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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の「便秘」症状とは

便を十分量かつ快適に排出できない状態です。

便秘とは、排便回数の低下、宿便の数日に渡る停滞、しぶりを伴う排便困難などが見られ、体外に排出すべき便を十分量かつ快適に排出できない状態を指します。

宿便は停滞時間が長く続くと水分の再吸収が起こり、さらに排出しにくくなります。また、便内容の蛋白質や脂肪が腐敗することでそれを栄養とする病原性のある細菌が増え、全身状態が悪化します。

消化管の機能が低下する薬剤、体の痛みによって排便姿勢がとれない、環境の変化、などが原因となって便秘を引き起こすことがあります。
また、何らかの疾患によって腸を閉塞してしまうことが原因となる場合、何らかの疾患による腸の虚脱が原因となる場合もあります。

犬の「便秘」症状の考えられる病気(原因)とは

疾患による腸の閉塞

会陰ヘルニアとは、肛門脇の筋肉の隙間から直腸が飛び出してしまう疾患です。去勢していないオスに多く見られます。会陰ヘルニアの症状としましては、便秘が最もよく見られます。飛び出す臓器によって症状が異なり、膀胱が飛び出している場合は排尿困難が見られます。

巨大結腸症とは、持続的かつ不可逆的な結腸の増大を指し、結腸の運動性の低下を伴う疾患です。臨床症状は便秘に加え、血便やしぶりが見られることがあります。腫瘍、異物、骨盤骨折、神経の異常などが原因となり引き起こされます。

前立腺はオス犬の副生殖腺であり、雄性ホルモンの作用によって発達、維持されます。未去勢犬の場合、生涯を通じて前立腺は成長し続けます。前立腺肥大症とは、オス犬に見られる加齢による前立腺の過形成と肥大によって発生します。初期は無症状であることが多いですが、進行すると直腸を圧迫して便秘が見られるようになります。尿道を圧迫することで排尿困難が見られることもあります。

疾患による腸の虚脱

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの欠乏による疾患です。甲状腺組織の破壊による原発性甲状腺機能低下症が多く、自己抗体が検出されるリンパ球性甲状腺炎、原因不明の特発性甲状腺萎縮も知られています。
甲状腺ホルモンは全身の代謝を活性化する作用をもつため、欠乏することで代謝の低下が生じ様々な臨床症状が見られるようになります。
消化管の運動性低下による便秘、疲れやすくなるなどの活動性の低下が見られることがあります。

犬の「便秘」症状の好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

会陰ヘルニアは、ボクサーやボストンテリアなどの尾が短い犬種、ミニチュアダックスフントやペキニーズなどの小型犬種でよく見られます。

甲状腺機能低下症は、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ドーベルマンなどの犬種が好発犬種として挙げられます。

犬の「便秘」症状の予防方法について

疾患によって去勢手術をおこないます。

会陰ヘルニア、前立腺肥大症は主に未去勢犬で見られる疾患ですので、去勢手術をおこなうことが予防につながると言えます。

その他の疾患は、早期発見・早期治療をおこないます。

犬の「便秘」症状の治療方法について

外科手術

便秘にける外科手術は、会陰ヘルニアの手術になります。結腸の固定、ヘルニア孔の縫合などをおこないます。術後も排便のいきみは続くことがあり、管理を怠ると再発することがあります。

便を小さくして宿便が溜まるリスクを下げるために消化に良い療法食を与えることもありあす。

摘便

溜まった宿便を肛門から取り出すことは、即時に便秘を解決できます。

指による掻き出し、小型犬の場合は腹部から触って押し出す、採便棒を用いて砕く、などの方法があります。

また、直腸壁にこびりついた宿便を掻き出す際に腸壁に穿孔や裂傷を起こすと死亡してしまうこともあります。

浣腸や下剤の投与

脱水や電解質のバランスを輸液で整えてから浣腸をおこないます。
温かい生理食塩水や水道水を注入する方法、グリセリンを注入する方法があります。グリセリンは効果が強いため、閉塞している部位が無いかを確認しなければなりません。

閉塞していないことが確認できた場合、下剤を投与することもあります。薬剤によっては耐性が生じて効果が落ちてしまうこともあります。

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