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Youtube 病気辞典
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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の「食べてすぐ吐く(吐出)」症状とは

『嘔吐』との違いは食物が胃まで到達していないことです。

猫の飼い主さんであれば、猫が吐くところを何度か見たことがあると思います。
猫は胃の中に毛玉などが貯留すると、胃の中で刺激となり吐くことが多い動物です。

しかし、胃の中に入っているものを吐く『嘔吐』と異なり、『吐出』がみられる場合には病的な原因があることを考えなければいけません。

『吐出』とは、食べたものが胃に到達する前に吐き戻す状態で、食道内の異常や胃の入り口の異常によって食べ物が食道内に停滞しているために起こります。

嘔吐の場合は、吐く前におなかからゲコッゲコッとこみ上げる様子が見られ、最終的にゲェッと口を大きく開けて吐き出します。

それに対し、吐出の場合は胃からこみ上げる前駆動作がなく、体勢を変えた時や頭が下がった拍子に静かにケポッと食渣を戻します。
戻した食渣には胃液が混ざることはなく、食べたものがそのままの形状で出てくることが多いです。

吐出が起こる病気では摂食が困難となることが多いため、徐々に痩せ、成長期の猫では発育不良が起こります。
食道炎などを起こしている場合には涎を垂らす様子も見られます。

また食道内で食物が行ったり来たりしているうちに喉頭(気管の入り口)付近まで逆流し、誤って気管内に吸引することで誤嚥性肺炎を起こすことがあります。
誤嚥性肺炎では呼吸が苦しそうな様子や咳、発熱などがみられます。

猫の「食べてすぐ吐く(吐出)」症状の考えられる病気(原因)とは

先天性に起こることがあります。

吐出が起こる先天性の原因に、右大動脈弓遺残症というものがあります。
これは、心臓からでた血管の分岐形態に先天的な異常がある状態で、胎生期に存在した血管が食道を締め付けるような形状のまま残ってしまうために食道が十分に拡張できず、食物が停滞してしまいます。

このような異常を持った猫では、母乳やミルクを飲んでいる子猫の時期にはあまり症状がみられず、離乳の時期に症状が現れ始めます。
猫での発生は非常に稀です。

食道の異常によって起こります。

重度の食道炎に伴う食道狭窄や、食道内に異物が存在する場合、食道内の腫瘍、食道を圧迫する胸腔内の腫瘍、あるいは巨大食道症や重症筋無力症などといった食道の蠕動運動障害によって起こることがあります。

猫の食道炎は様々な原因で起こります。
慢性的に嘔吐を繰り返している場合には逆流性食道炎が起こることがあり、他には食道を傷つける異物の摂取、抗生物質の投薬時に食道内に停滞したことが原因で起こる食道炎もあります。
重度の食道炎を起こすとその部分が瘢痕化して線維化し、狭窄などの原因となります。

巨大食道症は、食道の収縮性が低下して食道内に食物が停滞してしまう病気です。
原因にはホルモン異常(甲状腺機能低下症や副腎皮質機能低下症など)や多発性筋炎、重症筋無力症など様々な基礎疾患が存在することがありますが、中には先天性のものもあります。
食道の筋肉が弛緩した状態になると、本来は蠕動運動によって速やかに胃まで運ばれる食物が、食道内に停滞して重力によって下垂し胃まで到達できなくなります。
その結果、頭が下がった拍子などに吐出が起こってしまいます。

胃の入り口の異常によって起こります。

胃の入り口を噴門といいますが、何らかの原因によって噴門が開きにくくなっていると、食道から胃の中に食べ物が入ることができず、停滞してしまいます。

噴門が開きにくくなる原因としては、胃の噴門部付近の腫瘍や食道下部の腫瘍、重度の胃炎などが考えられます。

猫の「食べてすぐ吐く(吐出)」症状の好発品種について

好発する品種はありません。

好発品種は特にありません。

猫の「食べてすぐ吐く(吐出)」症状の予防方法について

慢性的な嘔吐は早めに対処しましょう。

猫は毛玉を吐き出すため、吐くことが多い動物という認識があるかもしれません。
しかし、頻回吐くことで食道炎を起こしてしまうと、後に吐出の原因となってしまいます。

月に1~2回毛玉を吐く程度であれば問題ないことが多いですが、続けて繰り返し吐く、食欲が落ちる、よだれを垂らすなどという場合は病的な原因がある可能性が高いため、できるだけ早く病院を受診しましょう。

猫の「食べてすぐ吐く(吐出)」症状の治療方法について

原因疾患に対する治療を行います。

吐出の原因がはっきりしている場合には、それぞれに対する治療を行います。

右大動脈弓遺残症では、根本的な治療としては手術が必要です。
遺残している異常血管を結紮して切離し、食道の締め付けを解除します。
それまでは流動性の高い食事を立位で与えるなどといった対処を行います。

食道炎などによる食道狭窄が起こっている場合には、麻酔下でバルーンを入れて食道を拡張させる処置を行います。
一度の処置では不十分なことも多く、同様の処置を数回繰り返します。
また、食道の粘膜を保護するお薬を投薬します。

異物が原因となっている場合には異物を除去します。

食道内あるいは食道外の腫瘍による圧迫が原因の場合は、外科切除や抗がん剤による内科治療を検討します。
肺や胸腺の腫瘍などは進行程度によっては切除が可能ですが、心臓の腫瘍などの場合は予後があまりよくありません。

巨大食道症の場合は、基本的には基礎疾患を治療しますが、先天性のものでは以下のような対症療法を行います。

対症療法を行います。

基礎疾患の治療を行っても改善しない巨大食道症や、先天性の巨大食道症などに対しては、対症療法を行います。

食事は流動性の高い食事を立位で与えるようにし、食べ終わった後も15分~30分ほどは立たせた状態で維持します。
こうすることで食道の角度を垂直に近づけ、食道から胃への食物の流れをスムーズにできます。

その様な対処を行っても吐出がみられ栄養状態が改善しない場合や、基礎疾患の治療に必要な投薬が吐出によってうまくいかない場合には、胃に胃瘻チューブを付け、流動食や薬を直接胃の中へ入れる治療を行います。

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