猫の「下痢」症状とは
軟便~水溶性の下痢など水分を多く含んだ便が出ます。
猫は様々な原因で下痢をしてしまうことがあり、その程度は原因によって様々です。
下痢の時は水分の多い便を頻回することが多く、かろうじて形になっている軟便から水溶性の形にならない便などが見られます。
腸に重度の炎症がある場合や腸粘膜が傷ついている場合には黒色便(タール便)や血液の付着した赤い便が出ることもあります。
下痢をしている時には、他に以下のような症状を伴っていることがあります。
・食欲不振
・元気がない
・腹痛
・腹鳴(ゴロゴロ、キュルキュル鳴る)
・吐き気、嘔吐
・排便回数が多い
・しぶり(便が出ないのに排便姿勢をとる)
・血便(黒色便~鮮血便)
・便のにおいが変化する
子猫で下痢を繰り返し食欲も低下してしまうと、脱水に陥り命に関わることがあります。
下痢が続く場合には便を持参して病院を受診しましょう。
猫の「下痢」症状の考えられる病気(原因)とは
食事に関連して下痢することがあります。
便は食事を消化して作られるため、食事量や食事内容が下痢に関連していることがあります。
例えば単なる食べすぎでも消化が追いつかず下痢することもありますし、フードを急激に変更した場合や特定の食物に対するアレルギー、食物不耐症によっても下痢が見られます。
普段キャットフードしか食べていない猫が人のおかずを盗み食いした際などにも起こります。
腸炎や腫瘍などの病気によって起こります。
腸の炎症や腫瘍などの病気によって起こる下痢もあります。
以下にその代表的なものを示します。
<感染症>
・寄生虫感染(回虫、条虫、鉤虫、コクシジウム、ジアルジア、トリコモナス等)
・細菌感染(カンピロバクター、サルモネラなど)
・猫パルボウイルス感染症(猫汎血球減少症)
・猫伝染性腹膜炎
・猫エイズウイルス感染症
・猫白血病ウイルス感染症
<炎症性疾患>
・炎症性腸疾患
・膵炎
・胆管炎、胆管肝炎
<ホルモン疾患>
・甲状腺機能亢進症
<消化器の腫瘍>
・リンパ腫
・腺癌
・肥満細胞腫
・好酸球性硬化性線維増殖症
<その他>
・腎臓病
・糖尿病
・腸重積
・腸以外の臓器の腫瘍 など
このように消化管自体に異常があることで下痢が起こることもあれば、他の内臓疾患によって体調が悪化した結果として下痢がみられることもあります。
これらの疾患を鑑別するためには便検査、血液検査、レントゲン検査、超音波検査をはじめ、必要に応じてホルモン検査や内視鏡検査などが必要になることがあります。
異物の摂取やストレスによっても起こります。
異物を摂取して腸が不完全に閉塞している場合や、異物の刺激で腸に炎症が起きている場合、あるいはひも状の異物が腸の蠕動運動によって腸をアコーデオン状に束ねてしまい、腸粘膜が傷ついたり炎症を起こした状態になると下痢を起こします。
またネギ類や殺鼠剤などの中毒性物質を誤って口にした場合も下痢症状がみられることがあります。
中毒とは異なりますが、他の疾患の治療のために抗生物質や消炎剤を飲んでいる場合や抗がん剤治療を行っている場合に、副作用として起こる下痢もあります。
他には引っ越しや家族構成が変わった、新しく猫を迎えたなど、生活環境が大きく変わるようなことがあった場合にはストレスによる下痢がみられることがあります。
猫の「下痢」症状の好発品種について
全猫種で好発します。
どんな猫でも起こる可能性があります。
寄生虫感染症やパルボウイルス感染症は子猫や若い猫、外に出る猫で起こりやすく、甲状腺機能亢進症は主に10歳以上の高齢猫で起こります。
また、猫エイズウイルスや猫白血病ウイルスに感染している猫ではリンパ腫などの腫瘍の発生率も高くなります。
猫の「下痢」症状の予防方法について
フードの変更はゆっくりと行いましょう。
成長に伴ってフードを変更するタイミングは多々あると思いますが、急にフードを変更すると消化管がその変化に追いつかず下痢などの消化器症状を示してしまいます。
フードを変更する際は、もともと食べていたフードに新しいフードを少しずつ混ぜ、その混合割合をちょっとずつ変えていきながら数日かけて変更するようにしましょう。
誤食を予防しましょう。
ヒトが食べる加工された食品の中には、猫の体に有害な食材が含まれていることもあります(ネギ、ニラなど)。
それらを食べてしまうと、量によっては下痢などの消化器症状だけでなく溶血などを起こし、命にかかわる可能性もあります。
ヒトの食べ物を食べられないように片づけることはもちろん、普段からヒトの食べ物を食べる習慣がついていると盗み食いする可能性も高くなりますので、ヒトの食べ物をむやみやたらと猫にあげるのは控えましょう。
また、毛糸などひも状のものや壊れかけた猫用おもちゃ、子供のおもちゃの小部品などは、猫が遊んでいると誤飲してしまう可能性の高いものです。
危険なものは猫の手が届かないように管理し、たくさん遊んでボロボロになったおもちゃは廃棄して新しいものにしましょう。
予防接種を受け、便チェックを習慣にしましょう。
猫汎血球減少症は重篤な胃腸炎をおこし命に関わる感染症ですが、予防接種で予防できる病気です。
特に抵抗力の低い子猫では致命的になる確率が高い病気のため、予防接種が可能な月齢になったらできるだけ早く予防接種を受けましょう。
便のチェックは、病気の早期発見につながります。
排便回数や便の色・形状はトイレ掃除の際に少し意識してチェックするようにし、何か変化がみられた場合には、便を持参して病院を受診しましょう。
また、症状が特になくても子猫や保護猫の場合は数回便検査を受け、寄生虫などがいる場合は速やかに駆虫しましょう。
猫の「下痢」症状の治療方法について
それぞれの原因に対処します。
下痢の治療はまず下痢の原因を特定することが重要です。
寄生虫がいる場合には速やかに駆虫を行い、トイレも一度砂を全て廃棄し、清浄化する必要があります。
細菌感染やウイルス感染に対しては抗生物質やインターフェロンでの治療に加え、体調を整えるために点滴などを行います。
肝臓や膵臓などの内臓疾患が原因の場合は、肝保護剤や消炎剤、抗菌剤などで治療を行います。
重度の肝障害や膵炎では、食事を摂れなくなることも多いため、その場合には入院して栄養剤の点滴など集中治療が必要です。
炎症性の腸疾患では炎症を抑えるためにステロイドや免疫抑制剤などの使用を検討します。
腫瘍が原因の場合は腫瘍の外科的な切除が必要です。
しかし腫瘍がリンパ腫の場合で、腸閉塞や消化管穿孔の危険性がない場合には抗がん剤治療を行います。
対症療法を行います。
誤食などによって一過性に起こった下痢や、下痢の原因がはっきりせず、症状も軽度の場合には整腸剤などで対症療法を行います。
頻回の下痢で脱水傾向がみられる場合は皮下点滴などで水分補給を行い、体調を整えます。
食事療法を検討します。
内臓疾患などの明らかな原因がなく、なんとなく下痢を繰り返す場合には、食事療法として食事を変更することを検討します。
食事療法に使われる食事としては、高消化性の食事や食物繊維が強化された食事、アレルギーの原因となりやすいたんぱく質をあらかじめ細かく分解してあるアミノ酸フードや加水分解食などがあります。
食物アレルギーなどの可能性も含めて考え、食事変更による改善があるかどうかを見ながらフードを選択していきます。