猫の高血圧症とは
血圧が持続的に高い状態になります。
高血圧症とは、全身性に血圧が上昇し、収縮期血圧が150mmHgを超えた状態が持続している場合をいいます。
血圧は心臓の収縮力や血管の弾力性、体液の水分量、血圧に作用するホルモンなど、様々な因子によって変動します。
ヒトでは健康状態の指標として頻繁に測定されますが、動物では病院で定期的に測ることは多くありません。
それは、動物病院に来院した犬猫は興奮状態や極度の緊張状態に陥っていることが多く、また測定中に安静にすることが困難な場合があり、安静状態の血圧を測定するのが難しいためです。
しかし、高血圧症がある場合には、腎臓や眼、脳、心臓などに臓器障害を起こすことがあるため、必要に応じて血圧測定を行います。
高血圧症には、原因不明の「特発性高血圧症」(本態性高血圧症)と、何らかの基礎疾患によって二次的に起こる「二次性高血圧症」があり、犬猫では80%以上が二次性高血圧症です。
原因となっている疾患を突き止め、治療することで高血圧症もうまく管理することができます。
猫の高血圧症の症状とは
眼や心臓の変化や神経兆候が見られます。
高血圧症があると、血管に持続的に強い圧がかかるため毛細血管の内膜に傷害が起こり、血管が硬くなったり、狭窄して細くなったりする変化が起こります。
硬くなった血管は収縮性が落ち、そこに強い圧がかかると破裂して出血することもあります。
細い動脈が豊富な眼の網膜や、血液を送り出す心臓は高血圧の影響を受けやすく、眼底出血から網膜剥離を起こして失明したり、頻脈などの変化が見られます。
また、脳血管に異常(梗塞や出血)が起こると神経症状が見られる場合もあります。
高血圧症で見られる症状には以下のようなものがあります。
・瞳孔が開きっぱなしになる
・眼が見えていない様子
・元気がない
・動きたがらない
・心臓の鼓動が速い
・心音の異常
・痙攣発作
・歩き方がおかしい、歩けない
・震えている
・意識が朦朧としている
・首が傾く(斜頚)
・眼が小刻みに震える(眼振)
眼や神経の症状は急激に発症し、特に神経症状は治療が行われなければ命に関わることもあります。
原因となっている疾患の有無をしっかり検査してもらい、それぞれに対応した治療を速やかに行うことが重要です。
猫の高血圧症の原因とは
特発性高血圧症は原因不明です。
原因不明の高血圧症の場合は、特発性高血圧症といいます。
高血圧を起こす基礎疾患が見つからず、高血圧が持続している場合で、猫では高血圧症の約20%が特発性高血圧症といわれています。
二次性高血圧症は基礎疾患が存在します。
高血圧を起こす何らかの基礎疾患がある場合は二次性高血圧症に分類されます。
原因となる疾患には、以下のようなものがあります。
・甲状腺機能亢進症
・慢性腎臓病
・原発性高アルドステロン症
・褐色細胞腫(副腎腫瘍)
・副腎皮質機能亢進症
高齢の猫で多く見られる腎臓病や甲状腺機能亢進症は、高血圧症を起こすことが多い疾患です。
また、副腎からは血圧や体液の調整に関わるホルモンが分泌されています。
副腎に問題が発生し、ホルモンの過剰分泌が起こることによっても高血圧症が起こります。
犬では糖尿病や肥満も高血圧の原因とされていますが、猫ではその関連性は認められていません。
その他の原因もあります。
副腎ホルモン剤(グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド)や造血ホルモン(エリスロポエチン)、フェニルプロパノールアミン、非ステロイド系消炎剤等のお薬を投与していたり、塩分の過剰摂取によっても高血圧症が起こります。
猫の高血圧症の好発品種について
好発する品種はありません。
特にありません。
猫の高血圧症の予防方法について
定期的な健康診断で早期発見しましょう。
慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症などは、健康診断を定期的に受けていれば早期に診断することが可能な病気です。
また健康診断時に心雑音や頻脈などが検出されれば、高血圧症も視野に入れた精密検査を行うきっかけになります。
特に発症の多いシニア期には定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
猫の高血圧症の治療方法について
基礎疾患の治療を行います。
二次性高血圧症では基礎疾患の治療を行うことが根本的な治療になります。
それぞれの疾患に対応した投薬や、場合によっては手術を行うことによって高血圧症が改善することが多いですが、緊急性が高いほどの高血圧や基礎疾患の治療だけでは十分に血圧が下がらない場合には、以下の様な降圧治療も併用していきます。
血圧降下剤を投与します。
高血圧症が持続すると、眼底出血による失明や心臓への負担、脳血管障害による神経兆候を招き、場合によっては命に関わります。
重度の高血圧症では、基礎疾患の検査や治療と並行しながら、まずは血圧を徐々に下げていく治療を行います。
重度の高血圧症では積極的に血圧を下げるために、静脈点滴で降圧剤を投与する緊急治療を行います。
血圧を適宜測定しながら、ゆっくり降圧剤を投与し、状態が安定したら内服薬に切り替えて維持治療を行っていきます。
内服薬では、血管を拡張して血圧を下げるお薬などが使用されます。
特に治療の開始時には、血圧が急激に下がりすぎることで元気がなくなったりぐったりすることもあるため、注意して観察するようにし、異常があればすぐに病院へ相談しましょう。