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Youtube 病気辞典
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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の僧帽弁閉鎖不全症とは

心臓の中の弁がうまく機能しなくなった状態です。

心臓の中は大きく4つの部屋に分かれており、部屋と部屋の間は心臓の壁と弁によって区切られています。
全身から戻ってきた血液は、
大静脈→右心房→右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房→左心室→大動脈→全身へ
      (三尖弁)             (僧帽弁)
という順番で心臓~肺を通過し、肺でガス交換を行った後再び全身へ送り出されます。

右心房と右心室の間には三尖弁、左心房と左心室の間には僧帽弁という弁が存在し、心臓の収縮とともに弁がぴったりと閉じて心臓内の血流が逆流するのを防いでいます。

僧帽弁閉鎖不全症とは僧帽弁に何らかの問題が生じて弁がしっかりと閉じなくなり、心臓内で逆流が起こってしまう病態のことをさします。

猫の心臓病は肥大型心筋症が多く、犬のように単独で起こる僧帽弁閉鎖不全症は稀ですが、他の心筋症と関連して見られることがあるため、健康診断時に心雑音などが指摘された場合にはその原因疾患をしっかりと検査してもらうことが重要です。

猫の僧帽弁閉鎖不全症の症状とは

ある程度進行してから症状が出始めます。

犬の僧帽弁閉鎖不全症と同様、猫の心臓疾患も初期にはあまり目立った症状を示しません。
健康診断などで聴診器を当てた際にわずかに心雑音が聴取されることがありますが、病院を受診する機会がなければ見落とされていることがほとんどです。

しかし、治療を行わずにいると徐々に病態が進行し、少しずつ以下のような症状がみられるようになってきます。

・元気がない
・疲れやすい
・寝てばかりいる
・食欲不振
・呼吸が早い
・開口呼吸している
・咳をする
・倒れる
・舌が青っぽい(チアノーゼ)

心臓の中で血流の逆流が起こると、肺からガス交換を終えて戻ってきた血液を受ける左心房に血液がうっ滞して徐々に左心房の拡大が起こります。
やがてうっ血が肺にまで及ぶようになると、肺水腫を起こし、咳や呼吸困難、チアノーゼなどといった呼吸器症状も見られるようになります。

重度の僧帽弁閉鎖不全では肺水腫と全身の循環不全によって徐々に体力を消耗し、命に関わることがあります。

猫の僧帽弁閉鎖不全症の原因とは

僧帽弁がしっかりと閉じなくなることによっておこります。

僧帽弁閉鎖不全症は何らかの異常によって僧帽弁がうまく閉じなくなり、あいた隙間から心臓内で血液が逆流するようになって起こる病気です。

弁が閉じなくなる原因としては、心臓が拡大することで弁が届かなくなる、心内膜に細菌感染が起こり弁が肥厚したり形が変形する、弁の周囲組織に粘液腫様変性が起こり僧帽弁が腫れぼったく変形したり腱索が伸長または断裂することなどによっておこります。

猫では後天的な弁膜症は稀で、肥大型心筋症や拡張型心筋症に伴う心臓の拡大や変形(肥大)に伴って弁の付け根(弁輪)の拡大や変形が起こることによって僧帽弁の閉鎖不全がみられることの方が多くなります。

猫の僧帽弁閉鎖不全症の好発品種について

好発する品種はありません。

猫では僧帽弁閉鎖不全症よりも肥大型心筋症が一般的で、単独で起こる僧帽弁閉鎖不全症の好発品種は特に報告されていません。

猫の僧帽弁閉鎖不全症の予防方法について

効果的な予防方法はありません。

心臓病の発症を予防できる効果的な方法はありません。
一昔前はタウリンの不足によって猫の拡張型心筋症が多発したことがありますが、現在のキャットフードのほとんどはタウリンが添加されているため、その発生は激減しています。

猫の僧帽弁閉鎖不全症の治療方法について

内服薬を投与します。

僧帽弁閉鎖不全症の治療は内服薬の投与で行います。

多くの場合は他の心筋症(肥大型心筋症や拡張型心筋症)の進行過程において認められる病態のため、治療方法はそれらの治療に準じて行われることが多くなります。
使用されるお薬には以下のようなものがあります。

・ACE阻害薬:血圧上昇や心肥大に関わるアンジオテンシンⅡの生成を抑える
・β遮断薬:心拍数を抑える、不整脈を抑制する
・カルシウム受容体拮抗薬:心拍数を抑える、左心室拡張能を改善する、血管を拡張させる
・利尿剤:肺水腫、胸水貯留を抑える
・抗血小板薬:血栓症予防
・ピモベンダン:強心作用、動静脈拡張作用(強心血管拡張薬)、心筋弛緩作用、心筋への血流をよくする作用

どのお薬を使用するかは、進行の程度や出ている症状によって変わります。
定期的に検査(レントゲンや心エコー検査)を受け、病期に合った処方をしてもらうことで、進行をできるだけ抑制しましょう。

心臓病の治療薬は、投薬を急にやめたり誤った使用方法をするとかえって病気を進行させることにつながりますので、指示された用法・用量を守って正しく投与するようにしましょう。

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