犬の角膜ジストロフィーとは
眼の角膜に異常がみられる疾患です。
白い不透明な無機物が角膜に沈着して、片眼の場合もありますが、多くは両眼の角膜が白濁する遺伝性の疾患です。両眼性に非炎症性の角膜混濁を来す病態であり、遺伝性・進行性を呈し、他に全身異常を伴わないのが特徴であるとされています。
犬の角膜ジストロフィーの症状とは
角膜の混濁や眼の異常などがみられます。
角膜ジストロフィーの臨床症状としましては、黒眼(角膜)が白く濁る、眼を細める、眼の疼痛、眼の浮腫、眼を気にして触る、視力低下、などが挙げられますが、通常は、犬が痛みや痒みなどの不快感を示すことは少ないとされ、進行しても失明にいたる可能性は低いとされています。
角膜ジストロフィーの犬では、両眼の角膜にコレステロールやリン脂質、中性脂肪が付着することによって白い結晶のような濁りが見られるようになります。この白濁は角膜の中央付近で見られ、次第に広がりますが、全体を覆う可能性は低いとされています。進行のスピードは犬によって異なるとされています。
角膜は外側から上皮、実質、内皮の3層に大別され、どの層で変性が起こるかは原因によります。
角膜の上皮で発症する上皮性角膜ジストロフィーでは、一般的には角膜の白濁以外の症状は見られないことが多いとされています。しかしながら、角膜の痛みや違和感で眼を細めるようになったり、眼を気にして触ってしまい角膜を傷付けてしまうこともあります。
角膜の中間層と言える実質で発症する実質性角膜ジストロフィーでは、眼の痛みや炎症は無いとされていますが、白濁が拡散することで視力に影響を及ぼす可能性があります。
角膜の最も深い層である内皮で発症する内皮性角膜ジストロフィーでは、白濁に気付きにくい場合があり、進行すると角膜の浮腫が認められることもあります。角膜浮腫になると視力低下につながる可能性があります。
犬の角膜ジストロフィーの原因とは
遺伝的素因があるとされています。
角膜にコレステロールやリン脂質、中性脂肪が付着することによって
犬の角膜ジストロフィーの好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- エアデールテリア
- キャバリアキングチャールズスパニエル
- シェットランドシープドッグ
- シベリアンハスキー
- チワワ
- ビーグル
- ボストンテリア
- ミニチュアダックスフント
エアデールテリア、キャバリアキングチャールズスパニエル、シェットランドシープドック、シベリアンハスキー、チワワ、ビーグル、ボストンテリア、ミニチュアダックスフンドなどが好発犬種とされています。
犬の角膜ジストロフィーの予防方法について
発症の予防方法はありません。
角膜ジストロフィーは遺伝性疾患であり、発症を予防することはできません。しかし、罹患動物の繁殖を制限することで角膜ジストロフィー罹患犬の増加をコントロールすることができます。犬の遺伝性疾患は罹患犬の同系交配を避けることで罹患する犬の増加を抑制することが可能となり、継続して遺伝性疾患の繁殖制限をすることが全ての遺伝性疾患の根本治療につながると言えます。
犬の角膜ジストロフィーの治療方法について
根本的な治療方法はありません。
角膜ジストロフィーは、直接的な失明の原因となりにくいこと、難治性であり外科的に混濁した部分を削り取ったとしても再発しやすいこと、などから治療を行わないことが多いとされています。
ただし、実質性角膜ジストロフィーの場合は、視力に影響を及ぼす可能性があります。視力低下が認められる場合には外科的処置が適応となりますが、現在有効な治療方法が確立されていません。治療方法として角膜表層切除術が挙げられます。この手術は、角膜の表層を完全な穴が開かない程度に切除します。その後、瞬膜とを角膜の前に固定することで、表層を切除された角膜部分は新たに透明な角膜が再生されます。