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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の「便秘」症状とは

便が出ず大量に便が貯留します。

猫は1日に1~3回ほど排便します。
食事内容や食事量によって個体差はありますが、1日に少なくとも1回は排便するのが普通です。

しかし便秘になると数日に1回しか排便がみられず、その分便が固く大きくなり、排便に苦労する様子が見られ、排便時には肛門や直腸粘膜が切れて出血することもあります。
便が貯まりすぎると、食欲・元気が低下し、嘔吐やよだれを垂らす様子がみられます。

便秘が重症化するとトイレに入っていきんでも便が出ず、心臓の悪い猫や高齢猫では血圧が上がりすぎることで倒れてしまうこともあります。

ちゃんとご飯を食べているのに2日以上便が出ていないという場合には、早めにかかりつけの病院に相談し、重症化する前に対処するようにしましょう。

猫の「便秘」症状の考えられる病気(原因)とは

外傷が原因のことがあります。

交通事故などによって骨盤を骨折して変形したまま癒合した場合、腸の通り道が狭くなることによって大きな便が通過できず、便秘になることがあります。
また骨盤だけでなく腸に分布する神経の損傷が原因で腸の蠕動運動に障害が生じ、便が貯まりすぎてしまうこともあります。

このような状態が長く続くと、結腸が貯留した便によって拡張して『巨大結腸症』になってしまいます。
巨大結腸となった状態では腸が本来の容量を超えて過伸展した状態となり、腸の運動性は非常に低下し、自力での排便が困難となります。

腸が何らかの原因で閉塞して便秘になることもあります。

大きな毛球や異物の誤飲、あるいは腸にできた腫瘍などによって腸の通過障害が起こっていると便秘をおこします。

他には、過去に重度の大腸炎を起こしたことがある場合、後遺症で腸が一部狭窄していることがあり、その様な場合にも大きめの便塊が通過できずに便秘になってしまいます。

その他の原因でも便秘になります。

食事内容や水分摂取不足、運動不足、重度の肥満、加齢などによっても便秘になります。

毛玉ケア効果のあるフードの中には食物繊維を強化しているフードがあります。
食物繊維を摂ることは便秘の対策に良いことのように思われますが、食物繊維の種類(不溶性食物繊維、水溶性食物繊維)とその割合によっては便の嵩が増えるだけで便秘の解決にならない場合もあります。
すでに便秘の傾向のある猫や腸の運動性が低下している猫、水分をあまりとらない猫が、便を固める効果のある不溶性食物繊維ばかりたくさん摂ると、便が固くなりお腹の張りが強まることもあるのです。

食事量が少なすぎる場合も、作られる便の量が非常に少ないために腸への刺激が起こりにくく、排便間隔が空くために便から水分がより吸収されて固くなり、便秘がちになってしまいます。

また、猫はもともと水分をたくさん摂る動物ではないため、水分摂取量が不足すると便から水分がより多く再吸収され、硬い便になることで便秘が生じます。

運動不足や肥満によって腸の周りにたくさんの脂肪がつくと、腸の蠕動運動が低下して便秘になりやすくなります。
また、高齢になると内臓機能が少しずつ低下し、腸の運動性も若干落ちるため便秘になりやすくなります。

猫の「便秘」症状の好発品種について

以下の猫種で好発がみられます。

尻尾が短いマンクス種の猫では先天的に便秘になりやすい傾向があるとされています。
しかし便秘はどんな猫にでも起こります。

猫の「便秘」症状の予防方法について

食物繊維をバランスよく摂取しましょう。

食物繊維の中でも可溶性の食物繊維は水分を多く保持する食物繊維で、便がカチカチになるのを防いでくれます。
便秘になりやすい猫の場合、可溶性食物繊維が多く含まれるフードにすることでスムーズな排便を維持できることがあります。

体重管理と適度な運動で腸の動きを低下させないようにしましょう。

前述したように肥満は腸の動きを低下させる要因になります。
肥満にならないよう、食事は量を測って決められた量を与えるようにし、適度に運動させることで腸の動きをよくしてあげましょう。

猫の「便秘」症状の治療方法について

潤滑剤や緩下剤を投与します。

比較的軽度の便秘であれば、便の滑りをよくする潤滑剤や、腸の動きを調整する消化管運動促進剤、必要に応じて緩下剤などを投与し、食事を見直して変更することで改善できます。

排便できない場合は浣腸処置を行います。

重度の便秘の場合や、巨大結腸になってしまっている場合は、便塊が大きすぎて自力では排便できなくなってしまいます。
そのような場合には浣腸処置を行います。
温水や生理食塩水を肛門から注入し、便を軟らかく、滑りやすくしてからマッサージなどで排便を促します。
猫自身が力んでも便が排出されない場合には、便を掻き出してあげなくてはなりません。

浣腸処置は猫自身に非常に大きな負担がかかります。
一度便を出したら潤滑剤や緩下剤を定期的に投与し、食事を変更するなど、継続して治療することで再発を予防する必要があります。

外科手術を行うこともあります。

交通事故などで骨盤が骨折し、骨が正常な位置からずれているために骨盤が狭くなっている場合には、骨折の整復を行い骨盤を元の形に戻してあげます。

昔の骨折によって既に骨が変形して癒合している場合には、骨を一部切除し、できるだけ矯正を行った形で再固定して骨盤腔を広げる手術を行います。

巨大結腸症の場合は、拡張しきって収縮性を失った結腸を切除して、運動性の残っている腸を吻合します。
中には大腸の大部分を切除しなければならないこともあり、術後はしばらく下痢便が出ますが、しばらくすると徐々に落ち着いてきます。

また腸管内の腫瘍や異物の場合も、腫瘍部分の腸の切除や、胃腸を切開して異物を除去するなどといった手術が必要になることがあります。

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