猫の特発性前庭障害とは
原因不明の末梢前庭の障害です。
前庭とは、耳の奥にある三半規管などを中心とした、体の位置や平衡感覚を支配する器官のことをいいます。
前庭には中枢前庭と末梢前庭があり、中枢前庭には中脳や小脳の一部を含み、末梢前庭は内耳にある三半規管と前庭、前庭神経からなります。
特発性前庭障害は末梢前庭の障害によっておこる、眼振や斜頚に伴う症状をさします。
原因は不明で、神経検査や耳の検査では異常が見られません。
多くの場合は数日のうちに症状が改善し、数週間で元に戻ります。
しかし、同様の症状を示す病気の中には腫瘍など命に関わる病気も含まれているため、発症した際には他の原因が隠れていないかしっかり検査してもらうことが重要です。
猫の特発性前庭障害の症状とは
眼振や斜頚による運動失調と吐き気がみられます。
特発性前庭障害は急性に発症することが多く、症状は軽度から重度まで様々です。
主に見られる症状は以下の通りです。
・瞳が規則的に左右または回転するように小刻みに動く(水平眼振・回転眼振)
・首がねじれる、傾く(捻転斜頚)
・うまく歩けない(運動失調)
・くるくる回る(旋回運動)
・床でゴロゴロ転がり立てない
・涎を大量に垂らす
・食欲不振
・嘔吐
意識ははっきりしていますが、眼振によって常に視界が揺れているために乗り物酔いのような状態となり、強い吐き気が起こることから涎を垂らすことが多く、嘔吐も頻繁に見られます。
また、体をまっすぐに保つことができず、立てない、歩こうとして転ぶ、同じところでくるくる回ってしまうなどといった症状が見られます。
猫の特発性前庭障害の原因とは
原因不明です。
特発性前庭障害は、原因不明の前庭症状を示す状態につけられた病名です。
同様の症状を示す他の原因を除外することで診断されます。
同様の症状を示す原因には、中耳炎や内耳炎、鼻咽頭ポリープや外傷、腫瘍等があります。
診断のためには神経検査や、必要に応じてMRI検査などが必要になる場合があります。
猫の特発性前庭障害の好発品種について
好発する品種はありません。
特にありません。
若齢から高齢まで、どんな年齢でも発症します。
猫の特発性前庭障害の予防方法について
予防方法はありません。
特発性前庭障害は原因不明のため、予防する方法はありません。
猫の特発性前庭障害の治療方法について
対症療法を行います。
特発性前庭障害の場合は、効果的な治療方法はありません。
前庭の症状に対しては無治療のままで経過観察を行い、吐き気に対する対症療法として吐き気止めの注射や脱水に対する点滴を行います。
立とうとして転び、顔をぶつけてケガをしたり、狭い場所に挟まって出られなくなってしまうこともあるため、サークルやケージにマットを敷いて入れるなど、ケガや事故を予防するための環境整備も必要です。
多くの場合は2~3日で眼振の症状がおさまり、徐々に歩行が可能になり、斜頚も改善傾向が見られます。
3~4週間で症状が消失することが多いですが、中には斜頚が少し残ってしまう場合もあります。
しかし、そのままでも猫は順応して日常生活を送ることができます。