犬の「下痢」症状とは
下痢とは、水分の多い便を頻回に排泄する状態のことを言います。
下痢とは、何らかの原因によって腸における水分吸収が充分でない時、感染をおこした時、腸の動きが活発になり過ぎた時、などに見られます。
腸の問題が起こっている場所によって症状が違います。
小腸性の下痢は、軟便から水様便など様々ですが、便の量が増え、回数はそれほど増えない傾向があります。小腸に出血がある場合は黒色便が見られます。
大腸性の下痢は、軟便、粘液便、血便がよく見られ、便の回数が増える傾向があります。
犬は様々な原因によって下痢が見られます。
犬の「下痢」症状の考えられる病気(原因)とは
食べ物やストレスなどの病気以外の原因
病気以外の下痢の原因としましては、普段食べなれない食べ物を食べた、フードを急に変更した、食べ過ぎによる消化不良、特定の食べ物に対するアレルギー、生活環境の変化によるストレスなどが挙げられます。
これらのような場合は、原因を排除したり、原因となる物事に慣れてもらうなどで解決出来る場合が多いと言えます。
消化器疾患
下痢を引き起こす代表的な疾患を挙げていきます。
急性胃腸炎とは、嘔吐や下痢などが見られる一過性の胃腸炎のことを言います。急性胃腸炎の原因は多岐に渡り、食事性、薬物性、中毒性、細菌性、ウイルス性などが挙げられます。
炎症性腸疾患とは、慢性腸症のうち免疫抑制薬に治療反応を示すものを呼びます。主な症状としましては、小腸性下痢、大腸性下痢、嘔吐、体重減少、腹痛などが認められます。上部消化管(食道、胃、十二指腸)の病変が重度である場合は嘔吐や小腸性下痢がよく見られ、大腸の病変が重度である場合は大腸性下痢がよく見られます。
膵炎とは、何らかの原因によって膵臓が炎症を起こした状態のことを呼びます。食欲不振、活動性の低下、嘔吐、下痢、腹痛などがよく見られます。軽度な消化器症状のみで治癒することもある一方、全身的な炎症反応を引き起こし短期間のうちに死亡してしまうこともあります。
膵外分泌不全とは、膵腺房細胞の萎縮や破壊によって膵酵素の分泌能力が90%以上失われることで消化不良を生じる疾患です。便の量が増え、体重は減少します。典型例では小腸性下痢が見られ、脂肪便が見られることもあります。
感染症
下痢を引き起こす代表的な感染症を挙げていきます。
犬パルボウイルス感染症とは、犬パルボウイルスに感染した犬の糞便や吐物を経口あるいは経鼻的に摂取することで感染します。感染後4~14日間の潜伏期間を経て臨床徴候が出現します。死亡率が高い感染症です。
一般的な症状としましては、急性の下痢、嘔吐、元気消失、食欲不振、発熱などが見られます。症状が進行することで、脱水、敗血症などを引き起こします。
回虫症とは、犬で最も多く見られる消化管内寄生虫です。胎盤感染、母乳感染、直接感染などのルートで感染が広がります。
通常は無症状であることが多いですが、仔犬の場合は下痢、貧血、低栄養状態、腹部膨満などの症状が見られます。
鉤虫症とは、鉤虫が犬の小腸に寄生して症状が見られる疾患です。主な感染経路は経口感染、経皮感染
ですが、胎盤感染、経乳感染も見られます。
鉤虫の吸血や腸壁からの出血により下痢、腹痛、貧血、削痩が見られます。
鞭虫症とは、鞭虫が犬の腸管に寄生し、消化器症状が見られる疾患です。仔犬での発生はまれで、通常は成犬に症状がみられます。
粘液性、出血性の大腸性下痢が見られます。屋外飼育されている犬でよく見られます。
マンソン裂頭条虫症は、マンソン裂頭条虫に感染しているカエルを犬が捕食することによって感染することが多く、糞便中にきし麺のような虫を見つけることで飼い主が気付きます。
主な症状は、下痢、粘膜障害、栄養不良です。慢性的な下痢により肛門周囲にびらんが見られることがあります。
コクシジウム症は、コクシジウムと呼ばれる原虫に感染した犬の糞便を摂取することで感染します。飼育しはじめた仔犬で見られることが多いとされています。
症状を示さない不顕性感染例が多く存在しますが、下痢、粘液便、血便、嘔吐、脱水、体重減少などの症状が見られることがあります。
ジアルジア症は、ジアルジアと呼ばれる原虫が小腸に寄生することで発症します。糞便中に排泄されたシストを経口摂取することで感染が成立します。ペットショップ、繁殖施設、保護施設などの多頭飼育場で多く見られます。
成犬では多くの場合症状は見られませんが、仔犬においても症状を示さないことも多いとされています。軟便、下痢、粘液便などが見られます。
犬の「下痢」症状の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- イングリッシュコッカースパニエル
- イングリッシュセッター
- キャバリアキングチャールズスパニエル
- ジャーマンシェパード
- トイプードル
炎症性腸疾患は、ジャーマンシェパードが好発犬種として挙げられます。
膵炎は、トイプードルをはじめとしたトイ種、キャバリアキングチャールズスパニエルなどが好発犬種として挙げられます。
膵外分泌不全は、ジャーマンシェパード、イングリッシュセッター、イングリッシュコッカースパニエルが好発犬種として挙げられます。
犬の「下痢」症状の予防方法について
食事に気を付けましょう。
普段食べ慣れない食べ物は与えない、普段与えている食事量を守る、ドッグフードを変更する際は急に変えない、などで一過性の下痢は予防できる可能性があります。
また、人間が食べているものを盗み食いすることで下痢を起こすことがあるため注意しましょう。脂肪分の多い人間の食べ物は膵炎などの疾患を引き起こすこともありますので、飼い主さんが防いであげましょう。
感染症は、ワクチン接種である程度防げる疾患があります。また、フィラリア予防薬に含まれる駆虫薬の効果で駆虫できる寄生虫がありますので、定期的なフィラリア予防薬の投与をお勧めいたします。
疾患によっては予防は難しく、早期発見・早期治療が重要となります。
犬の「下痢」症状の治療方法について
下痢と止める治療薬を投与します。
下痢の原因となる疾患が無い一過性の下痢の場合は、止瀉剤を注射、内服で投与します。
下痢の原因となる疾患に合う治療薬を投与します。
原因疾患がある場合は、その疾患に合った治療をおこないます。
細菌性の腸炎の場合は止瀉剤に加えて抗菌剤、輸液などをおこないます。
膵炎の場合は輸液をおこない、鎮痛剤や制吐剤を投与します。また、脂肪分をおさえた栄養管理が良いとされています。
膵外分泌不全の場合は、消化酵素、抗菌剤を投与します。低脂肪の高消化性フードを給与が推奨されています。
感染症の場合は、その原因となるウイルスや寄生虫に合った治療薬を投与します。