猫の血胸とは
胸腔内で出血が起こり血液を含んだ胸水が胸腔内に貯留した状態です。
血胸とは、胸腔内に何らかの異常が起こり胸腔内で出血が起こった状態です。
猫の血胸の多くは外傷や腫瘍に伴って起こります。
血胸が起こっている場合には呼吸器症状とともに出血による循環血液量の低下による血圧低下症状が現れることが多く、出血量が多い場合には命に関わる状態になることもあります。
緊急治療を必要とするような場合には、ぐったりとして動けない、呼吸が速く苦しそう、などといった顕著な症状が見られますので、できるだけ早く病院を受診しましょう。
猫の血胸の症状とは
呼吸器症状や血圧低下による症状が見られます。
血胸の症状は出血量に比例して顕著になります。
血胸の時に見られる症状には以下のようなものがあります。
・呼吸が浅く速い
・努力性呼吸
・開口呼吸している
・咳をしている
・舌の色が淡く白っぽい
・元気がない
・食欲不振
・横またはうつ伏せになっていることが多い
・動けない
・体の他の部分に内出血がある
少量の出血では目立った症状がみられないことがあり、なんとなく呼吸が速いかも?という程度で日常生活にあまり影響が出ないケースもあります。
しかし出血量が増えると、胸腔内を占拠する胸水(血液)の量が増えることになり、肺が十分に膨らむことができないために呼吸器症状が顕著になります。
また出血量が多くなると体の循環血液量が減少し、血圧低下や貧血によって横たわって動けなくなったりフラフラしたりする様子も見られます。
血胸が起こる原因によっては血液の凝固系に異常が生じているケースもあり、その場合には内股や軽くぶつけただけの部位に皮下出血がみられることもあります。
重度の呼吸器症状や血圧の低下、貧血は命に関わりますので、異常が見られたらすぐに病院へ連れて行きましょう。
猫の血胸の原因とは
外傷によっておこることがあります。
猫の血胸の原因として多いのが、交通事故や高所からの転落といった外傷によるものです。
外傷によって肋骨の骨折や肺の損傷(肺挫傷)、心筋の損傷などがあると胸腔内で出血が起こります。
肺の損傷がある場合には、出血と同時に肺に穴が開くことによって肺から空気が漏れ気胸になっていることもあり、呼吸器症状がより強く現れることもあります。
外に出る猫が怪我をして帰ってきたときや高所から落下した時に、呼吸の様子がおかしいと感じたら危険なサインです。
必ず病院へ連れて行きましょう。
腫瘍や胸腔内の病変が原因で出血が起こることがあります。
肺や胸腺、心臓、胸膜など、胸腔内にできた腫瘍などの病変部分からの出血によって血胸が起こることがあります。
腫瘍の他には肺膿瘍、肺捻転、感染性疾患、胸腺出血、医療行為(静脈カテーテルの設置や胸腔ドレーンの設置、胸腔の外科手術)などが原因となることがあります。
血液の凝固異常によっておこる場合があります。
血液の凝固異常が起こるような免疫疾患や感染症、腫瘍性疾患、中毒にともなって胸腔内に出血が起こることがあります。
この場合には胸腔内だけでなく全身の他の部位にも出血がみられることが多くなります。
猫の血胸の好発品種について
好発する品種はありません。
品種による血胸の好発傾向はありません。
外傷や感染症のリスクは室内猫よりも外に出る猫の方が高いと考えられます。
猫の血胸の予防方法について
室内飼育でリスクを回避しましょう。
血胸の原因をすべて予防できるわけではありませんが、交通事故やウイルス感染症に伴う腫瘍の発生、感染症に伴う出血傾向の発生リスクを下げるためには室内飼育にある程度の効果があると考えられます。
猫の血胸の治療方法について
呼吸と循環の状態を安定させる治療が第一優先です。
血胸を起こしていることによって呼吸状態が非常に悪い場合や循環不全(ショック)状態になっている場合には緊急治療が必要です。
状態に応じて酸素の吸入や静脈点滴を直ちに行い、大量の胸水によって呼吸困難となっている場合には胸腔に針を刺して胸腔内の液体(血液)を抜去することも検討します。
原因疾患の治療を行います。
呼吸や循環の状態が安定した状態となったら、血胸の原因を検査で突き止め、それぞれに対する治療を行います。
外傷によって肺が損傷している場合、出血が一時的で徐々に症状が落ち着くことがあるため、必要に応じて酸素吸入を継続しながら経過を慎重に観察していきます。
初期の出血で重度の貧血が起こっている場合には輸血も検討します。
出血が継続する場合や肺の損傷部分から重度の気胸を発症している場合などは、胸腔にドレーンチューブを設置したり、開胸手術によって損傷した肺の切除が必要になることもあります。
腫瘍が存在し、その部分からの出血が起こっている場合には、出血を止めるために腫瘍の切除が必要になります。
しかし出血している時点で胸腔内に腫瘍が播種していることにもなるため、予後はあまり良くありません。
リンパ腫など抗がん剤治療が可能な腫瘍の場合で出血が持続していないケースでは、必要な時に胸腔穿刺で胸水(血液)を抜去しながら内科治療を行うこともあります。
血液凝固系の異常によって出血傾向が起こっている場合にはその原因をさらに突き止める必要があります。
免疫異常で起こっている場合には免疫抑制剤やステロイド剤の投与が必要となり、感染症や体の他の部分に起こった腫瘍性疾患が原因の場合はそれぞれに対する投薬治療や手術による治療などを検討します。