摘出となります。しかし、副腎付近の大血管への浸潤や遠隔転移などによって外科的な治療が困難な場合は、QOL改善を目的とした内科療法が選択されます。

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの補充とおこないます。人間用の薬剤、動物用の薬剤があり、どちらでも良好に管理することができます。
臨床症状によって改善までの期間が異なります。疲れやすくなるなどの活動性の低下は1週間以内に改善されることが多いとされています。皮膚症状や神経症状の改善には数か月かかることもあります。
低下した甲状腺の機能が回復することはないため、生涯にわたる甲状腺ホルモンの補充が必要になります。

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