犬の「急に太る」症状とは
病気によって太ってしまう場合があります。
避妊手術や去勢手術を受けていると、ホルモンバランスの変化や消費カロリーの減少から、食べる量があまり変わっていないのに太ってしまうことがあります。
このような場合は、不妊手術後用のドッグフードを与えるなどの食事管理で対応出来ます。
実際には食欲が低下して食べられず痩せているのに、お腹が膨れているために太ったように見える場合もあります。
腹水の貯留、腹腔内の腫瘍や内臓の腫大、未避妊の雌に見られる子宮蓄膿症などによってお腹が膨れることがあります。
内分泌疾患による多食などが原因で太ってしまうこともあります。
犬の「急に太る」症状の考えられる病気(原因)とは
副腎皮質機能亢進症
副腎皮質機能亢進症は、慢性的に過剰なコルチゾール分泌によって生じる臨床的・生化学的変化のことを言います。
副腎皮質機能亢進症の自然発生性の原因は、下垂体ACTH産生腫瘍を原因とする下垂体依存性、副腎腫瘍を原因とする副腎依存性、過剰または長期的なグルココルチコイド投与を原因とする医原性があります。犬では下垂体依存性の発生頻度が厄85%を占めるとされています。
臨床症状としては、多食、多飲多尿、腹部膨満、皮膚のトラブル(脱毛、石灰沈着、菲薄化など)が見られます。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの欠乏による疾患です。甲状腺組織の破壊による原発性甲状腺機能低下症が多く、自己抗体が検出されるリンパ球性甲状腺炎、原因不明の特発性甲状腺萎縮も知られています。
甲状腺ホルモンは全身の代謝を活性化する作用をもつため、欠乏することで代謝の低下が生じ様々な臨床症状が見られるようになります。
肥満、徐脈、活動性の低下などが見られ、発生頻度は高くありませんがふらつきや顔面神経麻痺などの神経症状が見られることもあります。また、左右対称性の脱毛、ラットテイルよ呼ばれる尾の脱毛、色素沈着、角化異常などの皮膚症状も多く見られます。
犬の「急に太る」症状の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- ゴールデンレトリバー
- トイプードル
- ドーベルマン
- ビーグル
- ボクサー
- ボストンテリア
- ミニチュアシュナウザー
- ミニチュアダックスフント
- ラブラドールレトリバー
副腎皮質機能亢進症は、トイプードル、ミニチュアダックスフンド、ミニチュアシュナウザー、ボストンテリア、ボクサー、ビーグルなどの犬種が好発犬種として挙げられます。
甲状腺機能低下症は、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ドーベルマンなどの犬種が好発犬種として挙げられます。
犬の「急に太る」症状の予防方法について
肥満は予防出来ますが、疾患は早期発見・早期治療になります。
食事によって太ってしまった場合は、食事管理をおこないましょう。
疾患に関しては、遺伝的な素因、原因不明であることが多いため、早期発見・早期治療が重要となります。
犬の「急に太る」症状の治療方法について
副腎皮質機能亢進症
副腎皮質機能亢進症の治療方針は、下垂体依存性か副腎依存性によって異なります。
下垂体依存性の治療法には、高コルチゾール血症の緩和を目的とした内科療法、疾患の原因である下垂体腫瘍の切除を目的とした外科療法、下垂体腫瘍の縮小を目的とした放射線療法があります。
下垂体腫瘍の直径が10mmを超える場合は外科療法や放射線療法を第一に検討されますが、犬の下垂体腫瘍の多くは直径10mm未満であるため、内科療法が選択されることが多いです。
副腎依存性の治療法の第一選択は、外科的な副腎摘出となります。しかし、副腎付近の大血管への浸潤や遠隔転移などによって外科的な治療が困難な場合は、QOL改善を目的とした内科療法が選択されます。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの補充とおこないます。人間用の薬剤、動物用の薬剤があり、どちらでも良好に管理することができます。
臨床症状によって改善までの期間が異なります。疲れやすくなるなどの活動性の低下は1週間以内に改善されることが多いとされています。皮膚症状や神経症状の改善には数か月かかることもあります。
低下した甲状腺の機能が回復することはないため、生涯にわたる甲状腺ホルモンの補充が必要になります。