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Youtube 病気辞典
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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の「便の異常」症状とは

便の色や硬さ、内容に変化が現れることがあります。

便の状態は動物の体の状態を反映する重要なバロメーターの一つです。
便の色や硬さ、量は食事内容によって変わりますが、体が健康な状態であれば、便はある程度の硬さがある固形便で、茶色~こげ茶色をしているのが一般的です。
毎日同じものを食べている場合には毎日同じような便が出るはずですので、変化が起こった場合にはわかりやすいかと思います。

体調が崩れている時に便に現れる変化としては、以下のようなものがあります。

・軟便
・下痢
・血便(鮮血便あるいは黒色便)
・便の色が白っぽい
・便の中に虫が混ざっている
・便のにおいがきつくなる

このような異常がみられるとき、便の状態以外に排便の回数が多い、お腹がキュルキュル鳴っている、しぶり、腹痛、食欲不振、嘔吐、元気がない、脱水、貧血、痩せるなどといった症状を伴っていることがあります。

食べすぎや食事の変更などによっておなかの調子を崩すこともありますが、長期にわたる便の異常は消化管以外の病気を反映していることも少なくなく、原因によっては命にかかわることもあります。
便の状態が悪い時には便を持参して病院を受診するようにしましょう。

猫の「便の異常」症状の考えられる病気(原因)とは

食事内容の変化によって便の状態は変化します。

便は食べたものを消化管で消化した結果作られます。
そのため、食事内容や消化管の状態に大きく影響され、便の色や臭いなどは特に食事によって大きく変化します。

ヒトの食べ物を誤食した場合や急に食事を変更した場合、その変化に消化管がすぐに対応できず、消化不良などを起こして軟便や下痢をすることがあります。

他には、食事の内容が体質に合わない場合(食物アレルギーや食物不耐症)に、長期にわたる軟便や下痢がみられます。

消化管内の異常によって起こります。

胃腸の調子が悪い時には、消化管粘膜が炎症などによって荒れた状態になり、うまく機能できないために便の状態が変化します。

便に異常を起こす消化管内の異常としては、以下のようなものがあります。
・胃腸炎
・感染症(パルボウイルス感染、猫伝染性腹膜炎、細菌感染など)
・寄生虫症(回虫、鉤虫、条虫、原虫など)
・消化管内異物
・胃の腫瘍
・腸の腫瘍   など

胃や腸の粘膜に炎症が起こると消化・吸収がうまくできなくなり、腸の蠕動運動が亢進することが多いため、水分が十分に吸収されないまま排泄され、軟便や下痢などがみられます。

また、胃腸粘膜から出血が起こると血便になります。
胃や小腸などの上部消化管で起こった出血では便が真っ黒に変化する黒色便となり、肛門に近い大腸での出血では便の表面に赤い血が付着する鮮血便がみられます。
重度の大腸炎ではゼリー状のイチゴジャムのような便が出る場合もあります。

消化管の出血は、重度の炎症や消化管潰瘍でも見られますが、一部の消化管内寄生虫や胃腸に腫瘤などが形成された際にもよくみられます。

感染症も便に異常を起こす原因の一つです。
子猫の時期に特に注意が必要な感染症では、猫パルボウイルスの感染によって起こる『猫汎血球減少症』が挙げられます。
激しい下痢や嘔吐を起こし、脱水症状から命を落とすことも多い感染症です。
他には猫コロナウイルスの突然変異によって起こる『猫伝染性腹膜炎』も重要な疾患です。

また子猫に多いものでは、寄生虫感染が挙げられます。
特に母猫や子猫自身が外で生活していたことがある場合に多く、回虫や条虫、鉤虫など肉眼で確認可能な寄生虫や、顕微鏡でなければ確認できない原虫(コクシジウムやジアルジア、トリコモナス)などが原因となることがあります。

猫が誤って異物を食べてしまった場合にも便の異常がみられます。
腸で完全閉塞してしまった場合は激しい嘔吐など急性の症状が現れますが、部分的に閉塞したり、胃腸の粘膜を傷つけるようなものでは、軟便や下痢、血便などを起こします。
ひも状の異物などでは、腸の蠕動運動によって腸管がアコーデオン状に束ねられ、中には腸が切れて内容物が腹腔内に漏れ、腹膜炎を起こしてしまうこともあるため注意が必要です。

胃や腸に腫瘍が形成された場合は、腫瘍の進行によって徐々に症状が重症化します。
猫の消化管に発生する腫瘍は様々なものがありますが、リンパ腫や腺癌、肥満細胞腫などが割と多くみられます。
初期には無症状~便の状態の変化(軟便や下痢)が見らますが、進行するにつれて体は痩せ、通過障害を起こすと液状の便が少量ずつしか出なくなり、完全閉塞した場合には便が出なくなり激しい嘔吐を起こしたりします。

胃腸以外の臓器の不調によって便に異常が現れる場合もあります。

便の状態は胃腸以外のさまざまな臓器の不調をも反映します。

消化液を産生、分泌する膵臓や肝臓の疾患(膵炎や肝炎、胆管肝炎など)でも軟便や下痢がみられます。
また胆道系疾患で胆汁がうまく分泌されない状態になった場合や、膵臓から出る消化酵素が不足して脂肪分が消化吸収されにくくなっている場合、便の色が淡くなったり白っぽくなります。

高齢の猫で多い腎臓病の症状としても便の異常が見られます。
腎臓病の末期で尿毒症を起こすと、消化管に潰瘍ができたり、腸の蠕動運動の不調や消化吸収能の低下によって、軟便や下痢、タール便などがみられます。

同じく高齢の猫で発症がみられる甲状腺機能亢進症の症状の一つとしても下痢がみられることがあります。

猫の「便の異常」症状の好発品種について

全猫種で好発します。

特に好発品種はありません。
様々な原因で便の状態は変化することがあります。

猫の「便の異常」症状の予防方法について

ワクチン接種と便検査を定期的に行いましょう。

猫汎血球減少症はワクチン接種で予防できます。
特に子猫の死亡率が高い感染症ですので、接種が可能な月齢になったらできるだけ早くワクチン接種をしましょう。

また、ワクチン接種時や健康診断時には便を持参し、便検査で寄生虫の感染がないかどうかを調べてもらいましょう。

室内飼育を心がけましょう。

感染症や寄生虫症は、屋外で生活していたことのある猫や外に出る習慣のある猫に起こる病気です。
感染猫との接触によって感染する病気には猫エイズや猫白血病ウイルス感染症なども含まれ、これらの感染症にかかっている猫では将来的に腫瘍性疾患の発症率も高くなってしまう傾向があります。

外には出さず室内飼育を徹底することでこれらの病気を予防できます。

猫の「便の異常」症状の治療方法について

それぞれの原因に対する治療を行います。

便に異常がみられる場合、その原因が何であるかによって治療方法は異なります。
まずは便検査、血液検査、レントゲン検査などを行い、原因を特定します。

急性の胃腸炎の場合には、整腸剤や消化管粘膜の保護剤、消化管運動の改善薬などで対症療法を行います。

食事が原因と考えられる場合には、食事療法を行います。

寄生虫が原因の場合は駆虫薬が必要です。

肝炎や膵炎、腎臓病などによって便の状態に変化が表れている場合には、それぞれの疾患に対して投薬、点滴療法などを長期にわたって行う必要があります。

ウイルス性疾患には対症療法を行います。

ウイルス性の感染症では主に対症療法として栄養補給、水分補給、インターフェロンの投与、二次感染予防のための抗生物質投与などを行います。

猫伝染性腹膜炎に関しては有効な治療方法はまだありません。
発症してしまうと短期間で命を落とすこともある疾患ですが、近年、新しい抗ウイルス薬の効果が検証され、期待されているところです。

腫瘍疾患には手術や抗がん剤治療を行います。

腫瘍疾患に対しては、腫瘍の種類によって外科手術や抗がん剤治療などを検討します。

猫に多いリンパ腫では抗がん剤治療が適応になりますが、腸閉塞や消化管穿孔の危険がある場合には手術によって病変部を切除することもあります。

その他の腫瘍の場合には、外科手術によってできるだけ早い段階で切除することが重要です。

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