猫の肺水腫とは
肺がむくんで酸素交換ができない状態になります。
肺は肺胞という小さな袋が無数に集まった集合体で、それぞれの肺胞の壁には毛細血管が走行しています。
肺胞内では、全身をめぐって二酸化炭素を乗せてきた静脈血から二酸化炭素を排出し、呼吸によって吸い込んだ空気中の酸素を取り込む、という血液のガス交換が行われています。
肺水腫とは、肺の間質という部分にむくみが起こり、さらに重度になると肺胞内にも水が貯留して、正常なガス交換機能が損なわれた状態を指します。
肺水腫が起こると呼吸が苦しくなり、可視粘膜が青っぽくなるチアノーゼがみられ、直ちに治療を行わないと命に関わるため、迅速な診断と治療が必要です。
猫の肺水腫の症状とは
呼吸困難になります。
肺水腫を起こすと以下のような症状が現れます。
・呼吸が苦しい
・呼吸回数が多い
・食欲不振
・動いてもすぐに座り込む
・開口呼吸している
・呼吸困難
・横になれない
・咳をする
・舌が青っぽい(チアノーゼ)
・倒れる
猫は通常、口を閉じて鼻で呼吸していますが、開口呼吸が起こっているときは呼吸が苦しいことを示す重要なサインです。
肺水腫以外でも見られることがありますが、いずれにしても呼吸器や循環器系に重大な問題が起こっていることが多いため、直ちに病院へ連れて行きましょう。
猫の肺水腫の原因とは
心原性におこります。
心臓疾患などで心臓のポンプ機能が落ちると、全身の循環が低下し、肺に血液がうっ滞して肺水腫を起こします。
猫に多い肥大型心筋症や、僧帽弁閉鎖不全症の進行時、拘束型心筋症などに伴って見られることがあります。
心原性以外の原因(非心原性肺水腫)もあります。
心臓病以外の原因でも肺水腫が起こります。
・感電
・神経疾患(発作の重積など)
・敗血症や炎症性疾患(急性呼吸窮迫症候群)
・腫瘍
・煙等の刺激物の吸引
・外傷
・気道閉塞
・血管内の水分過剰(過剰輸液等)
このような原因によって、肺胞を流れる血管から水分が漏れ出しやすくなる変化が起こると肺水腫を起こしてしまいます。
また、治療行為として行った輸液が過剰であった場合にも、肺水腫が起こります。
猫の肺水腫の好発品種について
以下の猫種で好発がみられます。
- アメリカンショートヘア
- スコティッシュフォールド
- ノルウェージャンフォレストキャット
- ブリティッシュショートヘア
- ペルシャ
- メインクーン
- ラグドール
心筋症の好発品種は発症時に肺水腫を起こすことが多くなります。
非心原性肺水腫はどんな猫でも起こります。
猫の肺水腫の予防方法について
健康診断で心臓病の早期発見に努めましょう。
心臓疾患はできるだけ早くから治療を行い、進行を抑制することが重要です。
定期的に健康診断を受け、心雑音や心拡大などの異常が認められた場合には精密検査をしてもらい、早期診断・早期治療に努めましょう。
生活環境を見直しましょう。
感電は好奇心旺盛な子猫の時期に電源コードを誤って咬むことなどによっておこります。
また、異物を口にして気道に引っかかった状態になると、呼吸困難から肺水腫が起こることもあります。
生活環境を見直し、電源コードはできるだけ隠すあるいは保護する、危険と思われる部分には近づけないようにする、誤飲しそうなものは放置せずに片付ける、などといった環境整備を心がけ、不慮の事故を防ぎましょう。
猫の肺水腫の治療方法について
酸素吸入を行います。
肺水腫を起こすと、重度の呼吸困難から命を落とす危険があります。
呼吸困難が重度で、レントゲン検査で肺水腫が疑われる場合には、まずは緊急処置として酸素吸入を行い、呼吸状態を少しでも楽にしてあげます。
猫は酸素マスクなどは嫌がることが多いため、酸素室に入って酸素吸入を行うことが多くなります。
その上で様子を見ながら少しずつ必要な検査を行い、原因を探っていきます。
心臓病の治療を行い、うっ血を改善します。
心臓に起因する肺水腫は、血液のうっ滞によっておこります。
肺のむくみ(水腫)をとるためには利尿薬を使用し、肺にうっ滞した水分を尿として排泄させる治療を行います。
利尿薬を投与すると肺水腫は劇的に改善することが多いですが、逆に脱水傾向を起こしたり腎臓に負担がかかることもあります。
利尿剤をできるだけ少ない量で維持できるように、心臓病自体の検査・治療も行い、全身の循環状態が良好に保てるように投薬治療を行っていきます。
原因疾患に対する治療を行います。
肺のむくみをとるためにはやはり利尿剤を投与しますが、心臓以外の原因で肺水腫が起こった場合は、利尿剤を投与してもあまり改善が見られない場合もあります。
抗生剤や消炎剤の投与など、それぞれの原因に対して治療を行うことが必要です。