猫のホルネル症候群とは
眼の神経支配の異常によって眼や瞼に異常が現れます。
ホルネル症候群とは、眼周囲に分布する交感神経に何らかの異常が起こり、交感神経の支配が消失することによって、いくつかの特徴的な症状を示す状態につけられた名称です。
瞳孔が小さくなる(縮瞳)、眼の開きが小さくなる、眼球が奥に引っ込む(眼球陥没)、第三眼瞼(瞬膜)が突出する、などといった症状が主に片側に見られます。
神経に影響を及ぼす様々な原因によっておこりますが、猫で多い原因は交通事故などの外傷によるものです。
原因に対する治療を行うことが必要なため、眼科検査や神経検査を行い、どこに原因があるのか、あるいは原因が特定できない特発性のホルネル症候群であるのかを鑑別し、原因に対する治療が可能であればその方法を検討していきます。
予後は原因疾患とその重症度によって異なりますが、特発性の場合は無治療でも4~6カ月ほどで症状が改善します。
しかし、猫では特発性のホルネル症候群は稀で、何らかの原因疾患が隠れていることが多いため、慎重に検査を行う必要があります。
猫のホルネル症候群の症状とは
主に片側性の眼の異常が見られます。
ホルネル症候群は多くの場合片側にだけ症状が見られ、以下のような症状が現れるのが特徴です。
・縮瞳(瞳孔が小さくなる)
・眼瞼下垂(眼の開きが小さくなる)
・眼球陥没(眼が奥に引っ込んだようになる)
・第三眼瞼(瞬膜)の突出
眼が落ちくぼむことによって瞼が内側に入り込み、睫毛や目の周囲の被毛の刺激によって涙眼や眼脂が見られる場合もあります。
これらの症状は正常な目との差が明らかになるため、症状が現れた場合には割と見つけやすい異常です。
この他には、原因となっている疾患による様々な症状が見られます。
眼に異常が見られた場合にはすぐに病院へ連れて行きましょう。
猫のホルネル症候群の原因とは
交感神経の支配が消失して起こります。
ホルネル症候群は、眼に対する交感神経の支配が消失することによっておこります。
ほとんどの体の臓器には交感神経と副交感神経が分布しており、それぞれがその時の体の状況に応じて優位に働くことで正常な機能を行っています。
簡単に言うと、交感神経は体が活発に働くときに作用し、副交感神経は逆に体を休ませる方向に働いています。
眼に分布する交感神経は、脳から延びる脊髄の一部である胸髄(胸部の脊髄)の腹側から交感神経幹として分岐し、そこから頚部を頭側に向かって登り、中耳を通って目に分布します。
この経路のいずれかに問題が生じるとホルネル症候群が見られます。
炎症や腫瘍、梗塞などが原因です。
ホルネル症候群が見られる原因疾患には以下のようなものがあります。
脳・脊髄の異常
・頭部の外傷
・頭蓋内腫瘍、梗塞
・椎間板ヘルニア
・線維軟骨塞栓症
・外傷による脊髄損傷 など
耳の異常
・中耳炎
・内耳炎
・鼻咽頭ポリープ
・中耳内腫瘍 など
その他
・腕神経叢の損傷
・頚部や前縦隔の腫瘍
・眼球後方の腫瘍、損傷 など
これらの鑑別のためには眼科検査や耳の検査をはじめ神経学的な検査や、場合によっては麻酔をかけて行うCT、MRI検査などが必要になる場合もあります。
稀に原因不明のものが発生します。
検査を行っても上記のような原因が特定できない場合は、特発性ホルネル症候群と呼ばれます。
猫では特発性のものは稀とされています。
猫のホルネル症候群の好発品種について
好発する品種はありません。
特に好発品種はありません。
猫のホルネル症候群の予防方法について
事故を予防しましょう。
交通事故などの外傷によっておこるホルネル症候群は、室内飼育によってある程度回避できます。
しかし、室内であっても滑って転んだり高いところから転落したりすると不意に怪我をする危険があります。
床に滑りにくいマットを敷く、高齢になったら高いところからジャンプをしなくていいような生活環境にするなど、状況に応じて環境整備をすることをお勧めします。
耳のケアも定期的に行いましょう。
中耳炎など、耳の問題から起こるホルネル症候群も多いため、定期的に耳のチェックを行い、汚れや炎症がある場合には放置せずにできるだけ早い段階で治療を行いましょう。
猫のホルネル症候群の治療方法について
原因疾患を治療します。
ホルネル症候群はそれ自体が病気の名前ではなく、特徴的ないくつかの症状を同時に発症する病態に付けられた名称です。
そのため、症状を改善するためには原因疾患に対する治療が必要です。
まずは原因をしっかりと検査してもらい、それぞれに対してどんな治療の選択肢があるのかを教えてもらいましょう。
頭蓋内の病変に対しては診断の時点でCTやMRI等、高度な医療設備のある病院への受診が必要になる場合もあります。
特発性の場合には経過観察します。
特発性のホルネル症候群は猫ではあまり多くありませんが、原因がはっきりしない場合には無治療のまま経過観察し、数カ月で症状が改善することがあります。