猫の「脚がぶらぶらしている」症状とは
骨折や脱臼によって足を着けなくなった状態であると考えられます。
猫が脚をぶらぶらさせているときは、足に何らかの重度の障害が生じて足(前足や後足)を着地できなくなった状態です。
関節の痛みや皮膚・肉球などに傷や腫れがある場合であれば、何とか足を着地することはできますが、脚を引きずるような歩き方(跛行)になります。
そうではなくぶらぶらしているということは、骨折によって骨の連続性が断たれ、痛みから着地できない、あるいは関節が外れてしまい(脱臼)患肢に負重することができず、浮かせた状態を保っているということになります。
骨折や脱臼が起こっている場合には、損傷した部分の周囲は腫れ、時には内出血などで皮膚が変色します。
元気や食欲がなくなり、痛みでうずくまっていることも多くなります。
また患部を触られるのを嫌がり、時には攻撃的になることもあります。
いずれの場合もレントゲンで状態を確認し、手術などによる治療が必要になりますので、様子を見ずにできるだけ早く病院へ連れて行きましょう。
猫の「脚がぶらぶらしている」症状の考えられる病気(原因)とは
四肢の骨に骨折がある可能性があります。
体には骨という軸があり、そこに筋肉や靭帯がつき他の骨と連結することによって、歩いたり走ったり体を支えることができます。
特に四肢の骨は体重を支えるために普段から大きな力がかかっています。
その軸となる骨が骨折してしまうと、体を支えることができません。
高所からの転落(高層階からの落下など)や交通事故など、強い外力がかかるような外傷を受けると骨折し、脚がぶらぶらして着地できない状態となります。
稀に骨の病気によって骨が脆くなり、骨折することもあります。
これを「病的骨折」といいますが、骨肉腫や悪性腫瘍の骨転移など、腫瘍疾患で見られます。
股関節や肩関節、肘関節などの脱臼が起こっている可能性があります。
関節は骨自体の形状と、その周囲を包む関節包・筋肉・靭帯などの支持組織によって骨と骨を連結させており、関節があることで四肢や体はしなやかに動きます。
その関節が外れてしまうと、脚がぶらぶらした状態になります。
脱臼は股関節や足関節、肩関節、肘関節、手関節などに強い外力がかかることや、先天的に関節の形成不全などが存在する場合に起こります。
靭帯の損傷が起こっている可能性があります。
膝蓋骨脱臼も脱臼の一種ですが、この場合は脚がぶらぶらするという状態にはなりません。
膝関節は膝蓋骨が橋渡しする膝蓋靭帯も大きな役割を果たしていますが、他に前十字靭帯、後十字靭帯、側副靭帯、関節包及び筋膜などによって強固に支えられている関節です。
その為、膝蓋骨脱臼では歩き方に変化が出ることはあっても、ブラブラするという状態にはあまりなりません。
ブラブラしている場合は、膝関節を支える複数の靭帯に損傷が起こっている可能性が高くなります。
このような膝の損傷は交通事故などで瞬間的に強い力がかかった場合などに起こります。
靭帯の損傷は、肩関節や股関節の脱臼など、膝関節以外の脱臼でも起こっている可能性があります。
猫の「脚がぶらぶらしている」症状の好発品種について
以下の猫種で好発がみられます。
- デボンレックス
- ヒマラヤン
- ペルシャ
- メインクーン
これらの品種では遺伝的に股関節形成不全が起こりやすく、股関節脱臼のリスクも高いと考えられます。
猫の「脚がぶらぶらしている」症状の予防方法について
室内飼育にすることで不慮の事故を防ぐことができます。
猫の体はしなやかで、ある程度の高さから飛び降りてもその衝撃をうまく吸収するため、室内で骨折や脱臼が起こることはあまり多くありません。
多くの骨折・脱臼は屋外、特に交通事故や高所からの落下などで起こります。
室内飼育にすることでこのようなリスクを減らすことができると考えられます。
肥満にならないようにしましょう。
体重が重いと、必然的に骨や関節にかかる負担が大きくなります。
適切な食事管理で、肥満にならないように気を付けましょう。
猫の「脚がぶらぶらしている」症状の治療方法について
骨折は手術で整復する治療が必要です。
猫が骨折してしまった場合、多くの場合は手術による整復と固定が必要です。
骨折した部分の骨のずれ具合や骨折部位(指の骨など)によっては、外固定(包帯やギプスなど)で様子をみるというケースもありますが、動物の骨折では安静を指示しても安静を保てないことが多いため、手術で骨自体を整復・固定することが多くなります。
脱臼は整復可能なことがありますが、多くは手術による固定が必要です。
股関節脱臼などでは、麻酔をかけた状態で外れた股関節をもとの位置に戻し、しばらく包帯で固定することで整復がうまくいくことがあります。
しかし多くの脱臼では、関節部分を支える靭帯が断裂したり引き延ばされており、骨の位置をもとに戻しただけでは再脱臼することが多くなります。
そのため、整復・固定だけでは不十分と考えられる脱臼に対しては、手術が必要となります。
手術では関節を金属で固定したり、損傷した靭帯を再建する手術などが行われます。
股関節の場合は、大腿骨頭を切除してしまう手術が行われる場合もあります。
病的骨折の場合は断脚術も考慮に入れます。
骨の腫瘍によって骨が脆くなり骨折した場合には、骨折部位が癒合することはありません。
多くの場合は骨折や腫瘍自体の痛みの管理のために断脚術を余儀なくされます。