猫の肺高血圧症とは

肺動脈の圧が高くなる病態を肺高血圧症といいます。

肺高血圧症は、様々な原因によって肺動脈の圧が高くなる病態をさします。

心臓は右心房・右心室・左心房・左心室という４つの部屋に分かれており、
全身の血液→右心房→右心室→肺動脈→肺→左心房→左心室→全身へ
という流れで血液のガス交換を行い、全身へ酸素が豊富な血液を流しています。

肺の疾患や心臓病の影響によって肺の血管が硬くなると、肺に血液を送り込むために心臓はより強い圧をかけなくてはならなくなり、その結果肺動脈にかかる圧が高くなります。
この状態が肺高血圧症です。

肺高血圧では、肺の血流が低下して酸素交換率が悪くなるために呼吸が苦しくなり、呼吸困難やチアノーゼがみられます。

重度の肺高血圧症では、呼吸困難に加えて最終的に右心の機能も低下し（右心不全）、心臓から血液を拍出することが難しくなり、亡くなってしまいます。
できるだけ早期に治療を始めることが重要です。

猫の肺高血圧症の症状とは

呼吸困難症状がみられます。

肺高血圧症では主に呼吸が苦しくなる症状が見られます。

・元気消失
・食欲不振
・呼吸が荒い
・開口呼吸
・咳
・呼吸困難
・チアノーゼ
・運動不耐性（疲れやすい）
・倒れる

重度の場合は呼吸困難・右心不全から致死的な経過をたどることもあるため、呼吸に異常がみられた場合には様子を見ずにすぐに病院へ連れて行きましょう。

猫の肺高血圧症の原因とは

心臓病に続発して起こります。

猫の心臓病では肥大型心筋症や僧帽弁閉鎖不全症などがよくみられます。
これらの心臓病によって左心房の拡大、肺のうっ血状態が続く(左心不全)と、肺動脈に硬化が起こり肺高血圧を発症します。

このような変化は先天性の心疾患（動脈管開存症など）が原因で起こることもあり、猫でも数例ですが報告があります。

肺の病気によっておこります。

肺の疾患によって肺血管が硬くなり発症する場合や、フィラリア症（犬糸条虫の感染）に伴って微小血栓が形成され、それが肺の毛細血管に閉塞することによっておこる場合があります。

猫の肺高血圧症の好発品種について

好発する品種はありません。

特にありません。

猫の肺高血圧症の予防方法について

フィラリア症対策を検討しましょう。

猫ではあまり多くありませんが、フィラリア症によって肺高血圧症を発症する場合もあります。
特に外に自由に出る猫では、フィラリアに感染するリスクが高いため、予防薬の投与などフィラリア症対策を検討しましょう。

心臓病のケアは早期から行いましょう。

心臓病に続いて起こる肺高血圧症も割と多く見られます。
心臓病のケア（投薬）を日ごろからしっかり行い、状態に変化が見られた時には超音波検査などで心臓の状況を確認してもらい、お薬の量を調整してもらって進行を抑えることが重要です。

普段から心臓の状態を確認しておくことで、肺高血圧の兆候を早期に見つけることができ、迅速な対応につながります。

猫の肺高血圧症の治療方法について

肺血管を拡張させるお薬を投与します。

肺高血圧症は早期治療が重要です。
治療が遅れると、肺の血管に不可逆的な変化が生じ、血管壁が肥厚・硬化することで血管が狭くなったままになってしまいます。
できるだけ肺の血管の伸縮性が保たれているうちに肺の血流を改善し、肺動脈の圧を下げる治療を行うことが大切です。

治療に使用されるのは主に肺血管拡張薬というお薬です。
猫ではシルデナフィルやベラプロストナトリウムというお薬がよく使用されます。

これらは肺の血管を広げることで血流を改善し、心臓にかかる負担を軽減するお薬です。
治療の効果を見ながら投与量を調整します。

心疾患の治療を行います。

基礎疾患となっている心疾患がある場合、その治療は非常に重要です。
肥大型心筋症や僧帽弁閉鎖不全症の治療薬を投与しながら、肺血管拡張薬を併用します。

先天性の心疾患の場合は、手術が必要になる場合もありますが、その手術適応については専門家の意見を聞きながら慎重に判断する必要があります。
しかし、治療を行わなければ多くの場合寿命が短縮し、数年以内に亡くなってしまうことが多いとされています。

肺疾患の治療を行います。

基礎疾患となる肺疾患を治療します。
肺炎がある場合には抗生物質の投与、寄生虫症には駆虫薬の投与、肺線維症などの場合にはステロイド療法などを行います。

肺疾患も慢性化すると肺血管に不可逆的な硬化が起こり、治療への反応が非常に悪くなるため、早期治療が重要です。