猫の「元気がない」症状とは
あまり動かずにじっとしていることが多くなります。
『元気がない』という状態は様々な病気や病態が起こっている時に見られ、『食欲不振』とならび「非特異的症状」とよばれる症状の一つです。
つまり元気がないという症状だけでは原因を特定するのは難しいのです。
また猫は気まぐれな一面もあるため、遊びに誘っても乗ってこないときに、元気がないのか単に気分が乗らないだけなのか判断が難しいこともあります。
そのようなときは何か他に症状がみられないか注意深く観察することが原因を突き止めるカギになります。
・寝てばかりいる
・震えている
・食欲不振
・吐き気がある
・便や尿の状態に変化がある
・動きが緩慢
・歩き方がおかしい
・体が熱い
・水をたくさん飲む
・毛ヅヤが悪い
・痩せてきた
ここに挙げたのはほんの一例です。
いつもと違う何かに飼い主さんが早く気付いてあげることが病気の早期発見につながります。
猫の「元気がない」症状の考えられる病気(原因)とは
あらゆる疾患・病態が原因の候補になります。
元気がないという症状が現れる疾患は数えきれないほど存在します。
・内臓疾患(心臓病、腎臓病、肝臓病、膵炎、呼吸器疾患、消化管の異常など)
・泌尿器疾患
・口腔内疾患
・内分泌疾患
・感染症
・脳、神経疾患
・腫瘍性疾患
・外傷(皮膚の傷、化膿巣、骨折、脱臼など)
・異物の誤食、中毒
・熱中症
・重度の便秘 など
同時に見られる症状から比較的診断がつきやすいものもあれば、かなり進行するまで特徴的な症状を示さない疾患もあります。
例えば呼吸器疾患や心臓疾患では、呼吸が早い、開口呼吸している、舌が青っぽい(チアノーゼ)などがよく見られます。
また糖尿病や腎臓病、副腎皮質機能亢進症などでは飲水量・尿量が顕著に増加します。
消化器の問題では吐き気や下痢、猫カゼなどでは目ヤニや鼻水がみられるなど、手掛かりになる情報が比較的多い疾患は診断もつきやすくなります。
しかし脳や神経にできる腫瘍や内臓に発生する腫瘍、不完全に閉塞した消化管内異物などは初期にはなんとなく元気がない以外に目立った症状を示さず、かなり進行してからけいれん発作や重度の貧血、腫瘍の破裂によるショック状態、消化管穿孔などを示すことがあり、治療が間に合わないケースもあります。
猫の「元気がない」症状の好発品種について
好発する品種はありません。
元気がないという症状はどんな病気でも見られる症状のため、品種による好発傾向は特にありません。
猫の「元気がない」症状の予防方法について
普段からスキンシップをよくとるようにしましょう。
時間のある時に猫が好きなおもちゃで誘って遊んだり、体をよく触るなど、スキンシップを密にとるようにしておくと、元気がない時の変化に気づきやすくなります。
普段とても激しく遊ぶ猫が走らなくなった、ジャンプしなくなった、すぐ息が上がる、歩き方がおかしいなどということがあれば早めに病院へ連れていくことができます。
また毛艶や抜け毛の量、体のやせ具合やしこりの有無、肉球の色や可能であれば歯茎の粘膜の色などをチェックする習慣ができているとさらに理想的です。
室内飼育をお勧めします。
各種の感染症や交通事故などによる外傷を予防するためには、室内で飼育することが効果的です。
猫カゼ症状を示す感染症などは感染時に鼻汁などの症状が現れるため治療も行いやすい疾患ですが、猫白血病ウイルスや猫エイズウイルス感染症は、感染しても気付かずに無症状のまま数年過ごし、発症期を迎えて初めて感染が判明することもあります。
しかしその時点では効果的に治療を行うことが難しく、さらにこれらのウイルス感染症にかかっているとリンパ腫などの腫瘍性疾患の発生率も高くなってしまうため、やはり予防が重要な疾患といえます。
感染している猫との濃厚接触やケンカなどの機会がなければ感染することはないため、同居猫に感染がなければ室内飼育をすることで予防が可能です。
猫の「元気がない」症状の治療方法について
原因疾患に対する治療を行います。
愛猫の元気を取り戻すためには、まずは原因が何かを突き止めることが必要です。
同時に見られる症状などを手掛かりに必要な検査を行い、診断を付けた後でそれぞれに対する治療を行います。
・感染症
感染症に対しては主に対症療法を行います。
ウイルス感染にはインターフェロン、細菌感染には抗生物質などを投与し、寄生虫に対しては駆虫薬を使用します。
また下痢や吐き気がある場合には整腸剤や吐き気止めを投与し、水分補給と栄養補給をしっかりと行い回復を促します。
体力の低下が著しい場合には、皮下点滴などで体調を整え、少しずつ高栄養の缶詰などを与えます。
・内臓疾患
腎臓病や心臓病、肝臓病などの内臓疾患に対しては臓器にかかる負担を軽減するお薬の投与を行い、さらなる進行を抑制するために食事療法などを行います。
猫で特に多い高齢期の内臓疾患は慢性腎臓病です。
正常に機能する腎臓の細胞が徐々に減少するにつれ多飲多尿の症状が強くなり、脱水傾向も強く現れるようになります。
必要に応じて皮下点滴や静脈点滴で脱水に対する治療も行います。
慢性膵炎も猫に多い内科疾患の一つで、なんとなく元気がない、吐き気が続く、元気がないなどといった症状の原因になります。
多くの場合は吐き気止めなどで対症療法を行い、症状が強い場合にはステロイド剤など消炎剤を投与したり、必要に応じて点滴を行い体調を整えます。
・外傷
ケンカ傷などが化膿して膿瘍を形成したり発熱している場合には、傷の洗浄、保護、抗生物質の投与などを行います。
骨折や脱臼など骨や関節に損傷が起こった外傷の場合は外科手術が必要になることがあり、完治するまではギプスや包帯などで固定・保護が必要になることもあります。
また痛みが強く現れるため消炎鎮痛剤を投与します。
・腫瘍性疾患
腫瘍性疾患に対しては手術による切除が可能であれば外科治療を検討しますが、リンパ腫や手術が難しいほど進行した腫瘍の場合、すでに転移が起こっている場合は抗がん剤治療、放射線治療などを組み合わせた治療、緩和療法などを行います。