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Youtube 病気辞典
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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の「食欲不振」症状とは

食欲不振は様々な病気・病態の初期症状として最も多く認められる症状です。

食欲は動物の健康のバロメーターです。
食欲がないということは体に何かしらの不調が生じているということになりますが、どんな病気でも現れるいわゆる『非特異的症状』であるため、「食欲不振」だけでは体にどんな異常が起こっているのかは全く分かりません。

同じ食欲不振でも原因となっている病気によっては症状の現れ方が違うことがあり、それが診断の手がかりになります。

・長期間の間に少しずつ食が細くなった
・昨日まで食べていたのに急に食べなくなった(急性の発症)
・好きなものだけは少量食べる
・食べようとするが食べられない(口に入れるが出してしまう)
・フードの臭いを嗅いだだけでオエッとする
・食べ物に全く興味を持たない
・水も飲まない

また、体調不良時には食欲不振以外に以下のような症状を伴っていることもあります。
・吐き気や嘔吐
・便の変化(軟便、下痢、血便、便の色の変化など)
・尿の変化(尿量が増えた・減った、色がとても濃い黄色、血尿、尿が出ないなど)
・水を異常に多く飲む
・呼吸が早い、苦しそう
・鼻汁が出ている
・体が熱い(発熱)
・体の一部が腫れている
・口臭がきつい
・よだれを垂らしている
・歩き方がおかしい

これらの情報は診断をするうえで重要なヒントになります。
気づいたことがあればメモしておき、病院を受診した際に伝えるようにすると良いでしょう。

猫の「食欲不振」症状の考えられる病気(原因)とは

ありとあらゆる病気が原因となっている可能性があります。

猫に食欲不振を起こさせる原因には以下のようなものがあります。

・内臓疾患(心臓病、腎臓病、肝臓病、膵炎、呼吸器疾患、消化管の異常など)
・泌尿器疾患
・口腔内疾患
・内分泌疾患(糖尿病やアジソン病など)
・感染症
・脳、神経疾患
・腫瘍性疾患
・外傷
・異物の誤食
・熱中症     など

こうしてみると食欲不振が見られる場合には、ありとあらゆる病気の可能性があるということがわかります。

外傷や熱中症、異物の誤食などはどんな年齢の猫でも起こることがありますが、子猫でみられることが多い疾患、高齢期に気を付けたい疾患など、発症年齢に傾向がみられるものもあります。

感染症による食欲不振は若い猫に多い傾向があります。

免疫の未熟な1歳未満の猫では感染症が比較的多くみられ、多くの感染症では食欲不振が症状として現れます。
代表的なものは以下の通りです。

・細菌感染(クラミジアなど)
・ウイルス性疾患(猫ヘルペスウイルス感染症、猫カリシウイルス感染症、パルボウイルス感染症など)
・寄生虫感染(線虫、条虫、原虫など)

猫にカゼ症状を起こす感染症は上部気道に炎症を起こし、鼻汁や咳などの呼吸器症状に加え発熱を伴うことがあり、発症猫の多くは食欲が低下してしまいます。
特に猫は鼻がつまって匂いを感じなくなるだけでも食欲が減退してしまうことがあります。

また猫カゼの原因となるカリシウイルス感染症は口腔内に潰瘍を形成することが多く、潰瘍が痛くて食べられないというケースも多くみられます。

パルボウイルス感染症は抵抗力の低い子猫に感染すると消化管に激しい炎症を起こし、血便、嘔吐、発熱、白血球減少症などを起こします。
早い段階で適切に診断して積極的に治療を行えば回復することもありますが、致死率も高い怖い病気です。

寄生虫感染症は症状の出方に個体差があり、あまり症状を示さない場合もありますが、下痢や軟便など便に変化があらわれたり、腸に炎症を起こすと食欲低下が見られることがあります。
寄生虫の種類によっては、便の中や吐物の中に寄生虫の虫体が認められることがあります。

成長のためにたくさんの栄養が必要な子猫期は、本来は食欲が旺盛なものです。
これらの疾患によって食欲不振が続くと成長に悪影響を与えるだけでなく、低血糖による命の危険もあります。
ご飯を食べない時にはできるだけ早く病院へ連れて行きましょう。

高齢猫の食欲不振は内臓疾患や腫瘍に注意が必要です。

高齢の猫がご飯をあまり食べないという場合、加齢によって内臓の機能低下が起こっていることが原因のことが多く、代表的なものには腎臓病、肝臓病、心臓病などが挙げられます。
また、口腔内の疾患や腫瘍性の疾患も高齢期には非常に多く見られます。

・腎臓病
高齢猫に最も多く認められる内臓疾患は腎臓病です。
腎臓病は腎臓の機能が低下することで体の老廃物を体から排出できなくなってしまう病気です。

最もわかりやすい症状は水をたくさん飲むようになり、尿量が多くなるという変化です。
進行すると排泄されるべき老廃物が体にたまった状態になり、吐き気や重度の食欲不振、消化管障害による下痢、貧血などを起こします。

・口腔内疾患
食べようとした時に口を痛がる様子が見られる場合には、口腔内のトラブルが原因となっている可能性があります。
最も多いのは歯周病ですが、中には重度の口内炎や口腔内の腫瘍(扁平上皮癌など)が形成されていることもあります。

口腔内に異常がある時には、口臭がきつい、涎を垂らす、涎に血が混ざる、口を気にしてこする、食べるときに痛がって鳴く、硬いものは食べないが柔らかいものは食べる、首を傾けて片方の顎だけで食べているなどといった症状が見られます。
思い当たる症状がある場合には、一度口の中をチェックしてもらいましょう。

口腔内にできる腫瘍には、骨にまで浸潤して骨を溶かしてしまう悪性腫瘍も存在します。
早期発見できれば切除可能ですが、発見が遅れると治療が難しくなる場合もありますので、いずれにしても早めに病院へ連れて行きましょう。

・腫瘍性疾患
高齢期には様々な腫瘍性疾患も増加します。
猫で特に多くみられる腫瘍性疾患はリンパ腫や肥満細胞腫で、猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスに感染している猫ではさらにリンパ腫の発生率が高くなるとされています。

腫瘍性疾患は目に見える体表に病変を作ることもありますが、脳や内臓など目に見えない部分に病変を作ることも多いため、発見が遅れることもしばしばです。
食欲や排泄状態などの小さな変化に気づくことが早期発見につながることがありますので、異変を感じたらまずは病院を受診するようにしましょう。

猫の「食欲不振」症状の好発品種について

好発する品種はありません。

食欲不振はどんな病気でも見られる症状のため、好発品種は特にありません。

猫の「食欲不振」症状の予防方法について

感染症を予防しましょう。

すべての感染症ではありませんが、予防接種で予防できる病気がいくつかあります。
接種できる月齢になったらできるだけ早く予防接種を打ち、定期的に追加接種することで感染症に対する免疫を付けておきましょう。

また、多くは屋外で感染している猫との濃厚接触やケンカによって、あるいはノミやダニなどの外部寄生虫が媒介して感染が成立します。
それらを回避するためには、室内飼育を徹底することが効果的です。

定期的に健康診断を受けましょう。

健康診断を受けることで病気を早期発見できることがあります。
健康診断では血液検査だけでなく、尿検査、便検査、レントゲン検査、必要や希望に応じて超音波検査なども受けることが可能です。

検査した時に病気がみつからなくても、のちに変化が現れたとき(心臓や腎臓、肝臓の大きさ、形など)に早期発見することにもつながるため、高齢猫に限らず若い猫でも健康診断を受けておくことをお勧めします。

猫の「食欲不振」症状の治療方法について

原因疾患に対する治療を行います。

食欲不振を治療するためには、まずは原因を突き止めることが必要です。
他に認められる症状と食欲不振が現れ始めた状況などから必要な検査を行い、体に起こっている異常を見つけてもらいましょう。

・熱中症
熱中症を起こしている場合には緊急治療が必要です。
顕著な高体温がある場合には直ちに体を冷やし、体温が下がった後も数日は静脈点滴をしながら集中的に体液の補正や障害を受けた臓器の治療を行います。

・感染症
子猫で多い感染症では、対症療法を主に行います。
ウイルス感染にはインターフェロン、細菌感染には抗生物質などを投与し、寄生虫に対しては駆虫薬を使用します。
また下痢や吐き気がある場合には整腸剤や吐き気止めを投与します。
水分補給と栄養補給をしっかりと行い、目やにや鼻水はこまめに拭いて清潔に保ってあげましょう。

体力の低下が著しい場合には、皮下点滴などで体調を整え、少しずつ高栄養の缶詰などを与えます。

・内臓疾患
高齢期の疾患は内臓の機能低下によっておこるものが多いため、根治が難しいものもあります。
腎臓病や心臓病、肝臓病などに対しては臓器にかかる負担を軽減するお薬の投与を行い、さらなる進行を抑制するために食事療法なども行います。

・口腔内疾患
歯周病など口腔内に異常がある場合、麻酔をかけて処置を行う必要があります。
麻酔をかけて口の中をよく観察し、歯石を除去した後、歯周病を起こしている歯は抜歯しなければなりません。
中には全ての歯を抜歯しなければならないケースもありますが、術後歯肉が安定した後はドライフードを食べるようになってくれることもあります。

・外傷
骨折や脱臼等の外傷が原因の場合は手術や外固定(ギプスや包帯)などによって損傷部位を整復・固定する処置を行い、痛みを抑えるために消炎剤を投与します。
ケンカ傷などが化膿して膿瘍を形成したり発熱している場合には、傷の洗浄、保護、抗生物質の投与などを行います。

・腫瘍性疾患
腫瘍性疾患に対しては手術による切除が可能であれば外科治療を検討しますが、リンパ腫や手術が難しいほど進行した腫瘍の場合、すでに転移が起こっている場合は抗がん剤治療、放射線治療などを組み合わせた治療、緩和療法などを行います。

少しずつ栄養補給を行います。

子猫が長期間食事をとれない状態になると低血糖を起こしてしまい、それが致命的になることがあります。
また成猫や高齢猫でも長期間食べ物を食べない状態でいると肝リピドーシスという状態になり、やはり命に関わる状態に陥ってしまいます。

消化管が完全に閉塞してしまっている場合は食べさせても戻してしまうため、まずは手術などで閉塞を解除しなければなりませんが、それ以外の場合では吐き気止めを使用しながら少しずつ食事を与え、栄養補給を行う必要があります。

極端に食欲が落ちている場合は嗜好性の高いものを優先し、注射器などで強制給餌しなければならない場合は流動性の高い高栄養の缶詰などを少量ずつ頻回与えて治療します。

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