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Youtube 病気辞典
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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫のネフローゼ症候群とは

腎臓の糸球体の機能が障害されて現れる症状の総称です。

腎臓は血液中から老廃物を漉しとる、いわゆる血液のろ過装置です。
腎臓の中には無数の毛細血管が走行しており、毛細血管が毛糸の玉のように丸く集合した糸球体という構造をたくさん作っています。
この糸球体で尿の元となる原尿が漉しとられ、水分や体に必要な成分の再吸収などを経て最終的に排泄される尿が作られます。

ネフローゼ症候群では、糸球体に免疫複合体やアミロイドといわれる物質が沈着することで、本来の糸球体の機能が損なわれてしまいます。
そのため、本来腎臓から排泄されるはずのない蛋白質が尿に排泄されるようになり、高タンパク尿が認められるようになります。

その結果、体は低タンパクとなり、腹水や四肢のむくみ、二次的な高コレステロール血症などを起こすようになります。

猫での発生は犬に比べて少なく、発生は割と稀ですが、特定の品種では腎臓のアミロイドーシスという病気からネフローゼ症候群を起こすこともあるため、重度の尿タンパクが見られる場合には注意が必要な病気でもあります。

猫のネフローゼ症候群の症状とは

腎臓病で見られる症状がみられます。

ネフローゼ症候群は、以下のような症状を同時に示します。
・重度のタンパク尿
・低アルブミン血症
・高コレステロール血症
・浮腫や腹水
これらは尿検査や血液検査でわかる異常です。
尿中にタンパクが漏れ出てしまうために、血液中のタンパクの主要成分であるアルブミンが低下してしまい、そのために血管内に水分を保持できず、組織のむくみ(浮腫)や腹水・胸水などといった浸出液として水分が漏れ出してしまうのです。

また、低下したタンパクを補うために肝臓でアルブミンを盛んに生成し、その過程でコレステロールも同時に生成されてしまうことから、高コレステロール血症も併発します。

日常生活で一般的に見られる症状としては、主に腎臓病の症状と一致します。
・水をたくさん飲む
・おしっこをたくさんする
・食欲不振
・元気がない
・吐き気や嘔吐
・脱水
・手足がむくむ
・お腹が急に膨らむ(腹水)
・体重減少
・高血圧

また、ネフローゼ症候群では血液の凝固に異常が起こることがあります。
凝固機能が亢進してしまうために血栓ができやすくなり、肺血栓塞栓症などを起こすと致命的となる場合もあります。

猫のネフローゼ症候群の原因とは

免疫の異常によっておこります。

感染症や腫瘍、炎症性疾患が原因となり、免疫の異常が起こると、免疫複合体という物質が腎臓の組織に沈着し、それがもとで糸球体腎炎を起こし、ネフローゼ症候群に発展してしまうことがあります。

原因となりうる代表的な疾患には、以下のようなものがあります。
・猫エイズウイルス感染症
・猫白血病ウイルス感染症
・猫伝染性腹膜炎
・膵炎
・胆管肝炎
・多発性関節炎
・リンパ腫
・肥満細胞腫
・白血病

アミロイドの沈着でおこります。

アミロイドという異常な繊維状のタンパクが腎臓に沈着することによっておこる病気を腎アミロイドーシスといいます。
アミロイドもまた腎臓に沈着するとネフローゼ症候群を起こします。

シャムやオリエンタル、アビシニアンなどは遺伝的にアミロイドーシスを起こしやすい品種とされているため、注意が必要です。

これらの品種以外でも、炎症性疾患などに続発するものや、特発性に起こるアミロイドーシスもあります。

高血圧症なども原因となります。

全身性の高血圧症などがあると、糸球体の毛細血管にかかる圧力が高くなり、血管の壁がそれに反応して肥厚するために内腔が狭くなり、硬くなります。(糸球体硬化症)
硬化した糸球体では正常な機能が損なわれ、ネフローゼ症候群となることがあります。

猫のネフローゼ症候群の好発品種について

以下の猫種で好発がみられます。

これらの品種は遺伝的にアミロイドーシスを起こしやすい品種とされており、中でもアビシニアンは1歳未満の若齢でも発症が見られます。
アミロイドーシスでは高率にネフローゼ症候群を起こします。

猫のネフローゼ症候群の予防方法について

効果的な予防方法はありません。

ネフローゼ症候群を予防する効果的な方法はありません。
様々な感染症が原因となることもあるため、室内飼育を徹底し、感染症にかかりにくい環境で生活することが予防の一つになるかもしれません。

定期的な尿検査で早期発見に努めましょう。

尿検査は、猫の体に負担をかけることなく行うことができる、非常に有用な検査です。
タンパク尿はもちろん、その他の体の異常を早期発見することにつながりますので、定期的に検査を受けることをお勧めします。

猫のネフローゼ症候群の治療方法について

腎臓自体のケアを行います。

ネフローゼ症候群の治療として重要なことは、原因をできるだけ取り除き、腎臓の機能をそれ以上低下させずに維持していくことです。
そのためには、腎臓を保護する治療を行い、タンパクが漏れ出てしまう状況を改善しなくてはなりません。

重度のタンパク尿の治療としては、血管拡張剤が使用されます。
しかし、脱水が重度の場合には、逆に腎不全を悪化させたり、低血圧になることがあるため、脱水に対してはフードや点滴などで水分補給をしっかり行い、脱水を改善してから行う必要があります。

また、腎臓にかかる負担を軽減するために、腎臓病用の療法食を与えるなど、食事療法も併せて行います。

基礎疾患の治療が必要です。

ネフローゼ症候群の基礎疾患と考えられる疾患が存在する場合には、その治療を行うことも必要です。

感染症に対してはインターフェロン療法や抗生物質などの投与、腫瘍性疾患に対しては手術や抗がん剤治療などの治療を検討します。

アミロイドーシスなどを正しく診断・治療するためには、腎生検など侵襲性の高い検査が必要になります。

その他の症状に対する対症療法を行います。

ネフローゼ症候群では、タンパク尿に伴って様々な症状が二次的に現れます。
それぞれに対しても一つ一つ対処していくことが必要です。

・浮腫や腹水
四肢のむくみや胸水・腹水の貯留、肺水腫などに対しては、必要に応じて治療を行います。

肺水腫によって呼吸困難などが見られる場合には、利尿剤の投与を検討します。
しかし、利尿剤は腎臓にさらなる負担をかける場合もあるため、投与は慎重に行う必要があります。

胸水や腹水は針を刺して抜去することもできますが、低アルブミン血症が改善しなければすぐにまた貯留してしまうため、緊急的な措置として実施します。

・凝固異常
血栓症は命に関わる状態になる場合もあるため、凝固異常が認められる場合は抗血栓療法として内服薬や点滴での治療を行います。

・高血圧
高血圧は放置すると網膜剥離の原因にもなりうるため、治療が必要です。
高血圧の治療には、腎不全の治療としても使用される血管拡張剤やカルシウム拮抗薬というお薬を使用します。

免疫抑制療法で進行を抑制します。

ネフローゼ症候群が免疫複合体の沈着によっておこっている場合には、免疫抑制剤やステロイド剤を使用して進行を抑制する治療を行います。
しかし、免疫抑制剤を使用するためには、腎臓の生検(組織検査)を行い、免疫抑制剤が必要であることを確認し、感染症が免疫抑制剤によって悪化する危険がないことを確認してから行わなくてはなりません。

治療にはミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリンやプレドニゾロンなどといったお薬が使用されます。
副作用の発現なども含めて、慎重に経過を観察していく必要があります。

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