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Youtube 病気辞典
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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の動脈血栓塞栓症とは

血栓が末梢の血管に詰まってしまう病気です。

血栓とは、心臓や血管の中にできる血の塊です。
怪我をして出血すると、血液の中の血小板や血液の凝固に必要な様々な因子が集まり、傷の表面で血が塊を作ることで止血が起こります。
しかし、何らかの原因で血管や心臓の中で血栓が形成され、それが血流に乗って流れてしまうと、血管の分岐部や細い血管で詰まってしまいます。

猫では主に心臓病に関連して、左心房内に血栓ができます。
その血栓が左心房を離れると、大動脈に流れ込み、多くの場合は足の付け根部分にある動脈の分岐部分で詰まってしまいます。
これを動脈血栓塞栓症といいます。

血栓が塞栓した部分から先は血流が途絶えてしまうため、時間の経過とともに細胞の傷害、組織の壊死が起こり、早期に治療介入できなければ命を落としてしまいます。
また、治療を行ったとしても残念ながら救命できない場合も多い、非常に怖い病気です。

猫の動脈血栓塞栓症の症状とは

突然激しい痛みと麻痺がおこります。

動脈血栓塞栓症では、血栓が詰まった部分から先の血流が途絶えるために、末梢神経障害が起こり、激しい痛みを生じます。
特徴的に見られる症状は以下の通りです。

・激しい疼痛
・麻痺
・患肢の冷感
・体温低下
・患肢の肉球が蒼白になる
・患肢の脈が触知できない
・頻脈
・心雑音
・頻呼吸
・呼吸困難
・開口呼吸
・ショック状態

血栓が塞栓する部分は、足の付け根の動脈分岐部分が最も多く、片側の足だけに症状が出ることもあれば、両側に発症することもあります。

また、前肢に分岐する動脈や腎臓、腸、脳に分岐する動脈で塞栓してしまうこともあり、その場合には前足の麻痺や高窒素血症、腹痛、下痢、嘔吐、中枢神経症状などが見られます。
心臓に血液を供給する心臓の冠動脈で塞栓した場合は突然死してしまいます。

血流が途絶えた虚血状態が続くと、やがて細胞や組織の壊死が始まり、そこからの回復は難しくなります。
治療によって血流が再開しても、中には壊死した細胞から漏れ出た成分が体の循環に悪影響を及ぼし(再灌流障害)、それによって命を落とす場合もあります。

できるだけ早期に治療を行い、組織が壊死する前に血流を再開できるかどうかが救命につながります。

猫の動脈血栓塞栓症の原因とは

心臓疾患に伴って起こります。

猫では肥大型心筋症や拘束型心筋症、僧帽弁閉鎖不全症など、心臓の疾患が起こることがあります。
猫の場合、血栓は心臓疾患によって大きく拡大した左心房という部分で形成されます。

健康な心臓では血液の流れは一方通行で、全身循環→右心房→右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房→左心室→大動脈、という順路で流れます。
しかし、心疾患によって左心房から左心室へ流れる血流の一部が逆流するようになると、左心房が徐々に大きく拡張し、中で血液がうっ滞するようになります。

このうっ滞によって血栓ができやすくなります。
形成された血栓は左心房の壁に付着していますが、脱落すると左心室、大動脈へ流れ込み、血栓塞栓症を発症します。

その他の原因でもおこることがあります。

心疾患以外にも、甲状腺機能亢進症や腫瘍に伴って血栓が形成されることがあります。

猫の動脈血栓塞栓症の好発品種について

以下の猫種で好発がみられます。

心疾患に続発することが多いため、心疾患の好発品種ではリスクが高くなります。
しかし、雑種猫など、これら以外の猫種でも発症します。

猫の動脈血栓塞栓症の予防方法について

心疾患の場合は定期的に検診を受け、リスクを回避しましょう。

心疾患があることがわかっている場合には、定期的に検診をうけ、治療内容の変更が必要ないかどうかをチェックしてもらいましょう。

特に心臓の超音波検査は重要です。
左心房が大きく拡大し、中で血液が滞留するような状態がみられる場合には、血栓症の発症リスクが高くなりますので、予防的な抗血小板薬などの内服を勧められることが多くなります。

心臓疾患では様々なお薬を飲む必要があり、投薬が大変という声もよく聞きますが、投薬補助のペーストやおやつなどを上手く使って、可能な限り継続して飲ませるようにしましょう。

猫の動脈血栓塞栓症の治療方法について

血栓溶解療法を行います。

動脈血栓塞栓症には、いくつかの治療選択がありますが、背景に心疾患があることや、全身状態が非常に悪いなどといった制約があるために、内科治療が多く選択されます。

その中の一つである血栓溶解療法は、静脈点滴で血栓を溶かす作用のある特殊なお薬を投与し、血流の再開をはかる治療方法です。
治療はできるだけ早く開始することが最も重要で、猫では発症から3~6時間以内(できれば3時間以内)に血栓溶解剤を投与することが望ましいとされています。

治療によって血栓が溶け、血流が再開しても、まだ安心はできません。
血流が途絶えていた部分で生成された活性酸素や、細胞から漏れ出した成分が全身循環に戻って流れ込むことで、再灌流障害を起こすことがあります。
再灌流障害では、不整脈や急性腎不全、神経症状、高カリウム血症、アシドーシス、突然死などが起こります。

そのため、しばらくは入院治療が必要となり、慎重に経過を見ていく必要があります。

抗血栓療法を行います。

内科治療の選択肢の一つとして、抗血栓療法という治療方法があります。
この治療は血栓を溶かすのではなく、血栓の成長を抑制し、その間に閉塞した部分に側副循環ができることを期待する治療です。

血栓溶解療法は、非常に高価な薬剤を使用するため治療として選択できない場合があり、また副作用が発現することも多いため、海外では血栓溶解療法に代わって抗血栓療法を推奨する病院も多いようです。

この治療の初期は入院下で定期的に抗凝固薬を注射し、状態が安定したらワルファリンやアスピリンといった内服薬に切り替えて自宅での継続治療が可能です。

疼痛管理と心不全治療は必須です。

動脈血栓塞栓症の発症時は、非常に強い痛みが生じるため、痛みによる血圧の変化などが心臓に大きく負担をかけてしまいます。
そのため、痛みをしっかり抑えてあげるということも治療の重要なポイントです。

また、背景にある心疾患のケアも考慮して治療を行わなければなりません。
状況が許せば、心臓の機能の評価はもちろん、心疾患に伴って肺水腫などが起こっていないかどうか、全身の臓器に機能障害が起こっていないかどうかなどを検査し、それぞれに慎重に対応していくことが必要です。

特に心臓病に対しては内服薬での継続的な治療も必要になりますが、血栓塞栓症の発症時にはあまりストレスをかける治療は行えないため、状態が安定してきたら徐々に治療を加えていきます。

外科療法を行う場合もあります。

開腹手術によって血栓が詰まった血管内から血栓を摘出する方法です。

血栓摘出後に虚血部分の洗浄や虚血部分の血液を体外に一度放出する処置ができるため、再灌流障害と血栓の再発リスクを軽減できると言われています。

しかしこの治療は麻酔のリスクが非常に高いため、あまり推奨されてはいません。

バルーン血栓除去術という方法もあります。

動脈にバルーンのついたカテーテルを入れ、血栓がつまっている部分の奥でバルーンを膨らませて血栓を引き抜く方法です。

開腹手術よりは侵襲が小さいですが、やはり麻酔のリスクが高いことと、透視装置などの設備、特殊な技術が必要なため、一般的にはあまり行われません。

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