猫のヘモプラズマ感染症とは
赤血球に寄生する微生物によって貧血が起こる病気です。
ヘモプラズマとは、血液の中の酸素を運ぶ細胞である赤血球に寄生する細菌(マイコプラズマ)です。
ヘモプラズマは赤血球の表面に寄生し、寄生された赤血球は体の免疫細胞の攻撃を受けることによって破壊され(溶血)易くなります。
猫同士のケンカや吸血寄生虫が媒介して感染すると考えられており、適切に診断・治療されれば症状は改善しますが、回復してもキャリアになることが知られており、稀に再発も見られるため、治療後も注意が必要な病気です。
猫のヘモプラズマ感染症の症状とは
貧血に伴う症状がみられます。
赤血球にヘモプラズマが寄生すると、寄生された赤血球は免疫反応によって破壊され、以下のような症状が現れます。
・発熱(感染初期、急性期)
・口の粘膜や舌、耳の内側、肉球の色が白っぽい
・フラフラして歩く
・元気がない
・動きたがらず寝てばかりいる
・食欲不振
・黄疸
・呼吸が速い
・脱水
・透明な赤い尿が出る(血色素尿)
感染初期には多くの場合、発熱が認められます。
赤血球が破壊されると、全身の組織に運ばれる酸素量が減少するため、組織では酸欠状態が起こり、少し動いただけでも疲れて座り込んだり、寝てばかりいるようになります。
重度の貧血になると、安静にしていても何となく呼吸が速いといった様子も見られます。
脾臓は処理する赤血球が増えることによって大きく腫れることが多く、お腹の触診やレントゲン検査では脾腫が認められます。
また赤血球内のヘモグロビン色素の処理が多くなることによって黄疸が現れ、眼の白目や口の粘膜、耳などの色が黄色くなり、処理が追いつかないと血色素が尿に出て透明な赤い尿が出るようになります。
猫のヘモプラズマ感染症の原因とは
赤血球に寄生するマイコプラズマが原因です。
ヘモプラズマ症は、赤血球表面に寄生するマイコプラズマ(ヘモプラズマ)によっておこります。
ヘモプラズマはグラム陰性細菌という種類の細菌で、以前はヘモバルトネラと呼ばれ、リケッチアという微生物として分類されていましたが、現在は詳細な遺伝子解析の結果、細菌の一種であるマイコプラズマの種類であると分類されています。
ヘモプラズマの感染経路は完全には解明されていませんが、今のところは外部寄生虫の吸血(ダニやノミ)や猫同士のケンカによる咬傷、母猫から仔猫への垂直感染などが主な感染経路と考えられています。
猫のヘモプラズマ感染症の好発品種について
好発する品種はありません。
特にありません。
どんな猫でも感染する可能性があります。
猫のヘモプラズマ感染症の予防方法について
室内飼育が予防につながります。
感染経路として、猫同士のケンカや外部寄生虫による吸血が含まれていることから、室内飼育にすることで感染リスクを下げることができると考えられます。
猫のヘモプラズマ感染症の治療方法について
抗菌剤の投与で治療します。
ヘモプラズマ感染症と診断された場合には、テトラサイクリン系という種類の抗菌剤が有効です。
その中でも多くの場合はドキシサイクリンというお薬が使用されますが、このお薬は食道に停滞すると食道炎などを起こすことがあるため、飲ませた後は少量の水を口に含ませるなどして、確実に胃まで流れるように工夫する必要があります。
他にはニューキノロン系という種類の抗菌剤も効果があることがわかっており、経口投与が難しい場合にはこの薬の注射薬を使用するなど、いくつか治療の選択肢があります。
いずれの場合にも指示された期間、しっかりと投薬を継続する必要がありますが、治療が完了した後もキャリア猫となることが知られているため、他の猫との接触や免疫が低下するような疾患(猫エイズ感染症や猫白血病ウイルス感染症)などには注意を払う必要があります。
重度の貧血の場合には追加の治療が必要です。
貧血が非常に重度で命に関わるような状況の場合には、ステロイド剤を投与して赤血球の溶血を抑制したり、緊急処置として輸血などが実施される場合があります。