犬の突発性後天性網膜変性症(SARD)とは
突然失明する疾患です。
突発性後天性網膜変性症は、突然(数日~数週間)、両眼の視覚が喪失し失明する疾患です。
犬の突発性後天性網膜変性症(SARD)の症状とは
視覚異常がみられます。
臨床症状としましては、突然発症する視覚異常で、発症初期には突然の視覚喪失に伴う興奮、動揺、活動性の低下、無気力、嗅覚減退などの症状がみられます。副腎皮質機能亢進症と類似した全身症状(多飲多尿、多食、体重増加、肝酵素上昇など)を認めることがあります。
突然の失明で罹患犬の日常生活は急変し、睡眠時間やじっと動かない時間が多くなります。散歩で歩かないなどの運動性の低下、全体的な日常行動の異常が目立ち、楽しみが食事のみのような日常となり、飼い主も混乱することが多いです。
突発性後天性網膜変性症で失明した罹患犬は、突然の失明なので日常生活に慣れるまでに時間がかかることが多いとされています。
犬の突発性後天性網膜変性症(SARD)の原因とは
正確な原因は不明です。
正確な原因は不明ですが、非炎症性に網膜の視細胞(杆体細胞、錐体細胞)の外節が急速に消失することにより、網膜視細胞の細胞死が起こります。外節の消失に続き、内節も短くなり視細胞は短縮します。発症の初期には網膜の厚さに変化はみられませんが、発症後数か月~数年で視細胞は消失し、網膜の双極細胞、アマクリン細胞、神経節細胞の変性が起こり、網膜は菲薄化します。
細胞死の原因は自己免疫異常、ホルモンバランス異常(下垂体異常、副腎皮質機能亢進症)、ストレス曝露の影響、中毒など諸説ありますが、現段階では不明であり確立した治療方法はありません。
瞳孔は散大し、対光反射は低下していることが多いですが、初期には白色光、赤色光の刺激に対する反射は消失~低下し、青色光の刺激で正常反射します。
眼底所見は発症初期にはほぼ正常で、失明を診断する異常所見は認められません。発症から時間が経過すると網膜変性が進行し、進行性網膜委縮と同様の所見を認めるようになります。
血液化学検査では肝酵素値の上昇など副腎皮質機能亢進症と類似した所見がみられることがありますが、突発性後天性網膜変性症と副腎皮質機能亢進症との関連性は現在証明されていません。
犬の突発性後天性網膜変性症(SARD)の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- ミニチュアシュナウザー
- ミニチュアダックスフント
罹患犬の多くは肥満傾向のある避妊雌であり、発症年齢は中高齢です。全犬種で発症しますが、日本ではとくにミニチュアダックスフンド、ミニチュアシュナウザーでの発症が多いとされています。
犬の突発性後天性網膜変性症(SARD)の予防方法について
予防方法はありません。
突発性後天性網膜変性症の予防方法はありません。完全失明する前に早期発見し、早期治療を開始することが推奨されていますが、突発性後天性網膜変性症を早期に発見することは実際には難しいと言えます。罹患犬は突然の失明であるため、動くたびにぶつかってしまうため外傷に気をつけるようにしましょう。
犬の突発性後天性網膜変性症(SARD)の治療方法について
視覚を回復させる治療方法は確立されていません。
突発性後天性網膜変性症により失明した症例の視覚を回復させる実用的な治療方法は確立されていません。アメリカでは自己免疫性疾患説に基づきヒト免疫グロブリン製剤の全身または眼内注射とステロイドやシクロスポリン、レフルノミドの併用による治療方法も報告されています。
実際の治療はあくまでも完全に視覚を喪失した症例が、何となく歩けている程度のナビゲーションスキルをもてるようにすることです。
予後
一般的には治療方法は確立しておらず、確実な治療は困難であることから視覚の予後は不良であることが多いとされています。