猫の乳腺腫瘍とは
ほとんどが悪性の腫瘍です。
乳腺腫瘍は雌猫の乳腺組織にできるしこりです。
悪性腫瘍と良性腫瘍がありますが、猫の場合は約85%が悪性といわれており、高率に転移や再発が起こるため、早期発見・早期切除が重要な病気です。
若いうちに避妊手術をしてあげることで、腫瘍の発生を大幅に減らすことができます。
スキンシップを兼ねてネコちゃんの体をよく触り、しこりがある場合はできるだけ早く病院で診てもらいましょう。
猫の乳腺腫瘍の症状とは
初めは小さなしこりです。
初期には全く症状を示しません。
乳腺に小さなしこりができるだけです。
猫の乳腺は胸から内股にかけて、左右に4対、計8つあります。
乳腺腫瘍は、そのどこかに小さなコリコリとしたしこりとして発生します。
乳腺をくまなく丁寧に触ると初期でも見つけることができますが、多くの場合は毛でおおわれているために気づかれずに過ごしてしまいます。
良性の腫瘍は比較的小さく、ゆっくり成長します。
転移することはありません。
悪性腫瘍は成長が速く、転移もしやすい傾向があります。
悪性の腫瘍の場合は成長が早く、皮膚や筋肉に張り付いて大きくなることもあります。
急に大きくなったり、ネコちゃん自身が気にして舐めたりすると、表面が破れて出血し、化膿したり、血や分泌液がこびりついて悪臭がするようになります。
感染が起こると患部の周囲が腫れて元気・食欲がなくなり、患部を痛がるようになります。
悪性腫瘍の場合には、高い確率で肺転移やリンパ節への転移が起こります。
肺転移が起こっても、やはり初期にはほとんど症状を示しません。
レントゲンを撮れば転移病巣が確認できます。
肺転移病巣が大きくなると、正常に機能する肺が減ることや胸水が溜まることで、呼吸が速い・苦しそう、といった症状が現れます。
猫の乳腺腫瘍の原因とは
卵巣のホルモンが影響します。
卵巣から出るホルモンの影響が関連していると考えられています。
未避妊のメスでは、避妊済みのメスの7倍も乳腺腫瘍の発生率が高くなります。
猫の乳腺腫瘍の好発品種について
以下の猫種で好発がみられます。
- シャム
どんな猫でも起こりますが、シャムネコ、ドメスティックショートヘアでは発生が多いと言われています。
シャムネコでの発生は、他の品種の2倍ほどになります。
猫の乳腺腫瘍の予防方法について
避妊手術で発生を抑えられます。
乳腺腫瘍は卵巣ホルモンの影響によっておこるため、避妊手術をすることが予防になります。
6カ月以下で避妊手術をすると91%、1歳以下で避妊手術をすると86%も発生リスクを下げることができます。
将来的に出産させる予定がないのであれば、若いうちに避妊手術をすることをお勧めします。
猫の乳腺腫瘍の治療方法について
外科手術が第一選択となります。
治療は早期発見、早期切除が重要です。
転移が起こる前に手術で切除できるかどうかが、その後の生活を大きく左右します。
猫の乳腺腫瘍は悪性率が高いため、片側の乳腺を一列切除するか、場合によっては両側の乳腺をすべて切除することが推奨されています。
脇の下や内股にはリンパ節がありますが、腫瘍が転移していることがあるので、リンパ節も一緒に切除します。
切除する範囲が大きくなればなるほど、手術時間は長くなり、術後の回復にも影響します。
できるだけ早く見つけてあげることでネコちゃんへの負担を減らすことができます。
乳腺腫瘍は卵巣ホルモンの影響が関連するため、避妊手術を受けていない場合は避妊手術も同時に行います。
肺転移が起こってしまっている場合には手術は通常行いません。
すでに肺転移が起こってしまっている場合、残念ながら手術は不適応になります。
乳腺の腫瘍を切除しても、肺の転移病巣は切除しきれない上に、麻酔や手術の侵襲が体に大きな負担をかけると、免疫が低下することで腫瘍の進行を早めてしまうためです。
例外として、大きな腫瘍が破裂して出血や感染がひどい場合、そのコントロールを目的として最小限の手術を行うことはあります。
抗がん剤治療を行うことがあります。
術後の再発防止や転移病巣の治療として、抗がん剤治療を行うことがあります。
抗がん剤は入院して点滴で行うものがメインになり、複数回に分けて行います。
吐き気や下痢などの副作用がみられることも多いので、治療開始前に抗がん剤治療後の副作用の対応についてしっかり説明してもらい、理解しておきましょう。
放射線療法という選択肢もあります。
手術後の再発や、転移がある場合の症状緩和のために、放射線療法を行う場合もあります。
腫瘍が小さくなり、痛みや出血などの症状が改善することが期待できます。
放射線療法はできる施設が限定されており、毎回麻酔をかける必要があること、治療費が高額になることなどから、あまり選択されることはありませんが、希望する場合はかかりつけの先生に相談してみましょう。
対症療法で傷と全身のケアをしてあげましょう。
手術ができない場合は対症療法を行います。
腫瘍から出血や分泌物がある場合は、患部を定期的に消毒し、ガーゼと包帯で保護して、不衛生にならないようにケアします。
ネコちゃんは傷があると気にして舐めようとするので、直接舐めないようにエリザベスカラーをしたり、包帯で保護することが必要です。
感染や痛みがある場合には、抗生物質や消炎剤(痛み止め)などを使用します。
腫瘍の進行とともに徐々に食欲が落ち、体は衰弱していきます。
食事を嗜好性の高い缶詰などに切り替えて、少しでも食べさせ、脱水がみられる場合には皮下点滴をしてもらうと体の辛さが少し軽減します。
転移によって呼吸が苦しい場合には、レンタルできる在宅酸素などを活用して、酸素室に入れてあげることも検討してみてください。