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監修: 葛野 宗 獣医師
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

犬の「血便」症状とは

消化管に出血がある時に見られます。

血便とは、便に血液が混じった状態のことを言います。

胃や十二指腸などの上部消化管で出血がある場合は、黒色のタール便が見られます。肛門付近の大腸で出血がある場合は赤い血便が見られます。

血便を繰り返す、食欲不振、活動性の低下、などが見られる場合は動物病院で診てもらう必要があります。

犬の「血便」症状の考えられる病気(原因)とは

急性腸炎

急性腸炎は、食事性(アレルギー、急な食事の変更、食中毒)、細菌性(カンピロバクター、クロストリジウム、大腸菌、サルモネラなど)、寄生虫性(鉤虫、鞭虫、ジアルジアなど)、ウイルス性(パルボウイルス、コロナウイルスなど)、代謝性(副腎皮質機能低下症)などの様々な要因によって引き起こされます。

急性腸炎の主な症状としては、食欲不振、活動性の低下、腹痛、血便、粘液便、粘血便などが見られます。急性的な下痢が特徴ですが、時に嘔吐を伴うこともあります。

炎症性腸疾患

炎症性腸疾患の主な症状としては、小腸性下痢、大腸性下痢、嘔吐、体重減少、腹痛などが認められます。上部消化管(食道、胃、十二指腸)の病変が重度である場合は嘔吐や小腸性下痢がよく見られ、大腸の病変が重度である場合は大腸性下痢がよく見られます。
小腸性下痢は、軟便から水様便など様々ですが、便の量が増え、回数はそれほど増えない傾向があります。小腸に出血がある場合は黒色便が見られます。大腸性下痢は、軟便、粘液便、血便がよく見られ、便の回数が増える傾向があります。

炎症性腸疾患は、炎症が起こっている細胞の種類や部位によって、リンパ球プラズマ細胞性腸炎、好酸球性胃腸炎、肉芽腫性腸炎、組織球性潰瘍性腸炎などに分類されます。

鉤虫症、鞭虫症

鉤虫症とは、鉤虫が犬の小腸に寄生して症状が見られる疾患です。主な感染経路は経口感染、経皮感染
ですが、胎盤感染、経乳感染も見られます。
鉤虫の吸血や腸壁からの出血により血便、下痢、腹痛、貧血、削痩が見られます。

鞭虫症とは、鞭虫が犬の腸管に寄生し、消化器症状が見られる疾患です。仔犬での発生はまれで、通常は成犬に症状がみられます。
粘液性、出血性の大腸性下痢が見られます。屋外飼育されている犬でよく見られます。

犬の「血便」症状の好発品種について

以下の犬種で好発がみられます。

リンパ球プラズマ細胞性腸炎では、ジャーマンシェパード、シャーペイなどの犬種で発生率が高いとされ、免疫増殖性腸炎ではバセンジー、組織球性潰瘍性結腸炎ではボクサー、フレンチ・ブルドックが好発犬種です。

鉤虫症、鞭虫症は寄生虫が原因となるため、好発犬種はありません。

犬の「血便」症状の予防方法について

定期的なフィラリア予防薬の投与、ワクチン接種などで予防できる疾患があります。

普段食べ慣れない食べ物は与えない、普段与えている食事量を守る、ドッグフードを変更する際は急に変えない、などで一過性の下痢は予防できる可能性があります。また、人間が食べているものを盗み食いすることで下痢を起こすことがあるため注意しましょう。

ウイルス性の感染症による胃腸炎の場合、ワクチン接種で防げる疾患があります。

鉤虫症、鞭虫症は、フィラリア予防薬に含まれる駆虫薬の効果で駆虫できる場合がありますので、定期的なフィラリア予防薬の投与をお勧めいたします。

犬の「血便」症状の治療方法について

急性腸炎

急性腸炎の治療は、止瀉剤、制吐剤、輸液などの対症療法や支持療法を中心におこないます。

食事を与えることにより嘔吐や下痢が悪化して体液が喪失する場合を除いて、少量の食事を開始します。
低脂肪や高繊維の療法食または家庭で調理した非刺激性の食事(茹でた鶏肉やジャガイモ、カッテージチーズなど)を少量、頻回で与えます。3~5日程度少量頻回の食事を与えた後に、5~10日間かけて通常の食事に戻します。

細菌感染や原虫感染が確認された場合は抗菌剤を投与します。特に腸粘膜バリアの破壊による菌血症や敗血症が疑われる時は必要になります。

炎症性腸疾患

食事反応性腸症、抗菌薬反応性腸症が除外され、腸粘膜に炎症が認められた場合、免疫抑制剤の投与をおこないます。免疫抑制剤の第1選択はステロイド剤となりますが、ステロイド剤の効果が不充分である場合やステロイド剤の量を減量したい場合は、他の免疫抑制剤を併用することがあります。

腸粘膜にリンパ管拡張所見が認められる場合は低脂肪の療法食を投薬治療と並行して用いることもあります。低脂肪療法食で効果が不充分である場合は、ササミ、ジャガイモ、白米などを用いた超低脂肪の手作りごはんの使用を検討します。

下痢の改善のため、免疫抑制剤に併用して抗菌薬を投与することがあります。大腸性下痢が主体となる場合、可溶性食物繊維の投与を検討します。

鉤虫症、鞭虫症

鉤虫、鞭虫に効果のある駆虫薬を投与します。

その他に貧血が強く見られる場合は、鉄剤の投与を検討します。

大量および長期間の寄生例では、盲腸や結腸に肉芽腫性炎症が認められることがあり、そういった場合は炎症性腸疾患の治療が必要になります。

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