犬の「食べてすぐ吐く（吐出）」症状とは

食道の問題などによって食べ物を吐き出します。

食べた物が胃に到達せずに吐き出してしまうことを吐出と呼びます。
嘔吐とは胃に到達した物を吐き出すことで、吐出とは異なります。

勢いよくドッグフードを食べた直後に吐き出してしまうなど、単発で見られる吐出であれば大きな問題はありません。
繰り返し吐出が見られる場合は、食道の異常など何らかの原因が隠れている可能性があります。

犬の「食べてすぐ吐く（吐出）」症状の考えられる病気（原因）とは

巨大食道症

犬の吐出の原因として、巨大食道症が挙げられます。巨大食道症とは、食道の運動性が低下し、食道が広範囲に渡って拡張した状態のことを言います。

食べ物が拡張した食道に留まってしまい、食べた直後に吐き出す、食べて数分から数時間後に吐き出す、などの症状が見られます。
巨大食道症の一般的な症状は吐出ですが、誤嚥性肺炎を併発することが多く、発咳、呼吸困難が見られることもあります。
巨大食道症の犬は、誤嚥性肺炎の急変や突然死の可能性があり注意が必要です。

食道狭窄

食道狭窄とは、食道の一部あるいは広範囲に渡って狭窄している状態のことです。

食道狭窄の症状としては、吐出や流涎が一般的です。食欲はあるが食後に吐き出すといった症状から発見されることがあります。

狭窄が軽度であれば水や流動食ではあまり症状が見られず、重度であれば体重減少、食欲不振、誤嚥性肺炎が見られることがあります。

右大動脈弓遺残症

右大動脈弓遺残症とは、本来出生時になくなるはずの胎児期の循環の一部が残ってしまう状態のことを言います。
残ってしまった胎児循環によって食道を圧迫してしまい、吐出が見られるようになります。

右大動脈弓遺残症の特徴的な症状としては、離乳時から始まる吐出が挙げれます。流動食は食べることは出来ますが、固形物を食べると吐き出してしまいます。
重度である場合は誤嚥性肺炎を併発することがあります。

犬の「食べてすぐ吐く（吐出）」症状の好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

先天性巨大食道症は、ジャーマンシェパード、グレートデーン、ラブラドールレトリバー、ニューファンドランドで多く見られます。

後天性特発性巨大食道症は、ミニチュアダックスフンドで多く見られます。

右大動脈弓遺残症は、ジャーマンシェパード、アイリッシュセッター、ボストンテリア、ラブラドールレトリバーで多く見られます。

犬の「食べてすぐ吐く（吐出）」症状の予防方法について

巨大食道症

巨大食道症は、先天性、後天性二次性、後天性特発性に分類されます。

先天性の巨大食道症は生後１０週齢までに診断され、同腹子に２頭以上見られることが多いとされています。先天性の巨大食道症は遺伝性疾患とされており、予防は難しいと言えます。

後天性二次性巨大食道症は、何らかの基礎疾患によって二次的に巨大食道症を起こした状態のことです。
基礎疾患としては、重度食道炎、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、重症筋無力症、多発性筋炎、腫瘍などが挙げられます。
このような基礎疾患を適切にコントロールすることが巨大食道症の予防につながると言えます。

後天性特発性巨大食道症は、生後６か月以降で、巨大食道症を引き起こす基礎疾患が認められない場合に診断されます。
原因は明らかにされていないため、予防することは難しいと言えます。

食道狭窄

食道狭窄は、重度の食道炎が見逃された場合や、食道炎の治療が不成功に終わった場合に発生すると言われています。
食道狭窄の原因となる食道炎の治療を適切におこなうことが、食道狭窄の予防につながると言えます。

右大動脈弓遺残症

右大動脈弓遺残症は先天性の心疾患であるため、予防することは難しいと言えます。

犬の「食べてすぐ吐く（吐出）」症状の治療方法について

巨大食道症

重力によって食べ物を胃の中に到達させるために、食事後１５～３０分程度、縦に抱きかかえてあげたり、前肢をつかんで立った状態にします。
海外では巨大食道症の犬の専用椅子が販売されているようです。

誤嚥性肺炎が併発している場合は、抗生物質の投与が必要になります。

基礎疾患がある場合は、その治療をおこないます。
基礎疾患の治療が適切におこなわれれば食道の運動性が回復することがあります。

食道狭窄

外科的に狭窄部位を拡張してあげます。
バルーンカテーテル拡張法が、内視鏡による観察下でおこなえるため安全であり推奨されています。

右大動脈遺残症

立位での給与や食後に縦に抱きかかえることで症状は抑えられますが、根本的な治療は外科手術になります。
遺残している部分を切除することで食道の圧迫を解放し、通過障害を改善します。