犬の乾性角結膜炎(KCS)とは
涙液中の水分が欠乏することで結膜と角膜に様々な症状が引き起こされます。
乾性角結膜炎は、涙液中の水分が欠乏することで結膜と角膜に様々な症状を引き起こす疾患です。
涙液は眼表面の恒常性を維持するのに重要ですが、涙腺と瞬膜腺に同時に機能障害が起こることで涙液水層の病的な現象が引き起こされます。
犬の乾性角結膜炎(KCS)の症状とは
結膜と角膜の乾燥から様々な症状が見られます。
乾生角結膜炎は、涙液中の水分が欠乏することで結膜と角膜に乾燥を引き起こし、炎症、眼疼痛、進行性の角膜変化、視覚の減弱が認められるようになります。
乾生角結膜炎の診断には、シルマーテストがおこなわれます。シルマーテストの数値が15mm/分以上で正常、11~14mm/分が軽度の涙液減少、6~10mm/分が中等度の涙液減少、5mm/分以下が重度の涙液減少と判断します。
中等度もしくは重度の涙液減少では、結膜充血や粘液性から粘液膿性の眼脂が認められます。また、涙液減少の期間が長くなると角膜血管新生や角膜色素沈着が認められます。軽度の涙液減少であっても結膜充血や眼脂といいた臨床徴候が無い場合には、経過観察とすることもあります。
犬の乾性角結膜炎(KCS)の原因とは
様々な原因によって引き起こされます。
乾生角結膜炎の原因は、慢性的な眼瞼結膜炎、先天性、外傷、薬剤、神経原性、瞬膜腺の切除、放射線障害、ジステンパーウイルス感染症、代謝性疾患など多岐にわたりますが、もっとも多いのは免疫介在性です。
先天性乾生角結膜炎は年齢が6か月齢以下でシルマーテストの値が5mm/分以下であり、シクロスポリンの局所投与に反応しない場合には診断されます。
薬剤による乾生角結膜炎は、全身麻酔薬や点眼麻酔薬といった麻酔薬の他に、アトロピン、スルホンアミド・トリメトプリム、スルファジアジン、フェナゾピリジン、スルファサラジンなどが挙げられます。
神経原性乾生角結膜炎は、第5脳神経、第7脳神経の障害によって起こり、通常片側性に発症します。
代謝性疾患による乾生角結膜炎は、甲状腺機能低下症、糖尿病、クッシング症候群が挙げられます。
免疫介在性乾生角結膜炎は、涙腺と瞬膜腺に線維化を伴うリンパ球や形質細胞の浸潤が起こっており、通常両側性に発症します。
犬の乾性角結膜炎(KCS)の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- アメリカンコッカースパニエル
- ウェストハイランドホワイトテリア
- キャバリアキングチャールズスパニエル
- シーズー
- パグ
- ブルドッグ
- ペキニーズ
- ボストンテリア
- ミニチュアシュナウザー
- ヨークシャーテリア
- ラサアプソ
アメリカンコッカースパニエル、ウエストハイランドホワイトテリア、キャバリアキングチャールススパニエル、シーズー、パグ、ブルドッグ、ペキニーズ、ボストンテリア、ミニチュアシュナウザー、ヨークシャーテリア、ラサアプソなどが好発犬種として挙げられます。
犬の乾性角結膜炎(KCS)の予防方法について
早期発見、早期治療をおこないます。
乾生角結膜炎は予防することが難しいため早期発見、早期治療が重要になります。
甲状腺機能低下症、糖尿病、クッシング症候群などの乾生角結膜炎の原因となる疾患の治療をおこなうことが、乾生角結膜炎の予防につながる可能性があります。
犬の乾性角結膜炎(KCS)の治療方法について
原因となる疾患に応じた治療をおこないます。
乾生角結膜炎の治療で選択する薬剤は原因によって変わってきますが、治療の目的は涙液量の回復と細菌感染のコントロールにより臨床症状の改善と角膜の二次的変化を防ぐことになります。
全身麻酔や点眼麻酔薬、アトロピンによる乾生角結膜炎では、薬の効果が切れれば涙液量は回復します。涙液量が回復するまではヒアルロン酸ナトリウム点眼や人工涙液点眼などに角膜の乾燥を防ぎます。
免疫介在性などの乾生角結膜炎では、涙液量の回復にシクロスポリン点眼を1日2回使用します。シクロスポリン点眼には即効性がないため、症状の改善まで6週間程度かかる場合があります。シクロスポリン点眼で涙液量が回復するまではヒアルロン酸ナトリウム点眼や人工涙液点眼などに角膜の乾燥を防ぎます。
治療をおこなっても涙液量の回復が得られない場合には、ヒアルロン酸ナトリウム点眼や人工涙液点眼を頻回おこなうことで角結膜に潤いを与えます。潤いを維持し続けることで角膜の二次的変化を抑制することが可能です。点眼回数が多く、かつ長期にわたっておこなうため、防腐剤の入っていない製品を選択することが望ましいとされています。