猫の「耳を頻繁に掻く」症状とは
耳の後ろや耳の中を後ろ足でしきりに掻きます。
猫がふとした時に後ろ足で耳のあたりをカカカッと掻く様子を目にすることはたまにあると思います。
毛の生え代わりの時期や、耳に何か入った時、耳のあたりが何となく痒い時に一時的に掻くことはよくあることですので、頻度が多くなければ特に心配はいりません。
しかし、何度もしきりに耳を掻いている時は、耳の中や耳のあたりの皮膚などにトラブルが起こっていることが考えられます。
耳の中の様子や皮膚に以下のような変化がみられないか、チェックしてみましょう。
・耳の中が汚れている
・耳の中が赤く腫れている
・耳から臭いにおいがする
・耳の中にでこぼこしたしこりのようなものができている
・耳を強く掻いて出血している
・耳の後ろの毛が薄くなっている
・耳の皮膚に瘡蓋や湿疹ができている
・耳の皮膚が水ぶくれのように膨らんでいる
何度も掻くことで毛が抜け薄くなり、爪で皮膚自体が傷ついて出血したり、耳血腫になってしまうなど、二次的な傷害が現れることもあります。
頻繁に耳を掻く様子が見られる時には、一度病院で耳や皮膚のチェックをしてもらいましょう。
猫の「耳を頻繁に掻く」症状の考えられる病気(原因)とは
耳の中に痒みを起こす原因があります。
耳ダニ(耳ヒゼンダニ)の感染によって耳の中に耳垢が詰まったり炎症で痒みが起きている時や、その他の原因(細菌や真菌の増殖など)によって起こる外耳炎によって耳に痒みがあると、頻繁に耳を掻くようになります。
このような場合は耳の中に耳垢が多く付着するようになり、耳の臭いも気になるようになります。
また耳の中に異物が入っている場合や、腫瘤が形成されて耳が汚れがちになっている場合もあります。
耳垢や耳の中の検査を行うことで痒みの原因を特定し、それぞれに対応した治療が必要です。
皮膚炎の一症状として耳に痒みが現れている場合があります。
耳の中の汚れなどが原因ではなく、皮膚炎の症状の一つとして耳の皮膚に痒みが現れることがあります。
特にアレルギー性の皮膚炎(食物アレルギーやアトピー性皮膚炎など)では、耳や目・口の周りなど、顔にも症状が現れることが多いのが特徴です。
他には疥癬(ネコショウセンコウヒゼンダニ)やノミの寄生によって皮膚に痒みが起こることがあります。
この場合は全身どこもかしこも痒いということが多いのですが、特に疥癬の場合は耳や顔から症状が出始めることが多く、進行するにつれて毛が抜け、皮膚が分厚く肥厚し、瘡蓋ができるようになるのが特徴です。
また、疥癬はヒトにも皮膚症状を起こすことがあります。
耳血腫が起こっている場合があります。
耳の皮膚と軟骨の接着が剥がれ、内出血して耳の皮膚の下に血が貯まる「耳血腫」を起こしているために、耳に違和感や痛みがありしきりに耳を掻いていることもあります。
耳血腫は免疫の異常や外耳炎などによる耳の痒みから激しく耳を掻いたり頭を振ることで起こるとされています。
猫の「耳を頻繁に掻く」症状の好発品種について
全猫種で好発します。
品種による好発傾向は特にありません。
どんな猫にでも起こりうる症状です。
猫の「耳を頻繁に掻く」症状の予防方法について
寄生虫感染症は室内飼育で予防できます。
耳の中に寄生する耳ダニや、皮膚に寄生する疥癬、ノミなどへの感染は、主に屋外で感染している動物と接触することによって起こります。
そのため、室内での飼育を徹底することで新たな感染を予防することができます。
新しく猫を迎える際には、これらの寄生虫に感染している可能性がないか、他の感染症(消化管内寄生虫やウイルス感染症)への感染チェックを含めた健康診断を受け、一定の健康観察期間を経てから先住猫と生活環境を一緒にすることで、感染リスクを減らすことができます。
猫の「耳を頻繁に掻く」症状の治療方法について
寄生虫症には駆虫薬の投与を行います。
耳ダニや疥癬、ノミなどの寄生虫がいる場合には、駆虫薬の投与が必要です。
耳ダニや疥癬に対しては注射薬もありますが、近年はノミやダニ、消化管内の寄生虫を一度に予防・駆除できるスポットタイプ(背中の皮膚に垂らすお薬)のお薬が主流になってきています。
これらのお薬は幼虫や成虫には効果がありますが、卵には効かないため、2~3回繰り返し投与することが必要です。
それとともに、耳ダニの場合は耳の掃除、炎症を抑える治療を合わせて行い、疥癬症やノミの場合は、薬浴や薬用シャンプーでの洗浄を併用して体についた虫体や卵、死骸や糞などを落とします。
また、生活環境中に落下した虫体や卵から再感染することもあるため、生活環境の徹底した掃除・清浄化も必要です。
外耳炎を治療します。
細菌やマラセチアなどの増殖によって起こった外耳炎は、必要に応じて耳の洗浄を行い、点耳薬や内服薬で治療を行います。
アレルギー性の疾患によって耳に痒みが起こっている場合には、アレルゲンの除去が必要です。
食物が原因の場合は食事療法を行い、ハウスダストなどが原因の場合は掃除の徹底などを行いますが、アレルゲンを完全に除去することが難しい場合にはステロイド剤や免疫抑制剤などで症状を緩和する治療を行います。
耳血腫の治療は外科処置あるいは注射薬で治療を行います。
耳血腫は時間が経過すると自然に吸収されて退縮しますが、耳が変形して耳道の入り口が狭くなってしまうこともあり、また吸収されるまでの期間は耳の違和感がずっと持続してしまうため、耳血腫の原因となった耳の炎症も含めて治療を行います。
耳血腫の治療としては、外科的に切開などを加えて中に貯留した血液を取り除き、軟骨からはがれた皮膚を糸で縫合して圧着する方法と、耳血腫の中に免疫を調整するインターフェロンというお薬を注射で注入する方法などがあります。
治療のメリット、デメリットとして麻酔の必要性の有無、処置後のケアや治療後の耳の変形の可能性に若干差があります。
どのような治療を行うかはそれらを加味したうえで獣医師とよく相談して選択しましょう。