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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の「嘔吐」症状とは

嘔吐とは、胃の内容物を吐き出す行為のことです。
犬は人間と比べると嘔吐しやすいと言えます。空腹時、ストレス、食べなれないものを食べた、などの原因の単発の嘔吐であれば大きな問題はありません。

嘔吐を繰り返す、食欲が無い、食べたものを毎回嘔吐する、下痢を伴う、などの症状が見られる場合は注意が必要です。
嘔吐が見られる原因は多岐に渡り、消化器疾患、腎疾患、中毒など様々です。

犬の「嘔吐」症状の考えられる病気(原因)とは

消化器疾患

急性膵炎は、嘔吐、下痢、食欲不振を引き起こす、よく見られる疾患です。重症度は様々で、軽度である場合は短期で治癒しますが、重度である場合は全身的な炎症反応を引き起こし短期間のうちに死亡することもあります。高脂血症、内分泌疾患などを抱えていると急性膵炎の発症のリスクが高くなるという報告があります。

胃の粘膜の病変、異物などの物理的な障害、胃酸分泌過多によって胃潰瘍を引き起こします。胃潰瘍は繰り返す嘔吐、食欲不振が見られます。腎疾患や肝疾患などに続発して見られることがあり、基礎疾患の改善が重要になる場合があります。

急性胃炎は、胃粘膜の炎症が原因となる嘔吐が見られます。食べたものや胆汁の断続的な嘔吐が見られ、腐敗物や中毒性植物を食べた、食物アレルギー、感染症などが原因となります。腎疾患や肝疾患に続発することもあります。

腸閉塞とは、異物や腫瘍などが原因となり腸がふさがっている状態のことです。食べたものを嘔吐する、便が出ない、などの症状が見られます。場合によっては、異物が腸を突き破り腹膜炎や敗血症を引き起こし、短期間で死に至ることもあります。

腎疾患

急性腎不全は嘔吐を繰り返し、元気や食欲が低下します。急性腎不全は、脱水などによる腎血流の減少、腎臓自体の障害、尿路の閉塞、などが原因で引き起こされます。腎臓への障害の原因としては、毒物、薬物、感染が挙げられます。

腎臓の構造と機能の異常が長期間続いた状態を慢性腎不全と呼びます。臨床症状は様々で初期は多飲多尿が見られることがあります。中期から後期にかけては尿毒症の徴候が見られ、食欲不振や嘔吐が認められます。尿毒症とは腎臓の機能不全で起きる全ての徴候を指し、消化管潰瘍、腸炎、血液系、神経系など全身に様々な影響を及ぼします。

腎盂腎炎とは、腎盂及び腎実質の炎症のことです。腎盂腎炎の原因として最も多く見られるのは細菌感染であり、真菌やウイルスなどが見られることもあります。急性の腎盂腎炎では、嘔吐、発熱、食欲不振などが見られます。

中毒

犬がキシリトールを摂取するとインスリンの分泌を刺激して低血糖症を引き起こします。引き起こす過程は解明されていませんが、肝障害が見られることもあります。キシリトール中毒の最初の臨床症状として、嘔吐がよく見られます。

エチレングリコールは、自動車の不凍液や製造年代の古い保冷剤に含まれることがある物質です。摂取すると急性腎不全を引き起こします。死亡率が高く注意が必要です。エチレングリコール中毒の最初の臨床症状として、嘔吐、元気消失、神経症状などがよく見られます。

犬はブドウを食べると中毒を引き起こすことがわかっています。生のもの、乾燥させたもの、調理されたものでもブドウ中毒は発生するとされています。無症状である場合もありますが、中毒を起こした場合は24時間以内の嘔吐が特徴的であるとされています。

犬の「嘔吐」症状の好発品種について

全犬種で好発します。

嘔吐を引き起こす疾患は様々であり、その疾患を引き起こす原因も感染、薬物、毒物など多岐に渡ります。そのため、あらゆる犬種、年齢で発生すると言えます。

犬の「嘔吐」症状の予防方法について

原因となるものから遠ざけます。

嘔吐を引き起こす疾患は様々であり、その疾患を引き起こす原因も感染、薬物、毒物など多岐に渡ります。感染を避けることは難しい場合がありますが、毒物や薬物などは環境を整えることで愛犬が摂取しないようにすることが予防につながると言えます。

犬の「嘔吐」症状の治療方法について

消化器疾患

どの消化器疾患であっても制吐薬の投与をおこないますが、異物による腸閉塞などの通過障害による嘔吐の場合は制吐薬の効果が期待できないこともあります。

制吐薬の投与に加えて、膵炎の場合は抗炎症薬の投与、胃潰瘍の場合は胃酸分泌抑制薬の投与をおこないます。

腎疾患

腎疾患の場合、制吐薬の投与をおこないながら原因となる疾患を治療します。

腎不全の場合、吸着剤の投与、血管拡張薬の投与、輸液、療法食の給餌をおこないます。

腎盂腎炎の場合、細菌感染が原因となることが多いため、抗生物質の投与をおこないます。

中毒

中毒による嘔吐が見られる場合、対症療法として制吐薬の投与をおこない、原因となる中毒物質に合わせた治療をおこないます。

キシリトール中毒の場合、低血糖症の治療としてブドウ糖の静脈内投与、肝障害の治療として肝保護薬の投与をおこないます。

エチレングリコール中毒の場合、エタノールの静脈内投与をおこないます。エタノールの副作用として中枢神経抑制や低血糖症が見られることがあります。

ブドウ中毒の場合、腎不全の治療をおこないます。

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