猫のてんかんとは
繰り返し発作を起こす脳の病気です。
てんかんは痙攣などのてんかん発作を繰り返し起こす脳の疾患です。
脳の神経細胞は電気信号で様々な情報を伝達していますが、この電気信号が異常に発生することによって痙攣などの神経症状を示します。
発作の原因となる脳奇形や脳腫瘍、脳の炎症があって起こるものを「症候性てんかん」、特にそのような異常がみられずに起こるものを「特発性てんかん」といいますが、猫のてんかんは9割が症候性てんかんです。
症状としては痙攣が一般的に知られていますが、痙攣を示さない発作もあるため、てんかんと認識されていない場合もあります。
てんかん発作は頻度に応じて抗てんかん薬で治療を行います。
無治療のまま放置されると発作頻度が増え、重症化していくことがあります。
重度の場合には発作の重積という状態に陥り、自然には発作が治まらず、命の危険に陥る場合もあるため、適切に診断して治療を継続することが重要です。
猫のてんかんの症状とは
様々なタイプの発作が起こります。
症状は突然起こる発作です。
一般的に知られているのは全身が痙攣する発作ですが、発作には以下のように様々なタイプがあります。
全般発作では全身性の発作が見られます。
・意識を失い、全身をガクガクさせて痙攣する
・意識を失い、全身をピーンとつっぱり痙攣する
・力が抜けたように倒れる
・突然失神する
・体の筋肉の一部(顔や四肢、体幹など)あるいは全身の筋肉が瞬間的に大きく収縮する
など
焦点性発作では体の一部に症状が現れます。
・体の一部のみがつっぱる
・体の一部のみが痙攣する
・ボーっとした状態で、意味もなく口をクチャクチャする
・ハエを追うように眼を動かしたり、咬もうとして口をパクパクする
・激しく涎を垂らす
・腹痛が起こっているようにうずくまる
など
発作が起こる前には落ち着きなくうろうろしたり、やたらと念入りに毛づくろいをするような前兆がみられることがありますが、寝ている状態から始まる場合もあります。
発作のパターンも様々で、中には焦点性発作から始まり、全般発作に移行するタイプなどもあります。
発作の最中は失禁したり、呼吸が荒く苦しそうに見えるため、つい手でさすってあげたくなりますが、発作中は猫自身も体のコントロールができないために、誤って噛まれて大怪我をすることもあります。
心配ですが、あまり刺激せずに落ち着くまで見守りましょう。
発作が起こる時間は数秒から数分程度、長くても5分以内には落ち着きます。
てんかん発作が終わった後も、手足を泳ぐように動かしたり、フラフラしたり、ボーっとすることがありますが、しばらくすると元の状態に戻ります。
発作が起こった際には、病院を受診する時の参考となるので、動画などで記録をとり、頻度や時間もメモしておきましょう。
猫のてんかんの原因とは
脳に構造的な異常がある症候性てんかんと、異常がみられない特発性てんかんがあります。
てんかん発作は、脳内で情報を伝達する電気信号が異常に発生することによっておこります。
電気信号が異常発生する構造的な異常がある場合を症候性てんかん(または構造的てんかん)、構造的な異常がなく発作が起こるものを特発性てんかんと呼びます。
猫のてんかんは、9割が症候性てんかんです。
症候性てんかん(構造的てんかん)は脳の構造に異常が起こることによります。
症候性てんかんは、脳に奇形や腫瘍、炎症、血管障害、外傷などの器質的な異常があることによって起こります。
このような異常があるかどうかは、CT検査やMRI検査、脳脊髄液検査、脳波検査などで診断できますが、一般の診療施設では行えませんので、大学病院などの診療施設への受診が必要です。
脳の構造に異常がないものは特発性てんかんと呼ばれます。
特発性てんかんは、上記のような異常がみられず、てんかん発作を繰り返すものです。
遺伝的な素因がある可能性がありますが、具体的にはまだ解明されていません。
異常な電気信号が脳全体に広がって起こる発作を全般発作、脳の一部分だけに異常な電気信号が発生する発作を焦点性発作といいます。
脳は部位によってそれぞれ体の別の部分を支配しているため、局所的に異常な電気信号が発生した場合は、その部分が支配する領域だけに発作が起こります。
そのため、焦点性発作では足だけ、顔だけに症状がみられることがあるのです。
異常な電気信号の発生部位は基本的に毎回同じなので、出る症状も毎回同じになるはずですが、次第に発生部位が増えたり、異常な電気信号が脳全体に波及して症状の進行がみられることもあります。
痙攣発作には、全身性の疾患(低血糖、低カルシウム血症、腎不全、門脈シャント、中毒など)によっておこるものもありますが、この場合はてんかんとは別の病態として区別されています。
猫のてんかんの好発品種について
好発する品種はありません。
特に好発品種はありません。
猫のてんかんの予防方法について
効果的な予防法はありません。
てんかんを予防する方法はありません。
もともとてんかん発作を起こす猫では、大きな音や緊張状態をきっかけに起こすこともあるため、あまり興奮させず、ストレスをかけずに生活させてあげることが発作の発症予防に多少効果があるかもしれません。
猫のてんかんの治療方法について
治療は自宅での投薬治療を行います。
治療は発作の頻度をできるだけ少なくするために行います。
治療を開始する目安としては、発作を短期間に連続して起こした場合(群発発作)、頻度は少なくても発作の症状が非常に重度な場合、発作の重積を起こしたことがある場合、症候性てんかんで定期的に発作を起こすことがある程度予測される場合などです。
発作を起こすと、その度に脳にも体にも負担がかかりますので、できるだけ発作が起こらないように治療してあげましょう。
治療は抗てんかん薬の内服で行います。
投与開始から間もない時期には体の中でお薬の濃度がまだ安定していないので、発作の頻度があまり変わらない場合もありますが、血中濃度が上がって安定してくると発作頻度は落ち着いてきます。
お薬の副作用でボーっとする、フラフラする、異常に食欲が出る、などといった症状がみられた場合には、お薬の減量や種類の変更などが必要です。
病院で相談して調整してもらいましょう。
発作がないからといって勝手にお薬をやめてしまうことは絶対にしてはいけません。
急にお薬をやめてしまうと、その反動で次の発作が強く出たり、症状の悪化を招くことがあります。
お薬の減薬も、時間をかけてゆっくりと行う必要があります。
発作時の緊急薬として、坐薬を処方してもらえることもあります。
発作が終わったと思ったらすぐに次の発作が起こってしまった場合や、発作が異常に長く、いつもより長く意識を消失している場合などには坐薬を使用して一度発作を抑え、できるだけ早く病院へ連れていきましょう。
発作の重積時にはすぐに病院へ行く必要があります。
発作の重積とは、1つ目の発作が治まる前に次の発作が起き、発作から自力で回復できなくなってしまう状態で、非常に危険な状態です。
脳に過大なダメージを与えることがあるほか、痙攣が続くことで高体温にもなり、昏睡状態になったり、命の危険があります。
坐薬を入れても発作が治まらない場合には注射薬で発作を抑えなくてはなりませんので、緊急で病院へ連れていきましょう。
原因疾患の治療を行います。
症候性てんかんの場合は、原因となっている病気をうまく治療できると、発作が落ち着くこともあります。
しかし、発作を起こしていた期間が長いと、脳が負ったダメージにより発作が継続してしまうことがあり、その場合は抗てんかん薬での治療を継続することが必要です。