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Youtube 病気辞典
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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の「皮膚の異常」症状とは

皮膚に赤みや痒み、脱毛などが起こります。

皮膚は動物の体を外界から守るバリアであるとともに、全身の健康状態を反映するバロメーターにもなります。

皮膚に異常があるときに見られる症状には以下のようなものがあります。
・痒み
・脱毛
・皮膚の赤み(発赤)
・湿疹や丘疹
・フケが多い
・皮膚が分厚く硬くなる
・しこりができている
・皮膚が変色している
・皮膚に潰瘍ができる
・体臭がする
・皮膚に傷がつき出血している
・瘡蓋ができる  など

このような症状が現れる原因には、皮膚病や全身性の疾患、外傷など様々なものがあり、その原因によってこれらの症状が一つだけ出る場合もあれば複数の症状が複合して現れる場合もあります。

また、皮膚症状だけでなく全身症状を伴っているケースもあります。
例えば極端に痒みが強い場合には食欲が低下したり眠れないなどといった症状が見られる場合があり、内科疾患が原因であれば飲水量が非常に多くなるなどといった変化が見られることもあります。

いつ頃からどんな症状が出始めたのか、症状が始まったきっかけがあるかどうか(フードの変更やペットホテルの利用など)、同居の動物や家族に痒みや皮膚症状が見られるかどうかなどといった情報は診断をするうえで役に立つことがあるため、気づいたことをメモしてまとめておき、病院を受診する際に説明できるようにしておくと良いでしょう。

猫の「皮膚の異常」症状の考えられる病気(原因)とは

皮膚疾患によっておこります。

皮膚に異常がみられる原因として最も多いのは、やはり皮膚疾患です。
猫には以下のように様々な皮膚の病気が起こることがあります。

・膿皮症
・マラセチア性皮膚炎
・皮膚糸状菌症
・アレルギー性皮膚炎(ノミアレルギー、食物アレルギー、アトピーなど)
・寄生虫症(毛包虫症、ノミ刺咬性皮膚炎、疥癬症など)
・免疫性疾患(皮膚血管炎、天疱瘡など)
・好酸球制肉芽腫症候群
・腫瘍性疾患(皮膚型リンパ腫、肥満細胞腫、扁平上皮癌、基底細胞腫、黒色腫、乳腺腫瘍など)
・心因性脱毛
・あごニキビ、尾腺炎

これらを鑑別するためには皮膚の検査を行います。
皮膚表面の状態の確認や、皮膚表面の細胞をセロハンテープなどで採取して顕微鏡で観察する、毛を一部採取して顕微鏡で見る、菌を培養して検査する、などといった検査をベースに、必要に応じてアレルギー検査や、特殊な病気(免疫疾患や腫瘍など)が疑われる場合には皮膚の細胞を採取して検査することもあります。

皮膚に元々存在する常在菌などが異常増殖して起こる皮膚疾患の場合は、背景に皮膚のバリア機能が低下するような基礎疾患が存在するケースもあり、その場合にはホルモン検査を含めた血液検査や全身的な検査(レントゲンや超音波検査)を検討します。

全身性疾患が原因のことがあります。

皮膚の異常ではなく、ホルモン疾患や内臓疾患、腫瘍性疾患などの全身性疾患が原因となって皮膚に全身状態の悪化が反映されている場合もあり、特に毛艶の低下や脱毛、フケなどは現れることが多い症状です。

・内分泌疾患(甲状腺機能亢進症、副腎皮質機能亢進症、糖尿病)
・内臓疾患(肝障害、腎臓病、消化器疾患など)
・腫瘍性疾患(リンパ腫、白血病など)
・ウイルス性疾患の末期(猫エイズウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症、猫伝染性腹膜炎など)

全身性の疾患がある場合には皮膚だけでなく食欲不振や元気の低下、吐き気や下痢などの消化器症状、飲水量や尿の変化を伴っていることが多いため、そのような症状に気づくことができるかどうかが早期発見のカギになります。

外傷が原因のこともあります。

外傷によって皮膚に異常が起こることもあります。
猫同士のケンカによる傷、ヤケド、異物の刺入、交通事故などが原因として挙げられますが、交通事故の場合は皮膚の異常にとどまらない損傷(骨折など)の方が多く見られます。

ヤケドは暑い夏に屋外で熱せられた金属(マンホールなど)を踏んだり、室内でアイロンや熱いコンロに接触することなどで起こります。

ケンカによる傷は傷口が小さい場合は被毛に隠れて見えないことが多く、特に咬傷では傷の奥で細菌感染などが起こるため、症状が現れた時には大きな膿瘍を形成したり、皮膚が一部壊死して黒色に変化していることがあります。
傷の程度によってはびっこを引いて歩くなど歩行状態に異常がみられることがあり、痛みや感染が重度の場合は元気がなくなります。

また肉球や指の間に草のノギなどが刺入することも多く、その場合には手足の先が腫れてびっこを引いて歩く様子や手足の先を気にしてしきりに舐める様子などが見られます。

猫の「皮膚の異常」症状の好発品種について

以下の猫種で好発がみられます。

レックス種の猫は体質的に皮脂の分泌が盛んなため、皮脂を好んで増殖するマラセチア性皮膚炎が多いとされています。

シャムは乳腺腫瘍や皮膚肥満細胞腫が好発しやすい傾向があるとされています。

また白猫は紫外線の刺激によって皮膚に扁平上皮癌ができやすい傾向があります。

猫の「皮膚の異常」症状の予防方法について

こまめにブラッシングしましょう。

ブラッシングによる適度な刺激は皮膚の血行を促し、皮膚や被毛の状態を健康に保つのに良いとされています。
ブラッシングしながら皮膚や全身の状態をチェックでき、さらに抜け毛を取り除いてあげることで猫自身がグルーミングで飲み込む毛の量を減らすことができるため、毛球症の予防にもなります。

できるだけ室内飼育をしましょう。

外に出る猫はノミやダニなどの寄生虫症や、他の猫とのケンカによる怪我のリスクが高くなります。

またウイルスに感染している猫とケンカ、濃厚接触することによって、猫白血病や猫エイズウイルスに感染してしまうこともあります。

これらを予防するためには室内飼育を徹底することが効果的です。

定期的に健康診断を受けましょう。

目には見えないところで進行する内臓疾患などの早期発見には健康診断が役立ちます。
特に中高齢の猫では腎臓病や腫瘍性疾患が発症することが多いため、一見元気そうであっても健康診断を受けることをお勧めします。

猫の「皮膚の異常」症状の治療方法について

原因疾患に対する治療を行います。

皮膚に異常がみられる原因は、皮膚自体の疾患のこともあれば全身疾患による体調不良がもとになっていることもあり、それぞれに対して治療を行うことが必要です。
まずはしっかりと検査を受け、原因を探ることが重要です。

皮膚の感染症では、抗生物質や抗真菌剤、駆虫薬などを投与します。
病変が非常に小さく限局している場合には外用薬のみで治療できる場合もあります。

アレルギー性の疾患では食事の変更や抗ヒスタミン剤、ステロイド、免疫抑制剤などの投薬、可能であればアレルゲンの徹底的な除去を行います。

皮膚の腫瘍性疾患に対しては、切除が可能なものでは外科手術を、リンパ腫など全身性の腫瘍や多発するタイプの腫瘍では抗がん剤治療などを行います。

皮脂の過剰分泌などによっておこるような皮膚炎では、シャンプー療法を行います。
シャンプーが苦手な猫でこまめに全身をシャンプーすることが難しい場合には部分的な洗浄を検討します。


内臓疾患やホルモン疾患が背景にある場合には、それらを内服薬などで治療することが必要です。
基礎疾患を治療せずに皮膚の治療だけを行ってもなかなか改善がみられず、良くなったとしてもすぐに再発してしまいます。

外傷のケアを行います。

外傷によって皮膚が傷ついたり膿瘍を形成している、皮膚が壊死している場合には、毛刈り・洗浄・傷の保護とともに投薬治療で感染に対する治療を行います。

皮膚が黒く変色して固くなっている場合はすでに壊死していることが考えられます。
壊死してしまった皮膚は脱落しますが、のちにその部分は新たに形成された皮膚で覆われますので、きれいにトリミングして壊死組織を取り除く、あるいは自然に脱落するのを待ちます。

傷の大きさや程度、場所によって傷口を保護するかどうかを検討しますが、猫は傷口を舐めてしまうことが多く、舌の突起で組織を削ってしまうとかえって悪化するため、完治するまではエリザベスカラーを付けて舐めることができないようにしましょう。

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