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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の眼球癒着とは

眼球と結膜の癒着が起こります。

眼球癒着は、子猫にみられる眼球と眼瞼結膜(瞼の裏側の結膜)の癒着です。
他に、新生子眼炎や瞼球癒着という呼ばれ方もします。

生後間もない、眼が開く前あるいは開いた直後の子猫に重度の結膜炎や角膜炎が起こると、眼球と眼瞼結膜や瞬膜に癒着が起こり、場合によっては視覚を喪失してしまうことがあります。

猫での発生の多くは猫ヘルペスウイルスの感染が関与しており、母猫が妊娠時に感染しているとそのリスクが高まります。

癒着をはがす処置で視覚が維持される場合もありますが、重度の癒着が起こっている場合や、重度の角膜炎から角膜穿孔などを起こしてしまった場合は視覚の維持は難しくなります。

猫の眼球癒着の症状とは

眼の表面に結膜が貼りついて視覚障害を起こします。

眼球癒着が起こると、角膜や眼球結膜(眼の白目の部分)に眼瞼結膜や瞬膜が貼りつき、角膜の一部あるいは全体が覆われて視野が狭くなったり、眼の機能に障害が出たりします。

主に見られる症状には以下のようなものがあります。

眼症状
・眼の表面が白い膜で覆われる
・目ヤニ
・流涙
・左右の眼の開きが異なる
・瞼を完全に閉じることができない

猫カゼ症状
・鼻汁
・くしゃみ
・咳
・元気消失
・発熱

眼球癒着の多くはウイルス感染に伴って起こるため、眼の症状以外に風邪症状を伴っていることが多くなります。

猫の視覚が維持されるかどうかは癒着の程度により、癒着が角膜全体に及ぶ場合には視野が遮断されてしまいます。

癒着が起こる過程で、眼には重度の角膜炎や結膜炎が起こっており、その結果、角膜に穴が開いてしまう角膜穿孔を起こしてしまうと、緑内障や目がつぶれて退縮する眼球癆という状態になり、失明してしまう場合もあります。

そうならないためには、できるだけ早く治療を開始することが重要です。

猫の眼球癒着の原因とは

猫ヘルペスウイルス感染が原因です。

猫の眼球癒着は、ほとんどの場合猫ヘルペスウイルスの感染によっておこります。

母猫が感染していると垂直感染するか、母猫からもらった抗体が低下してくる生後8~12週令で感染することが多くなります。

ヘルペスウイルスが新生子に感染すると重度の角膜炎・結膜炎を起こし、潰瘍ができた部分に癒着が起こります。

猫の眼球癒着の好発品種について

好発する品種はありません。

特定の品種に好発傾向はなく、どんな猫でも起こります。

猫の眼球癒着の予防方法について

感染症を予防しましょう。

眼球癒着の原因は猫ヘルペスウイルスの感染が大部分です。

そのため、妊娠させる予定の母猫にはワクチン接種をしておき、感染症に対する抵抗力をつけておくようにしましょう。
また、生まれたばかりの子猫もワクチン接種が完了するまでは他の猫との接触をできるだけ避け、感染の機会を減らしましょう。

ヘルペスウイルス以外にも、カリシウイルス感染やクラミジア感染でも眼症状が見られるため、同様に予防することが推奨されます。

猫の眼球癒着の治療方法について

癒着の剥離を行います。

眼球癒着の治療には、癒着部分を剥離する処置を行います。
点眼麻酔を施し、綿棒や先端の丸いピンセットなどでやさしく剥離を行いますが、剥離しても再癒着することが多いため、何度か処置を繰り返す必要があります。

癒着が強固な場合は全身麻酔下で切開が必要になる場合もありますが、その場合もやはり再癒着は起こります。

元々の癒着範囲が狭く、特に角膜の前側での癒着が少ない場合には視覚は維持されやすいのですが、角膜全体にわたって癒着が起こっている場合は、癒着を剥離しても眼の白濁や眼瞼の運動制限が残る場合も多く、視覚に多少障害が残る場合があります。

癒着を剥離した後は、抗ウイルス薬や抗菌薬の内服・点眼を行い、慎重に経過を見ていく必要があります。

眼の機能が失われている場合には感染や痛みを抑える治療が必要です。

眼球全体に膜が張ったようになり、眼の状態が目視で確認できない場合は、超音波検査などで眼の状態をチェックします。

中には角膜穿孔から眼の中の構造が崩れ、視力をすでに喪失していることもあります。
その場合は二次感染のコントロールや緑内障による痛みの緩和のために眼球摘出を余儀なくされることがあります。

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