犬の「真っ黒な便が出る」症状とは
どこかで出血している可能性があります。
食道、胃、小腸などで出血している際、血液が消化作用を受けて便として排泄されると真っ黒な便が見られます。これをメレナと呼びます。
肉などの血液成分が多く含まれる食べ物を食べた場合、吸着炭や鉄材などを服用している場合は、真っ黒な便が出ていても問題ありません。
真っ黒な便に伴って下痢、嘔吐、食欲不振などの症状が見られている場合は注意が必要です。
犬の「真っ黒な便が出る」症状の考えられる病気(原因)とは
急性腸炎
急性腸炎は、食事性(アレルギー、急な食事の変更、食中毒)、細菌性(カンピロバクター、クロストリジウム、大腸菌、サルモネラなど)、寄生虫性(鉤虫、鞭虫、ジアルジアなど)、ウイルス性(パルボウイルス、コロナウイルスなど)、代謝性(副腎皮質機能低下症)などの様々な要因によって引き起こされます。
急性腸炎の主な症状としては、食欲不振、活動性の低下、腹痛、血便、粘液便、粘血便などが見られます。急性的な下痢が特徴ですが、時に嘔吐を伴うこともあります。
小腸性の下痢は、軟便から水様便など様々ですが、便の量が増え、回数はそれほど増えない傾向があります。小腸に出血がある場合は黒色便が見られます。
膵炎
膵炎とは、何らかの原因によって膵臓が炎症を起こした状態のことを呼びます。
食欲不振、活動性の低下、嘔吐、下痢、腹痛などがよく見られます。軽度な消化器症状のみで治癒することもある一方、全身的な炎症反応を引き起こし短期間のうちに死亡してしまうこともあります。
上部消化管(食道、胃、十二指腸)の病変が重度である場合は嘔吐や小腸性下痢がよく見られ、大腸の病変が重度である場合は大腸性下痢がよく見られます。小腸に出血がある場合は真っ黒な便が見られます。
炎症性腸疾患
対症療法に効果を示さない、または再発を繰り返す慢性の消化器症状を示す病態を慢性腸症と呼びます。慢性腸症は、食事に治療反応を示す食事反応性腸症、抗菌薬に治療反応を示す抗菌薬反応性腸症、免疫抑制薬に反応を示す炎症性腸疾患に分類されます。
主な症状としましては、小腸性下痢、大腸性下痢、嘔吐、体重減少、腹痛などが認められます。上部消化管(食道、胃、十二指腸)の病変が重度である場合は嘔吐や小腸性下痢がよく見られ、大腸の病変が重度である場合は大腸性下痢がよく見られます。
小腸性下痢は、軟便から水様便など様々ですが、便の量が増え、回数はそれほど増えない傾向があります。小腸に出血がある場合は真っ黒な便が見られます。大腸性下痢は、軟便、粘液便、血便がよく見られ、便の回数が増える傾向があります。
炎症性腸疾患は、炎症が起こっている細胞の種類や部位によって、リンパ球プラズマ細胞性腸炎、好酸球性胃腸炎、肉芽腫性腸炎、組織球性潰瘍性腸炎などに分類されます。
犬の「真っ黒な便が出る」症状の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- キャバリアキングチャールズスパニエル
- シャーペイ
- トイプードル
- バセンジー
- フレンチブルドッグ
- ボクサー
膵炎は、トイプードルをはじめとしたトイ種、キャバリアキングチャールズスパニエルなどが好発犬種として挙げられます。
炎症性腸疾患は、ジャーマンシェパード、シャーペイ、バセンジー、ボクサー、フレンチ・ブルドックなどが好発犬種として挙げられます。
犬の「真っ黒な便が出る」症状の予防方法について
食事に気を付けましょう。
人間が食べているものを盗み食いすることで小腸性の下痢を起こし、真っ黒な便が出ることがあるため注意しましょう。
脂肪分の多い人間の食べ物は膵炎などの疾患を引き起こすこともありますので、飼い主さんが防いであげましょう。
胃腸管型リンパ腫は予防は難しいため、早期発見・早期治療が重要になります。
犬の「真っ黒な便が出る」症状の治療方法について
急性腸炎
真っ黒な便が下痢を伴っている場合は、止瀉剤を注射、内服で投与します。
原因疾患がある場合は、その疾患に合った治療をおこないます。
細菌性の腸炎の場合は止瀉剤に加えて抗菌剤、輸液などをおこないます。
感染症の場合は、その原因となるウイルスや寄生虫に合った治療薬を投与します。
膵炎
経口的に水分摂取が難しい場合は、持続的な輸液療法が必要になります。輸液療法を脱水を改善し、循環を保つために重要な治療法となります。
1~2日程度のごく短期間の絶食であれば効果がある可能性はありますが、それ以上の絶食は膵炎の予後を悪化させる可能性があるためすすめられません。自力採食が難しい場合は、経鼻食道カテーテルや食道栄養カテーテルを使用する場合があります。
その他に、必要に応じて制吐薬、鎮痛薬、抗炎症薬を投与します。
炎症性腸疾患
免疫抑制剤の投与をおこないます。免疫抑制剤の第1選択はステロイド剤となりますが、ステロイド剤の効果が不充分である場合やステロイド剤の量を減量したい場合は、他の免疫抑制剤を併用することがあります。
また、下痢の改善のため、免疫抑制剤に併用して抗菌薬を投与することがあります。