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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の排尿障害とは

自分の意思で十分に排尿できない状態です。

排尿障害とは、正常な排尿刺激が起こらない場合や排尿行動ができない場合、尿失禁をすべて含めた呼び方です。
その中には、神経障害や先天的な解剖学的な異常によるもの、ホルモン異常などによっておこるものなど様々な病態が含まれます。

中でも尿が大量に貯留しているのに自力で排尿できない場合には、飼い主さんによる排尿の介助が必要となり、尿路結石や感染症を併発しやすく、腎臓への負担などもかかりやすい傾向があるため、様々なケアを長期的に行わなくてはなりません。

排尿障害は飼い主さんへの負担が大きい疾患ですが、原因を解明することによって内科治療を行い、症状を緩和することが可能なものもあります。
一度しっかりと検査を受け、適切な治療・ケアの方法を教えてもらいましょう。

猫の排尿障害の症状とは

尿失禁または尿が出なくなります。

排尿障害がある場合には、以下のような症状が見られます。

・排尿しようとしない
・排尿姿勢をとっても尿が出ない
・尿失禁
・寝ているときに尿が漏れる
・陰部が常に尿で濡れている

排尿障害には様々な病態があり、どんな症状が見られるかは原因によって異なります。

先天的な異常によって、尿管が膀胱ではなく腸や膣などにつながってしまっている場合(異所性尿管)には、膀胱に尿をためることができないために常にお尻や陰部から尿が漏れ出してしまいます。
膣狭窄では、先天的に膣の形状に異常があり、排尿時に尿が膣に停滞してしまうため、体勢を変化させたときにそこから尿が漏れ出してしまいます。

閉塞性の排尿障害(結石の閉塞、腫瘍など)の場合は、膀胱に尿が貯留しているのに、尿路の物理的な閉塞によって排尿できない状態です。
猫自身は排尿しようとして頻回トイレに入り力みますが、排尿することができません。
排尿できないまま長時間経過すると腎臓の腎盂にまで尿が貯留し、その圧で腎臓の組織が圧迫されてしまう「水腎症」を起こしてしまいます。

尿が正常に生成され膀胱に溜まっているのに、排尿の刺激が起こらずに排尿できない場合もあります。
この場合、膀胱が伸展する限りは尿が溜まり続け、通常の数倍の量の尿が溜まっても猫自身は排尿しようとしません。
大量に貯留すると尿が出ますが、猫自身は排尿したいというそぶりを見せず、お腹に圧がかかった拍子にポタポタと漏れ出すような尿漏として認められるため、膀胱が空になることはありません。

この状態が長く続くとやはり腎臓に負担をかけ、尿路感染症などもおこしやすくなり、腎臓病や腎盂腎炎を起こす危険性が高まります。

排尿障害から腎不全や水腎症、腎盂腎炎などを起こすと、食欲不振や嘔吐、脱水、元気がなくなる、発熱などといった全身症状の悪化が見られ、尿毒症に発展すると痙攣発作や昏睡状態から命の危険があります。

猫の排尿障害の原因とは

神経の麻痺や排尿筋の損傷によっておこります。

交通事故などの外傷による脊髄損傷や、骨盤骨折によって膀胱に分布する神経を損傷した場合や、尿道閉塞を繰り返して膀胱が過伸展した結果、膀胱を収縮させる筋肉が損傷する「膀胱アトニー」によっておこる場合があります。

通常の排尿は、膀胱に尿が溜まると膀胱の圧受容体が蓄尿を感知し、膀胱に分布する神経から脊髄を介して脳にその情報が伝達されます。
一定の尿量を超えると、排尿刺激が起こり、逆のルートを通って膀胱の筋肉を収縮させ、尿道の括約筋を弛緩させることによって排尿が起こります。

しかし、神経の損傷や膀胱を収縮させる筋肉の損傷があると、この反応が正常に起こらず、排尿できなくなってしまうのです。

尿道閉塞によっておこります。

結石や腫瘍などによって、尿道が閉塞し、排尿障害となる場合があります。
猫で最も多いのは、オス猫の尿石症で結晶が尿道に閉塞して起こるものです。

他に前立腺の疾患(前立腺肥大、前立腺腫瘍、前立腺膿瘍など)でも尿道が狭くなり排尿障害をおこすことがありますが、犬で見られるように一般的ではなく、猫の前立腺疾患は非常に稀です。

その他には先天性の異常などがあります。

先天的な異常によっておこるものやホルモンバランスの乱れから起こるものがあります。

先天性の尿管の発生異常は異所性尿管といい、お母さんのおなかの中にいる発生段階で、腎臓から膀胱につながる尿管が膀胱ではなく腸や子宮、膣などに開口してしまう異常です。
猫では非常に稀です。

膣狭窄や外陰部の形成不全も先天的な異常です。
膣や外陰部の形状に異常があり、膣の出口側が狭く狭窄しているために尿が膣内に逆流し停滞します。
そのため、排尿をした際に尿が膣内に残った状態となり、体を動かした拍子にその尿がぽたぽたと漏れ出してしまいます。

また、ホルモンの異常によっても失禁が起こります。
加齢に伴って、あるいは避妊・去勢手術後に見られることがあり、性ホルモン(エストロジェン、テストステロン)の低下により尿道括約筋が弛緩して尿漏れが起こります。
この場合、横になってリラックスしているときや寝ているときに尿漏れが起こることが多く、活動している時には尿漏れは見られません。
猫での発生は多くありません。

猫の排尿障害の好発品種について

好発する品種はありません。

特にありません。

猫の排尿障害の予防方法について

尿路疾患は早期治療に努めましょう。

先天的な異常を予防する方法はありませんが、結晶尿や尿路結石などは予防・治療が可能な病気です。

膀胱アトニーはこれらによって尿道閉塞を起こした際に、大量に尿が貯留することで膀胱が過伸展し、排尿筋の収縮機能が損なわれることによっておこります。

定期的な尿検査で尿石症を早期に発見し、食事療法などで良好に管理することができれば、膀胱アトニーになることはありません。

猫の排尿障害の治療方法について

尿が多量に貯留している場合は排尿を補助します。

尿路閉塞や膀胱アトニーによって尿が貯留して自力で排尿できない場合は、まずは尿を出してあげることが重要です。
尿が多量に貯留したままでは腎臓に負担がかかってしまいます。

尿道に細いカテーテルを挿入し、閉塞がある場合は洗浄しながら閉塞物を除去して尿路を開通させます。
カテーテルを通して排尿が可能になったら膀胱内を数回洗浄し、膀胱内の沈殿物などを取り除きます。

尿石症の場合は食事管理や必要に応じて投薬を行うことで、その後の治療・予防に努めます。

膀胱アトニーの場合は、自力で排尿を行うことができないため、その後も1日3回ほど、カテーテルによる排尿、あるいは圧迫排尿、陰部のマッサージ刺激などによる排尿介助が必要になります。
排尿方法は、飼い主さんが自宅で実施できる方法が基本となりますが、いずれにしても感染症や尿石症を起こしやすくなるため、こまめに尿検査を行い、特に感染対策をしっかり行っていく必要があります。
また、内服薬で膀胱の収縮を刺激するお薬を投薬すると、症状が改善する場合もあります。

手術によって改善するものもあります。

先天的な異常がある場合や腫瘍などが排尿障害を起こしている場合、手術によって排尿状態を改善する必要があります。

異所性尿管では尿管を膀胱に繋ぎ変える手術を行い、膀胱腫瘍では腫瘍の切除を行います。
膀胱の出口付近に形成された腫瘍や尿道の腫瘍の場合は、尿管開口部を移動させたり、尿路を変更させる手術などが必要となり、手術後の症状の改善の程度や管理方法、予後について、あらかじめよく理解しておく必要があります。

また、尿石症から尿道閉塞を繰り返し起こしてしまう場合にも、オス猫では会陰部尿道瘻という手術を行い、メスの様に尿道を短く形成しなおす手術を行う場合があります。

内服薬での治療を行います。

ホルモン性の尿失禁に対しては、尿道括約筋の収縮に必要な交感神経の作用を増強するお薬の投与を行います。

膀胱アトニーに対しては膀胱の収縮力を高めるお薬を投与します。
発症から早期の段階で治療が行われ、定期的に排尿処置を行いながら治療した場合には自力排尿が回復する場合もあります。
しかし、膀胱が過拡張した状態が長く続くと、膀胱の排尿筋に線維化が起こり、機能回復は望めません。
そうならないためには早期から積極的に治療を行い、排尿処置によって膀胱が過伸展することがないように維持・管理していくことが必要です。

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