犬の「失禁する」症状とは
尿失禁とは、膀胱内にためている尿を自分の意思とは関係なく、無意識のうちに漏れ出してしまう状態をさす排尿障害の1つです。
正常であれば膀胱は尿をため、膀胱に尿を残すことなく排尿することができます。健康であれば1日平均20~45ml/kgの排尿が認められます。
尿失禁は、蓄尿不全によるもの、尿の排出障害によるもの、に大別されます。
犬の「失禁する」症状の考えられる病気(原因)とは
蓄尿不全による尿失禁
蓄尿不全とは、尿を膀胱内に貯留できない状態のことを言います。
・解剖学的形態異常による尿失禁
既往歴の無い、若齢の犬に見られる持続性の尿失禁の場合、先天性の尿路形態異常を疑います。
もっとも多く認められるのは異所性尿管ですが、尿管が本来の膀胱内ではなく、膀胱頚部や膀胱外に開口している状態を言います。
両側性異所性尿管では、持続的な尿失禁となり、常に陰部が濡れた状態になります。片側性異所性尿管では、正常な尿管からの尿は膀胱に貯留するため随意排尿も見られます。
・炎症性尿失禁
膀胱や尿道の炎症により、膀胱膨満感が起こり、排尿の調節が不可能となるために尿失禁が起こります。
尿失禁に血尿、頻尿などの症状を伴えば、膀胱や尿道の炎症による炎症性尿失禁であると言えます。犬では細菌性膀胱炎が原因となることが多いです。
・尿道括約筋機能性尿失禁
尿道括約筋が収縮機能不全に陥り、尿道の流出抵抗が低下することによって排尿をコントロールできなくなった状態のことを言います。腹圧の上昇に伴って尿失禁が見られます。
不妊手術の数か月~数年後に、性別にかかわらず発症します。安静時や睡眠時の横たわっている時に尿失禁が見られるのが特徴で、尿失禁の量は少量から多量まで様々です。
・老齢性失禁
高齢犬で、老化の進行とともに膀胱容量の減少や運動性の低下起こり、尿失禁が見られることがあります。
尿の排出障害による溢流性(イツリュウセイ)尿失禁
溢流性尿失禁は、膀胱が過度に膨張した結果、尿がぽたぽたと溢れ出る状態です。
・下部尿路の流出路閉塞
尿路疾患、前立腺疾患が原因で尿路に閉塞が起こり発症します。
膀胱の過度の拡張が持続するおとによって二次的に膀胱アトニーや水腎症が引き起こされます。
・膀胱・尿道括約筋の収縮障害
排尿に関連する神経障害や膀胱アトニーの結果発症します。
犬の「失禁する」症状の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- シベリアンハスキー
- トイプードル
- ラブラドールレトリバー
異所性尿管は、メスで多くシベリアンハスキー、トイプードル、ラブラドールレトリバーが好発犬種とされています。
犬の「失禁する」症状の予防方法について
予防できるものもあります。
尿失禁が膀胱炎や結石である場合は、予防出来る可能性があります。
結晶ができにくい療法食やサプリメントを与える、おやつを与え過ぎない、など食餌面で気を付けましょう。
また、結石の予防、膀胱炎の予防には飲水量の管理も重要と言われています。飲水量を増やすことで結石のもととなる物質の濃度を薄める、膀胱を洗浄する尿の産生を増やす、などが有効とされています。ウェットフードを与える、ドライフードをふやかして与えるなどして、飲水量の確保をしましょう。
犬の「失禁する」症状の治療方法について
蓄尿不全による尿失禁
・解剖学的形態異常による尿失禁
外科的処置が第1選択となります。
完治するかどうかは、形態異常の性質と重症度に依存します。薬剤の追加が必要になる場合もあります。
・炎症性尿失禁
細菌性膀胱炎が原因となることが多いので、その治療をおこないます。
抗菌剤の投与、飲水量を増やす、排尿を我慢させない、などをおこないます。
・尿道括約筋機能性尿失禁
性ホルモン製剤の投与をおこないます。
メスでは比較的治療によく反応しますが、オスは反応が乏しい傾向にあります。
尿の排出障害による溢流性尿失禁
膀胱穿刺や尿道カテーテルによる排尿処置を実施し、膀胱の緊張緩和をおこないます。
結石などの明らかな物理的な原因がある場合は、原因除去のための処置や手術が適応となります。